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2章
46話 街で
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僕は今まで見たことのない服装のレイラに釘付けになっていた。
彼女は、いつもは純白の聖女の服を着ていたのだけれど、今日は違う。
美しいライトグリーンの髪はまとめてサイドに垂らしていて、上は黒のシャツに薄緑色のアウターを羽織っている。
下はホットパンツ……と呼ばれる最近流行? とサナに聞いた青い色のものを履いていて、綺麗な素足を大胆に見せつけていた。
「き、綺麗だね」
「ほんと!?」
僕は思わず口から漏れていた言葉に、レイラが反応する。
僕を睨みつけるようにして見つめてきた。
「う、うん。綺麗だよ」
「サナより?」
「それは……」
どうだろうか……。
僕は思わず悩んでしまった。
サナが至上の美であることは誰も否定しないと思う。
けれど、今のレイラはそれに匹敵するくらいに綺麗だと思った。
少し悩んだけれど、何も言わないのは失礼だと思って口にする。
「お、同じくらい」
「そ……そう。ならいいわ。行きましょう」
レイラはそう言ってサナ達が行った方とは反対の方向に歩いていく。
僕も慌てて彼女の隣に並ぶ。
「ま、待ってよ。でも、どうしたの? いつも学校だったら神官の服なのに」
「い、いいでしょ。たまには着ても。似合ってない?」
「そんなことないよ。見てよ。皆レイラの事を見ているよ」
少し一緒に歩いただけだけれど、多くの人がレイラの姿を見て振り返ってくる。
正直、自分が並んでいていいのか不安になるくらいだ。
「べ、別に他の人なんていいのよ」
「そうなの?」
「ええ、あたしは大勢に見て欲しい訳じゃないから」
レイラはそうもじもじしながら話している。
なんだかいつもの全身が隠れている姿しか見たことがなかったから少しドキドキしてしまう。
「そ、それじゃあどこか行きたい所はある?」
少し話題を変えよう。
なんだか変な気分になりそうだ。
「あたしは……そうね。どこでもいいわ」
「どこでも?」
「ええ、街にはあんまり出られないから。だから、本当にどこでもいいの」
「……分かった。一杯案内するね」
「よろしく」
僕はレイラと色々と回る事に決めた。
彼女は聖女として、外出も基本的にダメなのだろう。
今回はどうにかして許してもらったみたいなら、出来る限り楽しんで欲しい。
まずは思い出になるように、彼女をアクセサリーショップに連れていく。
「どう? こういう場所って来たことある?」
「……ないわ。凄い……こんなに一杯あるのね」
レイラは楽しそうに色々な物を見て回っている。
あれやこれやを手に取り見ていた。
僕は楽しそうに見て回る彼女に付いて行く。
2時間も見て回れば彼女は満足したらしい。
「こういう場所もいいわね……。凄い。こんなにいっぱいあるなんて」
「何か買わなくてもいいの?」
「うーん。いいわ」
「そう。なら、僕はちょっと買って来るね」
「ええ」
僕は目当ての物を買って、レイラに渡す。
「え?」
「これ、すごく悩んでいたでしょ?」
「え……でも……え……」
彼女は戸惑った顔をしたまま、僕とアクセサリーを見比べている。
「いらなかった?」
「そんなことない! でも……いいの?」
「うん。レイラに似合うと思うから、着けて見て」
「……ふふ。ありがとう。クトー」
彼女はそう言ってそのアクセサリー……細いブレスレットを着ける。
「どう? 似合う?」
「うん。すっごく似合うよ」
僕は本心を話すと、彼女は嬉しそうにはにかんでくれた。
「大事にするわ」
「そう言ってくれて良かった」
「今夜は眠りの香でも使わないと寝れないかも」
「そこまでじゃないでしょ」
嗅ぐと眠気を誘われる魔道具のことを出して話すレイラに僕も笑って返す。
そしてこれからどこに行こうか、適当に歩きながら話していると、事故が起きた。
ガシャアアアン!!!
「きゃー!」
「馬車が倒れた!」
「誰か巻き込まれたぞ!」
僕はレイラと目を合わせて、お互いに頷くと直ぐにそこに向かう。
そこには車輪が外れたのか横転した馬車と、足を挟まれた男性がいた。
既に男の人達が集まり、必死に馬車を持ち上げようと力を入れていた。
「僕も手伝います!」
「おう! 助かる!」
「【タコ化】【触手強化】」
僕はスキルで両腕だけをタコに変えて、馬車に取り付く。
ただ、スキルを使ったからか隣のおじさんが驚いていた。
「うお!?」
「スキルなんで気にしないで下さい!」
「あ、ああ……。よし! それじゃあタイミングをあわせるぞ! 1・2・3!」
僕はそのタイミングに合わせて馬車を持ち上げると、少し馬車が持ちあがった。
「今だ! 引っ張りだせ!」
「はい!」
近くにいた人が彼を引きずり出す。
「よし! 降ろすぞ!」
そうして、馬車を降ろし、挟まれていた彼の元に向かう。
「大丈夫ですか!?」
「つぅ……足が……」
挟まれていた足は折れているのか曲がってしまっている。
僕は正しい位置に戻し、回復魔法を使う。
「僕に任せて下さい! 『癒やせ』!」
「ああ……大分楽になった……」
そうは言っても、所詮はただの初級魔法。
痛みを取り除く位しかできない。
「……」
そんな彼の姿をレイラはじっと真剣な目で見つめていた。
「少し失礼します」
僕は彼から離れて、レイラに近付く。
「レイラ。お願いがあるんだけど」
「……何かしら」
「僕が『聖なる祈りよ届け』を使う練習をしたいから、手伝ってくれない?」
「……どういう事か分かってる?」
「分かってるよ。レイラが今は回復魔法を禁止されていることも、あの人を助けたいって言うことも」
「……なんで直ぐに分かるのよ」
「さぁ。どうしてだろうね」
「まぁ……いいわ。行くわよ」
「うん」
僕は彼の元に座り込み、彼に聞く。
「今から上級の回復魔法を使います。ただ、上手くいくか分からないので、もし失敗したらごめんなさい」
「上級って……。俺……そんな金払えねぇよ」
「代金はいりません。行きますよ。3・2・1『聖なる祈りよ届け』」
(『聖なる祈りよ届け』)
僕のすぐ後ろでレイラが唱えて、直ぐに治療された。
「どうですか?」
「動く……動くぞ! 信じられない!」
「良かった。たまたま上手く出来て良かったです。今日は安静にして気を付けて下さい。ね?」
「え? ええ。そうね……。それがいいわ」
「こら……偉いべっぴんさんを連れて……アンタ、その優しさに彼女も惹かれたんか?」
「いえ……そんなことは……」
僕は恥ずかしくてそわそわしてしまう。
「あ、それでは、僕等はこれで」
「ありがとう。本当に助かった」
「いえいえ、お大事に」
「気を付けてね」
「あんちゃん達ー! ありがとうー! 学園には言っておくからー!」
「助かったよー!」
「なんかあったらここに来い! 力になるからなー!」
僕らは感謝の言葉を述べてくれる人達の言葉を背に、街で遊びに戻った。
******
「ふふ、クトー様とレイラ様。いい感じですね」
わたくしは何も出来ない感謝の気持ちを2人に示す。
何も出来ない王女を、グレーデンを追放した英雄と、聖女。
その2人に対して出来そうな数少ない礼だからだ。
「フェリス。そろそろいいじゃない。一緒に行きましょう?」
「そうですね。そうしましょう」
このまま見ていたら、わたくしまで出しゃばりたくなるかもしれない。
それは、きっとレイラ様は喜ばない。
自分の心をよぎる気持ちを抑えて、サナの方へと向かう。
「おい! あっちにこんな食い物があったぞ!」
「アルセラ……そんなに食べても問題ないのですか?」
「問題ない! その分動くからな!」
わたくしは後ろ髪を引かれながらも、サナ達と街で遊んだ。
******
とある路地裏でガラの悪い3人は媚びるようにある者に相対していた。
「で、どうだった」
「へい。それが……予想以上に強く……スキルの確認は取れませんでした」
「もしかしたら【闇魔法】のスキルかも知れない。位には強かったですが……確定は出来ません」
「ふーん。ま、いいけど……。でも、期待外れじゃなくって良かった」
「いえ……それで……俺達は……」
「ああ、もう行っていい」
「し、失礼します!」
そう言ってガラの悪い3人はその者から逃げるように奥に進み、急に息が絶えたように地面に転がった。
彼らは、まるで命そのものが吸い取られたかのようにカラカラに干からびている。
「ま、せいぜい楽しませてもらいましょう。それにしても……【器】のスキル持ちなんて……本当にいるのか」
彼女は、いつもは純白の聖女の服を着ていたのだけれど、今日は違う。
美しいライトグリーンの髪はまとめてサイドに垂らしていて、上は黒のシャツに薄緑色のアウターを羽織っている。
下はホットパンツ……と呼ばれる最近流行? とサナに聞いた青い色のものを履いていて、綺麗な素足を大胆に見せつけていた。
「き、綺麗だね」
「ほんと!?」
僕は思わず口から漏れていた言葉に、レイラが反応する。
僕を睨みつけるようにして見つめてきた。
「う、うん。綺麗だよ」
「サナより?」
「それは……」
どうだろうか……。
僕は思わず悩んでしまった。
サナが至上の美であることは誰も否定しないと思う。
けれど、今のレイラはそれに匹敵するくらいに綺麗だと思った。
少し悩んだけれど、何も言わないのは失礼だと思って口にする。
「お、同じくらい」
「そ……そう。ならいいわ。行きましょう」
レイラはそう言ってサナ達が行った方とは反対の方向に歩いていく。
僕も慌てて彼女の隣に並ぶ。
「ま、待ってよ。でも、どうしたの? いつも学校だったら神官の服なのに」
「い、いいでしょ。たまには着ても。似合ってない?」
「そんなことないよ。見てよ。皆レイラの事を見ているよ」
少し一緒に歩いただけだけれど、多くの人がレイラの姿を見て振り返ってくる。
正直、自分が並んでいていいのか不安になるくらいだ。
「べ、別に他の人なんていいのよ」
「そうなの?」
「ええ、あたしは大勢に見て欲しい訳じゃないから」
レイラはそうもじもじしながら話している。
なんだかいつもの全身が隠れている姿しか見たことがなかったから少しドキドキしてしまう。
「そ、それじゃあどこか行きたい所はある?」
少し話題を変えよう。
なんだか変な気分になりそうだ。
「あたしは……そうね。どこでもいいわ」
「どこでも?」
「ええ、街にはあんまり出られないから。だから、本当にどこでもいいの」
「……分かった。一杯案内するね」
「よろしく」
僕はレイラと色々と回る事に決めた。
彼女は聖女として、外出も基本的にダメなのだろう。
今回はどうにかして許してもらったみたいなら、出来る限り楽しんで欲しい。
まずは思い出になるように、彼女をアクセサリーショップに連れていく。
「どう? こういう場所って来たことある?」
「……ないわ。凄い……こんなに一杯あるのね」
レイラは楽しそうに色々な物を見て回っている。
あれやこれやを手に取り見ていた。
僕は楽しそうに見て回る彼女に付いて行く。
2時間も見て回れば彼女は満足したらしい。
「こういう場所もいいわね……。凄い。こんなにいっぱいあるなんて」
「何か買わなくてもいいの?」
「うーん。いいわ」
「そう。なら、僕はちょっと買って来るね」
「ええ」
僕は目当ての物を買って、レイラに渡す。
「え?」
「これ、すごく悩んでいたでしょ?」
「え……でも……え……」
彼女は戸惑った顔をしたまま、僕とアクセサリーを見比べている。
「いらなかった?」
「そんなことない! でも……いいの?」
「うん。レイラに似合うと思うから、着けて見て」
「……ふふ。ありがとう。クトー」
彼女はそう言ってそのアクセサリー……細いブレスレットを着ける。
「どう? 似合う?」
「うん。すっごく似合うよ」
僕は本心を話すと、彼女は嬉しそうにはにかんでくれた。
「大事にするわ」
「そう言ってくれて良かった」
「今夜は眠りの香でも使わないと寝れないかも」
「そこまでじゃないでしょ」
嗅ぐと眠気を誘われる魔道具のことを出して話すレイラに僕も笑って返す。
そしてこれからどこに行こうか、適当に歩きながら話していると、事故が起きた。
ガシャアアアン!!!
「きゃー!」
「馬車が倒れた!」
「誰か巻き込まれたぞ!」
僕はレイラと目を合わせて、お互いに頷くと直ぐにそこに向かう。
そこには車輪が外れたのか横転した馬車と、足を挟まれた男性がいた。
既に男の人達が集まり、必死に馬車を持ち上げようと力を入れていた。
「僕も手伝います!」
「おう! 助かる!」
「【タコ化】【触手強化】」
僕はスキルで両腕だけをタコに変えて、馬車に取り付く。
ただ、スキルを使ったからか隣のおじさんが驚いていた。
「うお!?」
「スキルなんで気にしないで下さい!」
「あ、ああ……。よし! それじゃあタイミングをあわせるぞ! 1・2・3!」
僕はそのタイミングに合わせて馬車を持ち上げると、少し馬車が持ちあがった。
「今だ! 引っ張りだせ!」
「はい!」
近くにいた人が彼を引きずり出す。
「よし! 降ろすぞ!」
そうして、馬車を降ろし、挟まれていた彼の元に向かう。
「大丈夫ですか!?」
「つぅ……足が……」
挟まれていた足は折れているのか曲がってしまっている。
僕は正しい位置に戻し、回復魔法を使う。
「僕に任せて下さい! 『癒やせ』!」
「ああ……大分楽になった……」
そうは言っても、所詮はただの初級魔法。
痛みを取り除く位しかできない。
「……」
そんな彼の姿をレイラはじっと真剣な目で見つめていた。
「少し失礼します」
僕は彼から離れて、レイラに近付く。
「レイラ。お願いがあるんだけど」
「……何かしら」
「僕が『聖なる祈りよ届け』を使う練習をしたいから、手伝ってくれない?」
「……どういう事か分かってる?」
「分かってるよ。レイラが今は回復魔法を禁止されていることも、あの人を助けたいって言うことも」
「……なんで直ぐに分かるのよ」
「さぁ。どうしてだろうね」
「まぁ……いいわ。行くわよ」
「うん」
僕は彼の元に座り込み、彼に聞く。
「今から上級の回復魔法を使います。ただ、上手くいくか分からないので、もし失敗したらごめんなさい」
「上級って……。俺……そんな金払えねぇよ」
「代金はいりません。行きますよ。3・2・1『聖なる祈りよ届け』」
(『聖なる祈りよ届け』)
僕のすぐ後ろでレイラが唱えて、直ぐに治療された。
「どうですか?」
「動く……動くぞ! 信じられない!」
「良かった。たまたま上手く出来て良かったです。今日は安静にして気を付けて下さい。ね?」
「え? ええ。そうね……。それがいいわ」
「こら……偉いべっぴんさんを連れて……アンタ、その優しさに彼女も惹かれたんか?」
「いえ……そんなことは……」
僕は恥ずかしくてそわそわしてしまう。
「あ、それでは、僕等はこれで」
「ありがとう。本当に助かった」
「いえいえ、お大事に」
「気を付けてね」
「あんちゃん達ー! ありがとうー! 学園には言っておくからー!」
「助かったよー!」
「なんかあったらここに来い! 力になるからなー!」
僕らは感謝の言葉を述べてくれる人達の言葉を背に、街で遊びに戻った。
******
「ふふ、クトー様とレイラ様。いい感じですね」
わたくしは何も出来ない感謝の気持ちを2人に示す。
何も出来ない王女を、グレーデンを追放した英雄と、聖女。
その2人に対して出来そうな数少ない礼だからだ。
「フェリス。そろそろいいじゃない。一緒に行きましょう?」
「そうですね。そうしましょう」
このまま見ていたら、わたくしまで出しゃばりたくなるかもしれない。
それは、きっとレイラ様は喜ばない。
自分の心をよぎる気持ちを抑えて、サナの方へと向かう。
「おい! あっちにこんな食い物があったぞ!」
「アルセラ……そんなに食べても問題ないのですか?」
「問題ない! その分動くからな!」
わたくしは後ろ髪を引かれながらも、サナ達と街で遊んだ。
******
とある路地裏でガラの悪い3人は媚びるようにある者に相対していた。
「で、どうだった」
「へい。それが……予想以上に強く……スキルの確認は取れませんでした」
「もしかしたら【闇魔法】のスキルかも知れない。位には強かったですが……確定は出来ません」
「ふーん。ま、いいけど……。でも、期待外れじゃなくって良かった」
「いえ……それで……俺達は……」
「ああ、もう行っていい」
「し、失礼します!」
そう言ってガラの悪い3人はその者から逃げるように奥に進み、急に息が絶えたように地面に転がった。
彼らは、まるで命そのものが吸い取られたかのようにカラカラに干からびている。
「ま、せいぜい楽しませてもらいましょう。それにしても……【器】のスキル持ちなんて……本当にいるのか」
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