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2章
43話 黒蛇病を調べる
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「今のは……」
僕は周囲を警戒していると、またしても突然声がした。
「合格だ」
「うわ!」
驚いてそちらを見ると、さっきの青い鎧が何事も無かったかのように存在していた。
「何を驚く。我を破壊し、試練を突破したのだ。喜ぶ所であるぞ」
「あ、ああ。うん。ありがとう。それで、禁書庫には入っていいんだっけ?」
「構わぬ」
「その前にあっちにいる皆に話して来たいんだけど、いいかな?」
「問題ない。しかし、連れてゆくことは出来ぬ」
「分かった」
僕は戻り3人が待つ場所へ進む。
結界はいつの間にか消えていて、3人の姿は見えるようになっていたのだ。
「お待たせ」
「クトー! どこに行ってたの?」
「心配しました。半分まで進んだ所で姿が消えましたので……」
「全く。レイラ様に心配をかけるとは許さんぞ」
3人がそれぞれに話して来る。
アルセラだけちょっと方向がおかしい気もするけど……。
「とりあえず、今さっき試練を受けてきて、突破して来たよ」
「流石ね」
「凄いです……」
「私に勝ったのだ。その程度は勝てないと困る」
「それで、試練を受けないで欲しいから、何か知りたい情報があったら僕が調べてくる。だから何かない?」
「どうして? アルセラも行かせてもいいんじゃないかしら? ダメだったら帰って来れるんでしょう?」
レイラが代表して聞いて来る。
「それが、試練が終わるまで、僕が試練を突破するか、死ぬか。どっちかでしか出られない。そう言われたんだ」
「!?」
3人の顔が同時に驚く。
「それは……わたくしの兄が……嘘を言った。という事でしょうか?」
フェリスは信じられない。
とでも言うように僕に聞いてくる。
でも、それに断言は出来ない。
「分からない……でも、少なくとも、僕が戦った門番はそう言っていたよ」
「……」
彼女はそれから黙り込み、俯く。
レイラが代わりに聞いて欲しいことを答えてくれた。
「それなら……黒蛇病の事と、フェリスの呪われた手の事。そして、黒蛇病を調べるとどうなるか……という事も調べて欲しいわね」
「分かった。他には?」
「後は……」
「?」
レイラがゆっくりと僕に近付いてくる。
そして、顔がもうすぐにくっつきそうになると……。
ゴツン!
思い切り頭で頭をぶつけられた。
「い……った……」
「『癒やせ』」
「ちょ……自分だけずるい」
「当然でしょ? 今日はいかない。っていうので話していたのに、勝手に一人で行って……。心配させないでよね」
「ご、ごめん」
「ま、いいわ。あたし達は一度戻っていた方がいいのかしら?」
「そうだね……どれくらい時間がかかるか分からないから、それでもいいと思う」
「わかったわ。フェリスが戻り次第帰るわね」
「うん。ここまで来てくれてありがとう。それに、フェリスも、ここまで連れてきてくれて助かったよ」
「……」
彼女からの返事はない。
僕は彼女にそれ以上何も言わずに禁書庫へと向かう。
僕の考えでは、彼女は……遠回しに殺されそうになったのではないかと思う。
禁書庫に行けば試練を受けなければならない。
けれど、フェリスの実力では勝つことは出来ない。
ならば、後は殺されるだけ。
多少遠回しな事かもしれないけれど、直接手が下せないなら、もしかしたらの可能性にかけたかも知れない。
まぁ、フェリスの兄が彼女のことを殺そうとする理由も分からないのだけれど……。
「済んだか」
「はい」
鎧に近付くとそう話かけてくる。
「それではこちらだ」
ノッシノッシと重い音を盾ながら鎧は進む。
そして、奥の方にあった機の扉をくぐると、その鎧は消え去ってしまった。
どうしようか悩んでいると、すぐ耳元で声がする。
「何をしている。さっさと入らないか」
「うわ。びっくりした」
耳の横には10cm位のサイズにまで小さくなった鎧がいた。
しかも、何故か宙に浮いているのだ。
「なんでそんな形に……?」
「あの姿では邪魔だろうが。それに、本を傷つける」
「そ、そう……」
これ以上突っ込んだら負けかもしれない。
そう思って僕は前に進む。
「ふわ……」
木の扉を通り抜けると、そこは壁一面にある本本本。
天井は3m近くあるけれど、その全てをぎっしりと埋め尽くすように棚に本が入れられている。
そんな棚はどこまでも奥に続いている。
禁書庫の中は薄暗く、どこまで続いているのか想像もつかない。
本のかびた様な臭いはすることはないのが少し驚きではあったかもしれない。
「ねぇ、僕はこの一杯ある中の本を自分で探さないといけないの?」
今から始めても目当ての本を見つけるだけで数日はかかりそうな雰囲気すら感じる。
「問題ない。我が必要な本の場所へ導こう。それが我が司書の役目故」
「え? 門番じゃなかったの?」
「門番? 我は司書だ。勘違いしてもらっては困る」
「そう……まぁいいか。それじゃあ、黒蛇病……に関しての情報がある本を教えて、どうして発生するのか。もしくは、それを研究している団体。治療法の糸口。なんでもいいからさ」
「フム。複数冊あるが……こちらからだ」
そうして、司書の案内された場所にあった本は『不治の病について』という本だった。
「……これはもう見たよ」
「ほう。なるほど、ではこちらだ」
次に案内されたのは、『黒蛇病』というめちゃくちゃにシンプルな本だった。
本の装丁も正直かなり古く、何百年も前の本の様に思う。
「これは今から300年前に書かれた本だな」
「今読んでみてもいい?」
「勿論。それと、我も必要無ければ消えるし、逆に出て来て欲しいと言えば出てくる」
司書はそう言いながら姿を消したり出したりしている。
その度に、存在感が変わるので、少し戸惑ってしまう。
「ねぇ、座れる場所ってある? 座れるっていうか、読める場所」
「こちらだ」
司書について行くと、小さな丸テーブルに、ソファの様なイスが置いてあるスペースに案内される。
その上からは、優しい光が降り注いでいた。
本を読むには集中して読むことが出来そうだ。
「こんないい場所で読んでもいいの?」
「勿論。必要があれば、黒蛇病に関する本も持ってこよう」
「そんな使いっぱしりにしてもいいの?」
「無論。むしろそうやって司書としての仕事が出来る事が最上の喜びだ」
「それじゃあお願いしてもいいかな? どんな事でもいいから、少しでも情報を集めたいんだ」
「任された」
そう言ってちょっと体を大きくした司書は、嬉しそうな声を上げて本だなに戻って行った。
僕はその背を見送り、本を拡げて読み漁る。
「ふぅ……ってこんなに……」
流石に300年前の本らしく、そこまで新しい情報は載っていなかった。
ただ、昔の方が黒蛇病に罹る人は少なかった。
ということ位しか分からない。
と言っても、今から600年前とか……本当に遥か昔は……という話だったけれど。
気分を変える為に周囲に目をやると。
僕が集中して本を読んでいる間に、司書がかなりの量の本を積み重ねてくれたらしい。
近くにはいつのまにかローテーブルが置かれていて、その上に何十冊と本が置かれていた。
ここまでやってくれたことは本当に嬉しい。
そして、ここまでやってくれるのであれば、もしかしたら……。
「司書さん」
「なんだ?」
いつも気配なくふわっと現れる。
流石にもう何度も会ったので慣れたけれど。
「もしかしてだけれど、黒蛇病の情報を集めるの手伝って、って言ったら手伝ってくれる?」
「当然。司書は書に関する事の手助けを出来る限り行なうこと。であれば、なぜ断ろうか、いや、断るまい」
「本当? ありがとう。それじゃあそっちの本から読んでもらっていいかな?」
「承った。ただ、何の情報を伝えればいい?」
「そうだね……」
確かに、どういう情報がいいのだろうか……。よし。
「黒蛇病の原因とか、治療法、それらの事を特定しようとしていた団体とかの情報もあったら欲しい」
「承った」
司書はそう言って空中に本を浮かすと、それを読み始めた。
内容は知っている訳ではないんだなと感じる。
それから暫くして、司書が口を開く。
「一つよいか?」
「ん? 何?」
僕は司書の言葉を聞き逃すまいと集中する。
「黒蛇病とやらは〈黒神の祝福〉という団体がバラ撒いている可能性がある。そう書かれているがこの団体の情報はどうだろうか?」
「え?」
僕は司書の言葉の意味が分からずに聞き返した。
僕は周囲を警戒していると、またしても突然声がした。
「合格だ」
「うわ!」
驚いてそちらを見ると、さっきの青い鎧が何事も無かったかのように存在していた。
「何を驚く。我を破壊し、試練を突破したのだ。喜ぶ所であるぞ」
「あ、ああ。うん。ありがとう。それで、禁書庫には入っていいんだっけ?」
「構わぬ」
「その前にあっちにいる皆に話して来たいんだけど、いいかな?」
「問題ない。しかし、連れてゆくことは出来ぬ」
「分かった」
僕は戻り3人が待つ場所へ進む。
結界はいつの間にか消えていて、3人の姿は見えるようになっていたのだ。
「お待たせ」
「クトー! どこに行ってたの?」
「心配しました。半分まで進んだ所で姿が消えましたので……」
「全く。レイラ様に心配をかけるとは許さんぞ」
3人がそれぞれに話して来る。
アルセラだけちょっと方向がおかしい気もするけど……。
「とりあえず、今さっき試練を受けてきて、突破して来たよ」
「流石ね」
「凄いです……」
「私に勝ったのだ。その程度は勝てないと困る」
「それで、試練を受けないで欲しいから、何か知りたい情報があったら僕が調べてくる。だから何かない?」
「どうして? アルセラも行かせてもいいんじゃないかしら? ダメだったら帰って来れるんでしょう?」
レイラが代表して聞いて来る。
「それが、試練が終わるまで、僕が試練を突破するか、死ぬか。どっちかでしか出られない。そう言われたんだ」
「!?」
3人の顔が同時に驚く。
「それは……わたくしの兄が……嘘を言った。という事でしょうか?」
フェリスは信じられない。
とでも言うように僕に聞いてくる。
でも、それに断言は出来ない。
「分からない……でも、少なくとも、僕が戦った門番はそう言っていたよ」
「……」
彼女はそれから黙り込み、俯く。
レイラが代わりに聞いて欲しいことを答えてくれた。
「それなら……黒蛇病の事と、フェリスの呪われた手の事。そして、黒蛇病を調べるとどうなるか……という事も調べて欲しいわね」
「分かった。他には?」
「後は……」
「?」
レイラがゆっくりと僕に近付いてくる。
そして、顔がもうすぐにくっつきそうになると……。
ゴツン!
思い切り頭で頭をぶつけられた。
「い……った……」
「『癒やせ』」
「ちょ……自分だけずるい」
「当然でしょ? 今日はいかない。っていうので話していたのに、勝手に一人で行って……。心配させないでよね」
「ご、ごめん」
「ま、いいわ。あたし達は一度戻っていた方がいいのかしら?」
「そうだね……どれくらい時間がかかるか分からないから、それでもいいと思う」
「わかったわ。フェリスが戻り次第帰るわね」
「うん。ここまで来てくれてありがとう。それに、フェリスも、ここまで連れてきてくれて助かったよ」
「……」
彼女からの返事はない。
僕は彼女にそれ以上何も言わずに禁書庫へと向かう。
僕の考えでは、彼女は……遠回しに殺されそうになったのではないかと思う。
禁書庫に行けば試練を受けなければならない。
けれど、フェリスの実力では勝つことは出来ない。
ならば、後は殺されるだけ。
多少遠回しな事かもしれないけれど、直接手が下せないなら、もしかしたらの可能性にかけたかも知れない。
まぁ、フェリスの兄が彼女のことを殺そうとする理由も分からないのだけれど……。
「済んだか」
「はい」
鎧に近付くとそう話かけてくる。
「それではこちらだ」
ノッシノッシと重い音を盾ながら鎧は進む。
そして、奥の方にあった機の扉をくぐると、その鎧は消え去ってしまった。
どうしようか悩んでいると、すぐ耳元で声がする。
「何をしている。さっさと入らないか」
「うわ。びっくりした」
耳の横には10cm位のサイズにまで小さくなった鎧がいた。
しかも、何故か宙に浮いているのだ。
「なんでそんな形に……?」
「あの姿では邪魔だろうが。それに、本を傷つける」
「そ、そう……」
これ以上突っ込んだら負けかもしれない。
そう思って僕は前に進む。
「ふわ……」
木の扉を通り抜けると、そこは壁一面にある本本本。
天井は3m近くあるけれど、その全てをぎっしりと埋め尽くすように棚に本が入れられている。
そんな棚はどこまでも奥に続いている。
禁書庫の中は薄暗く、どこまで続いているのか想像もつかない。
本のかびた様な臭いはすることはないのが少し驚きではあったかもしれない。
「ねぇ、僕はこの一杯ある中の本を自分で探さないといけないの?」
今から始めても目当ての本を見つけるだけで数日はかかりそうな雰囲気すら感じる。
「問題ない。我が必要な本の場所へ導こう。それが我が司書の役目故」
「え? 門番じゃなかったの?」
「門番? 我は司書だ。勘違いしてもらっては困る」
「そう……まぁいいか。それじゃあ、黒蛇病……に関しての情報がある本を教えて、どうして発生するのか。もしくは、それを研究している団体。治療法の糸口。なんでもいいからさ」
「フム。複数冊あるが……こちらからだ」
そうして、司書の案内された場所にあった本は『不治の病について』という本だった。
「……これはもう見たよ」
「ほう。なるほど、ではこちらだ」
次に案内されたのは、『黒蛇病』というめちゃくちゃにシンプルな本だった。
本の装丁も正直かなり古く、何百年も前の本の様に思う。
「これは今から300年前に書かれた本だな」
「今読んでみてもいい?」
「勿論。それと、我も必要無ければ消えるし、逆に出て来て欲しいと言えば出てくる」
司書はそう言いながら姿を消したり出したりしている。
その度に、存在感が変わるので、少し戸惑ってしまう。
「ねぇ、座れる場所ってある? 座れるっていうか、読める場所」
「こちらだ」
司書について行くと、小さな丸テーブルに、ソファの様なイスが置いてあるスペースに案内される。
その上からは、優しい光が降り注いでいた。
本を読むには集中して読むことが出来そうだ。
「こんないい場所で読んでもいいの?」
「勿論。必要があれば、黒蛇病に関する本も持ってこよう」
「そんな使いっぱしりにしてもいいの?」
「無論。むしろそうやって司書としての仕事が出来る事が最上の喜びだ」
「それじゃあお願いしてもいいかな? どんな事でもいいから、少しでも情報を集めたいんだ」
「任された」
そう言ってちょっと体を大きくした司書は、嬉しそうな声を上げて本だなに戻って行った。
僕はその背を見送り、本を拡げて読み漁る。
「ふぅ……ってこんなに……」
流石に300年前の本らしく、そこまで新しい情報は載っていなかった。
ただ、昔の方が黒蛇病に罹る人は少なかった。
ということ位しか分からない。
と言っても、今から600年前とか……本当に遥か昔は……という話だったけれど。
気分を変える為に周囲に目をやると。
僕が集中して本を読んでいる間に、司書がかなりの量の本を積み重ねてくれたらしい。
近くにはいつのまにかローテーブルが置かれていて、その上に何十冊と本が置かれていた。
ここまでやってくれたことは本当に嬉しい。
そして、ここまでやってくれるのであれば、もしかしたら……。
「司書さん」
「なんだ?」
いつも気配なくふわっと現れる。
流石にもう何度も会ったので慣れたけれど。
「もしかしてだけれど、黒蛇病の情報を集めるの手伝って、って言ったら手伝ってくれる?」
「当然。司書は書に関する事の手助けを出来る限り行なうこと。であれば、なぜ断ろうか、いや、断るまい」
「本当? ありがとう。それじゃあそっちの本から読んでもらっていいかな?」
「承った。ただ、何の情報を伝えればいい?」
「そうだね……」
確かに、どういう情報がいいのだろうか……。よし。
「黒蛇病の原因とか、治療法、それらの事を特定しようとしていた団体とかの情報もあったら欲しい」
「承った」
司書はそう言って空中に本を浮かすと、それを読み始めた。
内容は知っている訳ではないんだなと感じる。
それから暫くして、司書が口を開く。
「一つよいか?」
「ん? 何?」
僕は司書の言葉を聞き逃すまいと集中する。
「黒蛇病とやらは〈黒神の祝福〉という団体がバラ撒いている可能性がある。そう書かれているがこの団体の情報はどうだろうか?」
「え?」
僕は司書の言葉の意味が分からずに聞き返した。
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