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第3章 聖女は依頼をこなす
193話 判定
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真っ先に上がった札は青色だった。その札をあげたのはジャンで、彼は当然こちらという顔をしている。
他の二人は? と思って見ていると、ファルさんが恐る恐るといった感じで札をあげる。その色は赤色だった。
「やった!」
「まだだ、まだギルドマスターの札が上がっていない」
「そうでした」
1票でも上がった私としては嬉しい所だけど、フリッツさんはギルドマスターに射殺さんばかりの視線を送っていた。
ギルドマスターへの視線は更に強くなり、この部屋の誰もが彼女の札の行方を見守る。
そして、遂にギルドマスターが札をあげた。
「勝者は……クロエチーム!」
「やったぁ!」
「流石だクロエ!」
「ありがとうございます! これもフリッツさん達のお陰です!」
良かった。正直あんなに完成度の高い料理を出された時点で負けを覚悟していたけど、まさか勝てるなんて。
しかし、それを不満に思う人もいた。
「ふざけるんじゃねぇ! 確かにあのスープは美味かった。だが、俺達の料理の方が完成度も、量も速さも勝っていた!」
「そうだ! どう考えてもおかしいだろうが!」
「そうだよ! ちゃんと説明しな!」
相手の狂気の刃の人達が怒っている。それもそうだろう。あれだけの料理を出して負けたなどと信じられるかと言われると私も中々出来ない。
ギルドマスターは彼らの言葉に頷く。
「その疑問ももっともだね。では、どうしてそうなったのかそれぞれ話して貰おうかね。まずはジャン。アンタからだよ」
「おで? 分かっただで」
彼は一つ頷くと話始める。
「狂気の刃の方々の料理は味、量、全てに置いて完璧だったんだな。お腹が空いている胃袋を完璧に満たしてくれたんだで。味付けは肉そのものの味を最大限に引き出す様にしてあるんだな。スープも魚の出汁が効くようになっていて具材も多くて食べ応え抜群。パンもそれぞれの料理を邪魔しない様にシンプルな味付けながらも絶妙にマッチするこの感じは毎日でも食べたいんだな」
「クロエさんの料理については?」
「当然美味しかったんだな。ただ、おでからすると確かに美味しかったけど、それでも最初に出てきた方の料理を超えるほどではなかったんだな。それに、あの美味しさも最初の料理を食べたからこそ。料理だけだとどう考えても狂気の刃の方が勝っていたんだな」
「なるほどね」
ジャンすごい。
『狂気の刃』の人達はそうだろう。といった感じで頷いている。
ギルドマスターはファルさんに視線を送る。
「それじゃあファル。貴方はどうしてクロエの料理に?」
「私もですね最初は狂気の刃の方々に投票しようと思っていました。勿論どちらも美味しかったですけどね? ですが、何度もクロエさんのスープを飲むうちに、彼女の優しさと言うか、気遣いに気付くことが出来たんです」
「気遣い?」
「はい。彼女はずっと狂気の刃の方々の料理が作り終わるのを待っていました。そして、私たちが食べ終わり、お腹にダメージを負った程の衝撃でした。私はこう見えてもそこまで若くないので、あれだけの食事、美味しいですが、どうあがいてもお腹に来るのですよ。その後にクロエさん達の食事を本気で食べていたらどうなっていたと思いますか? 審判として食べない訳にはいきません。ですけど、かなりのダメージを負うこと間違いなしでしょう。ですが、クロエさんはあのように優しい味のスープだけにしてくれた。それも量を考えて余り多くない様に。審判達のことも気遣ってくれるその優しさ。それによって、私はクロエさんに投票しました」
「なるほどね……」
ファルさんのしみじみという姿に『狂気の刃』の人達は何も言えないようだった。
「それじゃあ最後に私ね」
そう言ってギルドマスターの評価が始まる。
「私も大体はファルと一緒よ。優しい味のスープはとても美味しかった。勿論狂気の刃のステーキやパン、スープも美味しかったわ。でもね、私としてはもう一点言うことがあるのです」
「?」
何だろう。ギルドマスターがわざわざ溜めを作ってまで言うことってあるのだろうか。
「それは、貴方達はいつも同じ料理ばかり作りすぎなのです。だから何度も何度も食べている私からするとこの味には飽きているんですよ! 当然、美味しいですよ? ですが、それと同等くらいのスープが出てきたらそっちに勝敗をあげるでしょう?」
「え?」
「それってつまり……」
「いつもこういった勝負をしているのか?」
私たちがそう言うと、ギルドマスターは少し固まった後に咳払いをする。
「おほん。細かいことは置いておいて、勝負は決まりましたね。クロエさん達の勝利になります」
「本当にこれでいいんですかね?」
なんだか勝負の実感が湧かない。
他の二人は? と思って見ていると、ファルさんが恐る恐るといった感じで札をあげる。その色は赤色だった。
「やった!」
「まだだ、まだギルドマスターの札が上がっていない」
「そうでした」
1票でも上がった私としては嬉しい所だけど、フリッツさんはギルドマスターに射殺さんばかりの視線を送っていた。
ギルドマスターへの視線は更に強くなり、この部屋の誰もが彼女の札の行方を見守る。
そして、遂にギルドマスターが札をあげた。
「勝者は……クロエチーム!」
「やったぁ!」
「流石だクロエ!」
「ありがとうございます! これもフリッツさん達のお陰です!」
良かった。正直あんなに完成度の高い料理を出された時点で負けを覚悟していたけど、まさか勝てるなんて。
しかし、それを不満に思う人もいた。
「ふざけるんじゃねぇ! 確かにあのスープは美味かった。だが、俺達の料理の方が完成度も、量も速さも勝っていた!」
「そうだ! どう考えてもおかしいだろうが!」
「そうだよ! ちゃんと説明しな!」
相手の狂気の刃の人達が怒っている。それもそうだろう。あれだけの料理を出して負けたなどと信じられるかと言われると私も中々出来ない。
ギルドマスターは彼らの言葉に頷く。
「その疑問ももっともだね。では、どうしてそうなったのかそれぞれ話して貰おうかね。まずはジャン。アンタからだよ」
「おで? 分かっただで」
彼は一つ頷くと話始める。
「狂気の刃の方々の料理は味、量、全てに置いて完璧だったんだな。お腹が空いている胃袋を完璧に満たしてくれたんだで。味付けは肉そのものの味を最大限に引き出す様にしてあるんだな。スープも魚の出汁が効くようになっていて具材も多くて食べ応え抜群。パンもそれぞれの料理を邪魔しない様にシンプルな味付けながらも絶妙にマッチするこの感じは毎日でも食べたいんだな」
「クロエさんの料理については?」
「当然美味しかったんだな。ただ、おでからすると確かに美味しかったけど、それでも最初に出てきた方の料理を超えるほどではなかったんだな。それに、あの美味しさも最初の料理を食べたからこそ。料理だけだとどう考えても狂気の刃の方が勝っていたんだな」
「なるほどね」
ジャンすごい。
『狂気の刃』の人達はそうだろう。といった感じで頷いている。
ギルドマスターはファルさんに視線を送る。
「それじゃあファル。貴方はどうしてクロエの料理に?」
「私もですね最初は狂気の刃の方々に投票しようと思っていました。勿論どちらも美味しかったですけどね? ですが、何度もクロエさんのスープを飲むうちに、彼女の優しさと言うか、気遣いに気付くことが出来たんです」
「気遣い?」
「はい。彼女はずっと狂気の刃の方々の料理が作り終わるのを待っていました。そして、私たちが食べ終わり、お腹にダメージを負った程の衝撃でした。私はこう見えてもそこまで若くないので、あれだけの食事、美味しいですが、どうあがいてもお腹に来るのですよ。その後にクロエさん達の食事を本気で食べていたらどうなっていたと思いますか? 審判として食べない訳にはいきません。ですけど、かなりのダメージを負うこと間違いなしでしょう。ですが、クロエさんはあのように優しい味のスープだけにしてくれた。それも量を考えて余り多くない様に。審判達のことも気遣ってくれるその優しさ。それによって、私はクロエさんに投票しました」
「なるほどね……」
ファルさんのしみじみという姿に『狂気の刃』の人達は何も言えないようだった。
「それじゃあ最後に私ね」
そう言ってギルドマスターの評価が始まる。
「私も大体はファルと一緒よ。優しい味のスープはとても美味しかった。勿論狂気の刃のステーキやパン、スープも美味しかったわ。でもね、私としてはもう一点言うことがあるのです」
「?」
何だろう。ギルドマスターがわざわざ溜めを作ってまで言うことってあるのだろうか。
「それは、貴方達はいつも同じ料理ばかり作りすぎなのです。だから何度も何度も食べている私からするとこの味には飽きているんですよ! 当然、美味しいですよ? ですが、それと同等くらいのスープが出てきたらそっちに勝敗をあげるでしょう?」
「え?」
「それってつまり……」
「いつもこういった勝負をしているのか?」
私たちがそう言うと、ギルドマスターは少し固まった後に咳払いをする。
「おほん。細かいことは置いておいて、勝負は決まりましたね。クロエさん達の勝利になります」
「本当にこれでいいんですかね?」
なんだか勝負の実感が湧かない。
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