防御魔法しか使えない聖女はいらないと勇者パーティーを追放されました~そんな私は優しい人と出会って今は幸せです

土偶の友

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第3章 聖女は依頼をこなす

190話 食材選び

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私が調理台に立つと、ギルドマスターが話始める。

「さて、早速ですが、調理の時間は60分。そこに置いてるものは好きに使ってもいいですが持って行ったら必ず調理なさい。そして、相手を妨害するように集めたり、余りに酷い使い方をする場合は反則としてこの街で二度と冒険者を名乗れない様にします。質問は?」
「反則が重くありません?」

 確かに食料は大事だけどそこまで?

 私がそういうと、ギルドマスターはじろりとこちらを睨んで来る。

「当然の処置です。この食材は大切な物ですからね。他に質問は?」
「ないです」
「ないぜぇ」

 私は諦めて何を作ろうか考える。

「それでは用意、スタート!」
「ひゃっはぁ! いい食材は頂きだぁ!」
「スピードこそ命だぜぇ!」
「いいもんは貰ってくよ!」

 そう言って狂気の刃の人達は食材を素早く選び持って行く。それもちゃんと鮮度のいいものだったり、組み合わせを仲間内で考えているようだった。

「すごいですね。しっかりと選んでいます」
「行かなくていいのか? いいものは持って行かれてしまうぞ?」
「そうですね……。でも流石にそれなりの量は残ると思うので……」

 そう言った側から相手チームは食材を選び終え、調理台に帰っていった。

 それを見て私はゆっくりと食材の方へ足を伸ばす。

 良かった。ちゃんと食材は6,7割は残ってる。それに大抵の料理は作れそう……。こういう時ってどういった料理がいいんだろう。普通に美味しい料理にしちゃってもいいのかな? わかんないなぁ。ちょっと相手の方を見てみよう。

 狂気の刃の人達はいいお肉を使って下味を付けたり、大きな鍋に魚を入れて煮込んだりしている。野菜等の物はあんまりなく、すごくがっつりとしたものが食べられそうだ。

 どうしよう。私も急いでそういうの作った方がいいのかな? でもあんまりそういうのを作ったことないから……。あの人たちの動きを見て居る感じ。かなり手慣れた感じがする。ということは、付け焼刃の料理だと勝てないかもしれない……。どうしたら……。

 そんなことを考えながらも、料理のことを考え続ける。今ばかりは魔掌握の練習も止めている。

 がっつり目の料理か……。ということはそれに負けないような物をぶつけないと、生半可な料理では消されてしまう気がする。ならどうする? どうすればいい?

「へいへい! アニキ達が料理作り終わっちまうぜ!」
「ほんとにうまいもん食わしてくれるんだろうな!」

 考えていると、チンピラがヤジを飛ばしてくる。

 私はそれを無視して食材を見続けた。

 どうしよう。確かに時間が無くなってきちゃうし……。

 そんなことを考えていたらヤジを気にしたのかフリッツさんが来てくれた。

「どうしたんだクロエ? いつもなら直ぐに料理を決めるじゃないか」
「そうなんですけど……。相手の方々の手際はとってもよくって……。普通に作ったんじゃ負けてしまうんじゃないかと思って」
「クロエの料理なら大丈夫だ。何を作っても勝てる。白湯を出しただけでも問題ない」
「流石にそれは……」

 白湯だけでは料理と呼べないだろう。あ……そうか、そういうやり方があるのか。

「フリッツさん。ありがとうございます。これでいけそうです!」
「本当か? 良かった。楽しみにしているぞ。何か手伝うことはあるか?」
「火だけ起こしておいて貰えると助かります」
「分かった」

 私は相手チームが作ろうとしている物を見ながら良さそうな物を選ぶ。

 あの感じなら……これと、これと……。これもいいのかな?

 そうして私は良さそうな物を選び終えて、両手に持って調理台に帰る。

「それだけでいいのか?」
「はい!」
「そうか、火はもう起こしてあるぞ」
「では早速始めますね」

 私はここにおいてある調理器具ではなく、いつもの使い慣れた物を出して調理を始める。

「キリルさん。この鍋一杯に水を入れてもらっていいですか?」
「ああ、ウォーターボール」

 そして、キリルさんがウォーターボールの水を鍋の中に満たす。

 後はこれが沸騰する間に食材を切って……。でもあんまり急がない様にしっかりと丁寧に下処理をしていかないと。

 そうして切り終わった所で時間を確認すると、残り30分程だった。
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