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第3章 聖女は依頼をこなす
188話 次の勝負は
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「……」
「……」
「……」
「おい」
「はい!」
私は『狂気の刃』の一人に呼びかけられ、はねるようにそちらを向く。
鎧を着ている彼は私の顔をじっと見て居て、何をされるのか分からないので恐怖しか感じない。
何をされるのかと思って身構えていると、彼の口からそっと言葉が漏れた。
「いい話じゃねえか……」
「そう……ですね?」
言われていることが分からないけど、取りあえず賛同しておこう。悪い意味ではないと思う。
「あぁ、アイツら……幸せになってくれるといいなぁ……」
後ろから魔法使いの彼が鎧の彼の肩をたたく。
「大丈夫だよ。アイツら、ちゃんと色々乗り越えたんだ。だから問題ねえ。アイツらは強い。だから問題ねぇ」
「そうだよ。アタシ達だってあんな風になれるようにもっと頑張んないとね」
「ああ、俺達ももっと強くなろう。それで、あんな風に誰かを守れるようになろう」
「勿論だ」
「当然じゃないかい」
そうして彼らは互いに慰め合って、泣いていた。
私は振り返りフリッツさんとキリルさんに話しかける。
「どうしましょう」
「知らん」
「……」
答えは見つからなかった。
それから少しして、ギルドマスターが手を叩いて注目を集める。
パンパン
「さ、これで1回戦の勝者は決まったようね?」
『狂気の刃』の人達が口々に言ってくる。
「ああ、今回は文句なしでお前達の勝ちだ」
「ペットを連れて来いって話だったのに、まさか上手くいっていない恋人を連れてきて修復しちまうとはな……」
「流石聖女様だよ。アタシ達には出来ない芸当だからね……」
偶々だしこれで聖女なんて言わないで欲しい。
そして、ギルドマスターが話を戻してくれる。
「さ、これで一回戦は……アンタたち、パーティー名はないのかい?」
「ああ、それはひみ……」
私が言おうとすると、フリッツさんに押さえられる。
「まだ決まっていない。というか今回のも臨時で組んでいるだけで、行く先は別なんだ」
「そうなの? いいパーティーになると思ったけど」
「そう言ってくれると嬉しいよ。でも、目的が違ってな。進む方が違うんだよ」
「そう、で、何て呼んで欲しい?」
「スーパーサンシャインデラックスで頼む」
「ふぐぐ!?」
その名前は!? まさか諦めていなかったの!?
フリッツさんが言った言葉をギルドマスターが繰り返す。
「す、スーパーサンシャインデラックスね? そう……いい名前ね」
「ふぐ!?」
ほんとに? 本当なの!?
「それで、何時までそうしているのかしら?」
「ああ、すまない」
「ぷは……」
フリッツさんにはなんと言ったらいいか……。秘密の懸け橋の名前を言おうとしたことはあれかもしれないけど、だからって……ねぇ?
その抗議の意味も込めて視線だけ送っておく。
「どうした?」
「なんでもないです」
私はそう返す。
「そ、そうか」
「さて、次の勝負内容は……そうね。負けた狂気の刃に選んで貰いましょうか」
「ひゃははは、待ってたぜぇ」
「イチャイチャが終わったと思ったら違うイチャイチャが始まるんだもんなぁ!」
「これはやってらんないって言うの!」
「そういうんじゃないです!」
「それで、次の勝負内容はどうするのかしら?」
私の抗議の声は無視され、ギルドマスターが狂気の刃の人達に続きを促す。
鎧を来たジュンタさんがいきなり剣を引き抜きべロリと一舐めする。
「冒険者として、力を競うっつったら外せねえモンがあるよなぁ」
魔法使いの人が杖を掲げる。
「当然誰でも出来るはずだよね?」
神官の人もモーニングスターを持ち上げた。
「ゴクリ」
この感じは……。
「「「そう! 料理対決!」」」
「なんでですか!」
どう考えてもこの流れは模擬戦の流れだったんじゃないですか!?
「確かに、大事だな」
「切っても切り離せないだろう」
「フリッツさん!? キリルさん!?」
味方の2人はさも当然といった顔で頷いている。
鎧の人は剣を鞘に戻しながら言う。しかもちゃんと舐めた部分は拭いている。何の為に舐めたんだろう。
「だろう? 冒険者は冒険者として外に出続けるなら必須の技能と言ってもいい。これが出来るだけで移動中の苦痛は半分は減るということも聞いたことがあるしなぁ!」
「じゃあ早速やろうかね。場所はギルドの調理場を提供しよう」
「早速やってやるぜ!」
「俺達の料理の腕前に腰抜かすなよ!」
「女子力の見せどころだね!」
そう言ってギルドマスターに続き狂気の刃の人達も中に入っていく。
もしかして……悪い人たちじゃないんじゃないだろうか。
「……」
「……」
「おい」
「はい!」
私は『狂気の刃』の一人に呼びかけられ、はねるようにそちらを向く。
鎧を着ている彼は私の顔をじっと見て居て、何をされるのか分からないので恐怖しか感じない。
何をされるのかと思って身構えていると、彼の口からそっと言葉が漏れた。
「いい話じゃねえか……」
「そう……ですね?」
言われていることが分からないけど、取りあえず賛同しておこう。悪い意味ではないと思う。
「あぁ、アイツら……幸せになってくれるといいなぁ……」
後ろから魔法使いの彼が鎧の彼の肩をたたく。
「大丈夫だよ。アイツら、ちゃんと色々乗り越えたんだ。だから問題ねえ。アイツらは強い。だから問題ねぇ」
「そうだよ。アタシ達だってあんな風になれるようにもっと頑張んないとね」
「ああ、俺達ももっと強くなろう。それで、あんな風に誰かを守れるようになろう」
「勿論だ」
「当然じゃないかい」
そうして彼らは互いに慰め合って、泣いていた。
私は振り返りフリッツさんとキリルさんに話しかける。
「どうしましょう」
「知らん」
「……」
答えは見つからなかった。
それから少しして、ギルドマスターが手を叩いて注目を集める。
パンパン
「さ、これで1回戦の勝者は決まったようね?」
『狂気の刃』の人達が口々に言ってくる。
「ああ、今回は文句なしでお前達の勝ちだ」
「ペットを連れて来いって話だったのに、まさか上手くいっていない恋人を連れてきて修復しちまうとはな……」
「流石聖女様だよ。アタシ達には出来ない芸当だからね……」
偶々だしこれで聖女なんて言わないで欲しい。
そして、ギルドマスターが話を戻してくれる。
「さ、これで一回戦は……アンタたち、パーティー名はないのかい?」
「ああ、それはひみ……」
私が言おうとすると、フリッツさんに押さえられる。
「まだ決まっていない。というか今回のも臨時で組んでいるだけで、行く先は別なんだ」
「そうなの? いいパーティーになると思ったけど」
「そう言ってくれると嬉しいよ。でも、目的が違ってな。進む方が違うんだよ」
「そう、で、何て呼んで欲しい?」
「スーパーサンシャインデラックスで頼む」
「ふぐぐ!?」
その名前は!? まさか諦めていなかったの!?
フリッツさんが言った言葉をギルドマスターが繰り返す。
「す、スーパーサンシャインデラックスね? そう……いい名前ね」
「ふぐ!?」
ほんとに? 本当なの!?
「それで、何時までそうしているのかしら?」
「ああ、すまない」
「ぷは……」
フリッツさんにはなんと言ったらいいか……。秘密の懸け橋の名前を言おうとしたことはあれかもしれないけど、だからって……ねぇ?
その抗議の意味も込めて視線だけ送っておく。
「どうした?」
「なんでもないです」
私はそう返す。
「そ、そうか」
「さて、次の勝負内容は……そうね。負けた狂気の刃に選んで貰いましょうか」
「ひゃははは、待ってたぜぇ」
「イチャイチャが終わったと思ったら違うイチャイチャが始まるんだもんなぁ!」
「これはやってらんないって言うの!」
「そういうんじゃないです!」
「それで、次の勝負内容はどうするのかしら?」
私の抗議の声は無視され、ギルドマスターが狂気の刃の人達に続きを促す。
鎧を来たジュンタさんがいきなり剣を引き抜きべロリと一舐めする。
「冒険者として、力を競うっつったら外せねえモンがあるよなぁ」
魔法使いの人が杖を掲げる。
「当然誰でも出来るはずだよね?」
神官の人もモーニングスターを持ち上げた。
「ゴクリ」
この感じは……。
「「「そう! 料理対決!」」」
「なんでですか!」
どう考えてもこの流れは模擬戦の流れだったんじゃないですか!?
「確かに、大事だな」
「切っても切り離せないだろう」
「フリッツさん!? キリルさん!?」
味方の2人はさも当然といった顔で頷いている。
鎧の人は剣を鞘に戻しながら言う。しかもちゃんと舐めた部分は拭いている。何の為に舐めたんだろう。
「だろう? 冒険者は冒険者として外に出続けるなら必須の技能と言ってもいい。これが出来るだけで移動中の苦痛は半分は減るということも聞いたことがあるしなぁ!」
「じゃあ早速やろうかね。場所はギルドの調理場を提供しよう」
「早速やってやるぜ!」
「俺達の料理の腕前に腰抜かすなよ!」
「女子力の見せどころだね!」
そう言ってギルドマスターに続き狂気の刃の人達も中に入っていく。
もしかして……悪い人たちじゃないんじゃないだろうか。
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