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第3章 聖女は依頼をこなす
177話 魔掌握について
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私たちは蒼穹の息吹の皆と共に東の森を目指す。空には雲一つなく晴れ渡っていて、レイスが出てくるようにはあんまり見えない。
移動途中に、ミーナさんとエミリーさんが話しかけてくる。
「今回はありがとうね。クロエ」
「感謝します。我々だけではレイス相手だとかなり不安があったので……」
「そうなんですか? 皆さんなら大丈夫かと思ったんですが」
「そうでもないわ。ファルは謙遜していたけど、ちゃんとBランクに相応しい実力は持ってる。でも、レイスが複数ってことしか分かっていないでしょう?」
「それがなにか問題があるんですか?」
それに答えてくれるのはエミリーさんだ。
「複数ってアバウトだと思いませんか?」
「そう言えば……」
「倒したかはレイスの落とす魔石を見せればいいとして、それでも、2体倒しただけでも許される。これはそういう所に厳格なギルドでは考えられない」
ミーナさんの言っていることがよくわからない。
エミリーさんがそれに続く。
「つまり、レイスを最低2体討伐すれば、後は帰ってきてもいい。もしかすると、レイスより大物がいるかもしれない。そう言うことよ」
「え? でもギルドではそんなこと」
「ギルドも確証は得ていないからだと思います。勝手に邪推して、居もしない魔物を居るかのように話すのはしたくないんでしょう。だから、もしも何か危ないのに出会ったら最低2体は討伐していればいい。ということにしてくれているのだと思います」
「なるほど」
そういうことは全然考えたことがなかった。うーん。勉強してばかりな気がする。
そんな思いとは裏腹に、ミーナさんが明るく言ってくる。
「ま、そういうことは高ランクになってからよ。低ランクではそんな危険な依頼なんて来ないから。仕方ないわ。それよりも、魔掌握は出来るようになったの?」
「え? ま、まだですよ? 一応いつも意識するようにはしているんですけど、中々上手くいかなくて」
昨日の依頼の時以外はご飯中とかも意識していたのだけど、思うような成果は出ていなかった。
「ま、そうよねー。簡単に出来るものじゃないし、出来たらレイスももっと楽だったんだけど……」
「そうなんですか?」
「ええ……でも、詳しい話はエミリーよろしく」
「分かりました。レイスは魔法攻撃しか効かないとお話しましたよね?」
「はい」
「ですが、魔掌握を使うことが出来ればレイスを倒すことが出来るとされています」
「そうなんですか?」
「はい。魔掌握は自身の魔力を完全に操ること。そして、自身の魔力を操り、それを剣など武器に乗せることが出来れば、近接攻撃も効くようになるんです」
「え? じゃあキリルさんの魔掌握を皆さんの武器に乗せれば……」
レイスなんて怖くないんじゃないか?
と思っていたがそうでもないらしい。
「それは出来ないんです。基本的に攻撃魔法は指向性を持たせて指定された方向に攻撃して終わりですからね。自分の武器ぐらいなら別にして、人に渡してその場に留めて置くことは出来ないんです」
「そうなんですか……」
「だからこそ魔掌握っていう技術の必要性が叫ばれているんですが、レイスの様な魔掌握がないと倒せないような敵はほとんどいません。それに、魔掌握がなくても、魔法使いさえ守っておけば勝ててしまうので、魔掌握習得が難しいこともあって余り学ぼうとする人が少ないんですよ」
「まぁ、教えることが出来る人が相当少ないのも原因の一つだろうけどね」
「やっぱりそれだけ難しいんですね……」
「そうですけど、より高みを目指すのであれば必須の技能と言っても差し支えありません。頑張ってください」
「はい。分かりました」
3人で雑談をしながら東の森を目指す。当然魔掌握の練習をしながらだ。
そして、野営の時間になった。
移動途中に、ミーナさんとエミリーさんが話しかけてくる。
「今回はありがとうね。クロエ」
「感謝します。我々だけではレイス相手だとかなり不安があったので……」
「そうなんですか? 皆さんなら大丈夫かと思ったんですが」
「そうでもないわ。ファルは謙遜していたけど、ちゃんとBランクに相応しい実力は持ってる。でも、レイスが複数ってことしか分かっていないでしょう?」
「それがなにか問題があるんですか?」
それに答えてくれるのはエミリーさんだ。
「複数ってアバウトだと思いませんか?」
「そう言えば……」
「倒したかはレイスの落とす魔石を見せればいいとして、それでも、2体倒しただけでも許される。これはそういう所に厳格なギルドでは考えられない」
ミーナさんの言っていることがよくわからない。
エミリーさんがそれに続く。
「つまり、レイスを最低2体討伐すれば、後は帰ってきてもいい。もしかすると、レイスより大物がいるかもしれない。そう言うことよ」
「え? でもギルドではそんなこと」
「ギルドも確証は得ていないからだと思います。勝手に邪推して、居もしない魔物を居るかのように話すのはしたくないんでしょう。だから、もしも何か危ないのに出会ったら最低2体は討伐していればいい。ということにしてくれているのだと思います」
「なるほど」
そういうことは全然考えたことがなかった。うーん。勉強してばかりな気がする。
そんな思いとは裏腹に、ミーナさんが明るく言ってくる。
「ま、そういうことは高ランクになってからよ。低ランクではそんな危険な依頼なんて来ないから。仕方ないわ。それよりも、魔掌握は出来るようになったの?」
「え? ま、まだですよ? 一応いつも意識するようにはしているんですけど、中々上手くいかなくて」
昨日の依頼の時以外はご飯中とかも意識していたのだけど、思うような成果は出ていなかった。
「ま、そうよねー。簡単に出来るものじゃないし、出来たらレイスももっと楽だったんだけど……」
「そうなんですか?」
「ええ……でも、詳しい話はエミリーよろしく」
「分かりました。レイスは魔法攻撃しか効かないとお話しましたよね?」
「はい」
「ですが、魔掌握を使うことが出来ればレイスを倒すことが出来るとされています」
「そうなんですか?」
「はい。魔掌握は自身の魔力を完全に操ること。そして、自身の魔力を操り、それを剣など武器に乗せることが出来れば、近接攻撃も効くようになるんです」
「え? じゃあキリルさんの魔掌握を皆さんの武器に乗せれば……」
レイスなんて怖くないんじゃないか?
と思っていたがそうでもないらしい。
「それは出来ないんです。基本的に攻撃魔法は指向性を持たせて指定された方向に攻撃して終わりですからね。自分の武器ぐらいなら別にして、人に渡してその場に留めて置くことは出来ないんです」
「そうなんですか……」
「だからこそ魔掌握っていう技術の必要性が叫ばれているんですが、レイスの様な魔掌握がないと倒せないような敵はほとんどいません。それに、魔掌握がなくても、魔法使いさえ守っておけば勝ててしまうので、魔掌握習得が難しいこともあって余り学ぼうとする人が少ないんですよ」
「まぁ、教えることが出来る人が相当少ないのも原因の一つだろうけどね」
「やっぱりそれだけ難しいんですね……」
「そうですけど、より高みを目指すのであれば必須の技能と言っても差し支えありません。頑張ってください」
「はい。分かりました」
3人で雑談をしながら東の森を目指す。当然魔掌握の練習をしながらだ。
そして、野営の時間になった。
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