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第3章 聖女は依頼をこなす
165話 懐かしいやつら
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「それにしても、どこに行ってしまったんでしょうか?」
「分からん」
「こういう時こそ聞き込みという奴ですかね!」
想像でしかないけれど。
答えてくれるのはフリッツさん。流石に冒険者歴が長い。
「そうだな……。こういう依頼は余りやらないが、人に聞いて目撃情報を集めたり、犬たちが溜まっている場所を探したりすることが多いか。勿論。足で探し回りながらだけどな」
「なるほど、では早速?」
「キリルもいいか?」
「ああ」
それから私たちはルノーさんに聞いた散歩道や遊びに行っていたという所以外の場所を重点的に探した。
同時に、通りがかった人達にも話を聞いて回る。彼らは気軽に答えてくれた。
「うーん。特徴のない犬なんでしょ? そこら中にいるからね」
「見たことあるような……無いような? でも記憶にないなぁ。それっぽい犬なんてどこにでもいるし……」
「犬のたまり場? 意識したこともないよ。どっかそこら辺の裏路地にでも行ったらいるんじゃないの?」
そんな返事が返ってくるばかりで、パインを見つける手がかりになるような話は聞けなかった。
「フリッツさんたちはどうですか?」
私は肩を落としながら2人の様子を聞きに行く。
「ダメだな。やっぱり特徴がないのが原因か」
「こちらもだ。普段からそこまで気にかけている者達ではないのだろう」
「やっぱりですか……」
そう言いつつ歩いていると、懐かしい? 人達に遭遇する。
「げ」
「げ、とはなんでか。げ、とは」
彼らはダラスで私を路地裏で追いかけてきた3人組のチンピラだった。といっても追いかけてきたのは2人だったからまとめていいのかはちょっと分からないけれど。
彼らの内2人は面倒そうな顔で、残りの一人はぼーーとした様な顔で見ている。
「だって、俺達がお前達に何されたのか覚えてないのか?」
「あれはそちらが追いかけて来たからじゃないですか」
「うるせえ、てめえらが悪い!」
「ほう、じゃあもう一回やるか。今度は二度と逆らえない様にしてやるぞ」
「フリッツさん」
私の後ろからフリッツさんが前に進み出る。
すると、彼らのうち2人が一歩下がり、挑発するようなことを言ってきた。
「てめぇ……。ここがどこだか分かってるんだろうな?」
「ここ? ベルニアスがどうかしたのか?」
「ここは俺達のアニキがいるんだぜ。お前達が俺達に手を出すとどうなるか分かってんのか?」
「は、お前達のアニキがどう……」
「ちょっと待ってください!」
今彼らは大事なことを言わなかっただろうか。
「ここって、皆さんの本拠地なんですか?」
「クロエ……それ大事か?」
「とっても大事です!」
フリッツさんは呆れているようだけど、ルノーさんは落ち込んでいた。それを何とかしなければ。
「そうだで、ここがオイラ達の本拠地だで」
色々と濃い彼が教えてくれる。
「それじゃあ、犬とかが多くいるような場所とかってないですか?」
「犬……犬ならここの通りを3つ行って、右に入っていくとその先に結構いるんだな。でも勝手に連れ出すと怒られるで?」
「あ、逃げ出したペットを探しているので大丈夫なんです」
「そうだでか。そこにいる奴らは警戒心が強いから気を付けるんだで」
「分かりました。ありがとうございます」
「無事に見つかるといいんだな」
「はい」
とってもいい人だった。
そんなことを思っていると、他の2人が彼に向かって怒鳴った。
「おいジャン! 何勝手に教えてんだよ!」
「そうだ! こいつらが何したのか忘れた訳じゃねえだろ!」
「何したんだで? ダラスでは鬼ごっこしたことしか知らないんだで」
「……そうだったっけ」
「……確かに言ってなかったかも」
こいつら何がしたいんだろう。
「こいつらは俺達をぶちのめしたんだ!」
「だからあの時の礼をするんだよ! ジャン! お前の魔法を見せてやれ!」
「なるほどなんだで……」
ジャンと呼ばれた濃い魔法使いが頷いている。もしかしてやる気なんだろうか? この街の事を教えてくれたし、いい人だと思ってたけど、やはりチンピラの仲間なのかもしれない。
私は防御魔法を今すぐにかけようとしたと所で、それをやめる。ジャンの言葉を聞いたからだ。
「おではやめとくだで。魔法は人を守るために使うのであって、傷つける為に使うもんじゃないだで」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「どうしたんだで?」
やっぱり色々すごい。何でこの人はチンピラの2人と一緒にいるんだろうか。
「ジャン! いいからやれよ! 俺達仲間だろうが!」
「そうだ! 俺達はこれからこいつらにやられるかもしれない! だからこっちからやるんだよ!」
2人がジャンにそう言って発破をかける。ここまで言えば彼もやる気になるかもしれない。
私再度防御魔法をかけようかと思い、集中を始めた。しかし、直後にそれを後悔することになる。
ジャンが口を開く。
「もし酷いことをされたんなら兵士にでも訴えるべきなんだで。やられたからやっていたでは世界は平和にならないんだな。法でもやられたらちゃんと兵士に報告しなさいってかいてあるんだで? そうやって少しづつ法を守るという意識を積み上げていって、どれくらいかかるかは分からないけど、一人一人が法をしっかりと守って平和に生きて行けるようになりたいんだな」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「今日は皆静かになるんだな」
何も言えない。というか、そんなことを言われると襲われるかも? とか考えていた自分が恥ずかしくなってくる。彼のような立派な考えを私は持てるのだろうか。
「て、てめえら覚えてろ!」
「アニキ達が帰ってきたらボッコボコにしてもらうからな!」
「あ、待つんだな!」
そう言って3人組はどこかに行ってしまった。
「なんだったんでしょうね……」
「全て彼に持って行かれた気がする」
「なかなか見どころのあるやつだ」
「「え?」」
私たちは、ジャンに教えて貰った場所を目指す。
「分からん」
「こういう時こそ聞き込みという奴ですかね!」
想像でしかないけれど。
答えてくれるのはフリッツさん。流石に冒険者歴が長い。
「そうだな……。こういう依頼は余りやらないが、人に聞いて目撃情報を集めたり、犬たちが溜まっている場所を探したりすることが多いか。勿論。足で探し回りながらだけどな」
「なるほど、では早速?」
「キリルもいいか?」
「ああ」
それから私たちはルノーさんに聞いた散歩道や遊びに行っていたという所以外の場所を重点的に探した。
同時に、通りがかった人達にも話を聞いて回る。彼らは気軽に答えてくれた。
「うーん。特徴のない犬なんでしょ? そこら中にいるからね」
「見たことあるような……無いような? でも記憶にないなぁ。それっぽい犬なんてどこにでもいるし……」
「犬のたまり場? 意識したこともないよ。どっかそこら辺の裏路地にでも行ったらいるんじゃないの?」
そんな返事が返ってくるばかりで、パインを見つける手がかりになるような話は聞けなかった。
「フリッツさんたちはどうですか?」
私は肩を落としながら2人の様子を聞きに行く。
「ダメだな。やっぱり特徴がないのが原因か」
「こちらもだ。普段からそこまで気にかけている者達ではないのだろう」
「やっぱりですか……」
そう言いつつ歩いていると、懐かしい? 人達に遭遇する。
「げ」
「げ、とはなんでか。げ、とは」
彼らはダラスで私を路地裏で追いかけてきた3人組のチンピラだった。といっても追いかけてきたのは2人だったからまとめていいのかはちょっと分からないけれど。
彼らの内2人は面倒そうな顔で、残りの一人はぼーーとした様な顔で見ている。
「だって、俺達がお前達に何されたのか覚えてないのか?」
「あれはそちらが追いかけて来たからじゃないですか」
「うるせえ、てめえらが悪い!」
「ほう、じゃあもう一回やるか。今度は二度と逆らえない様にしてやるぞ」
「フリッツさん」
私の後ろからフリッツさんが前に進み出る。
すると、彼らのうち2人が一歩下がり、挑発するようなことを言ってきた。
「てめぇ……。ここがどこだか分かってるんだろうな?」
「ここ? ベルニアスがどうかしたのか?」
「ここは俺達のアニキがいるんだぜ。お前達が俺達に手を出すとどうなるか分かってんのか?」
「は、お前達のアニキがどう……」
「ちょっと待ってください!」
今彼らは大事なことを言わなかっただろうか。
「ここって、皆さんの本拠地なんですか?」
「クロエ……それ大事か?」
「とっても大事です!」
フリッツさんは呆れているようだけど、ルノーさんは落ち込んでいた。それを何とかしなければ。
「そうだで、ここがオイラ達の本拠地だで」
色々と濃い彼が教えてくれる。
「それじゃあ、犬とかが多くいるような場所とかってないですか?」
「犬……犬ならここの通りを3つ行って、右に入っていくとその先に結構いるんだな。でも勝手に連れ出すと怒られるで?」
「あ、逃げ出したペットを探しているので大丈夫なんです」
「そうだでか。そこにいる奴らは警戒心が強いから気を付けるんだで」
「分かりました。ありがとうございます」
「無事に見つかるといいんだな」
「はい」
とってもいい人だった。
そんなことを思っていると、他の2人が彼に向かって怒鳴った。
「おいジャン! 何勝手に教えてんだよ!」
「そうだ! こいつらが何したのか忘れた訳じゃねえだろ!」
「何したんだで? ダラスでは鬼ごっこしたことしか知らないんだで」
「……そうだったっけ」
「……確かに言ってなかったかも」
こいつら何がしたいんだろう。
「こいつらは俺達をぶちのめしたんだ!」
「だからあの時の礼をするんだよ! ジャン! お前の魔法を見せてやれ!」
「なるほどなんだで……」
ジャンと呼ばれた濃い魔法使いが頷いている。もしかしてやる気なんだろうか? この街の事を教えてくれたし、いい人だと思ってたけど、やはりチンピラの仲間なのかもしれない。
私は防御魔法を今すぐにかけようとしたと所で、それをやめる。ジャンの言葉を聞いたからだ。
「おではやめとくだで。魔法は人を守るために使うのであって、傷つける為に使うもんじゃないだで」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「どうしたんだで?」
やっぱり色々すごい。何でこの人はチンピラの2人と一緒にいるんだろうか。
「ジャン! いいからやれよ! 俺達仲間だろうが!」
「そうだ! 俺達はこれからこいつらにやられるかもしれない! だからこっちからやるんだよ!」
2人がジャンにそう言って発破をかける。ここまで言えば彼もやる気になるかもしれない。
私再度防御魔法をかけようかと思い、集中を始めた。しかし、直後にそれを後悔することになる。
ジャンが口を開く。
「もし酷いことをされたんなら兵士にでも訴えるべきなんだで。やられたからやっていたでは世界は平和にならないんだな。法でもやられたらちゃんと兵士に報告しなさいってかいてあるんだで? そうやって少しづつ法を守るという意識を積み上げていって、どれくらいかかるかは分からないけど、一人一人が法をしっかりと守って平和に生きて行けるようになりたいんだな」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「今日は皆静かになるんだな」
何も言えない。というか、そんなことを言われると襲われるかも? とか考えていた自分が恥ずかしくなってくる。彼のような立派な考えを私は持てるのだろうか。
「て、てめえら覚えてろ!」
「アニキ達が帰ってきたらボッコボコにしてもらうからな!」
「あ、待つんだな!」
そう言って3人組はどこかに行ってしまった。
「なんだったんでしょうね……」
「全て彼に持って行かれた気がする」
「なかなか見どころのあるやつだ」
「「え?」」
私たちは、ジャンに教えて貰った場所を目指す。
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