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第2章 聖女は決別する
149話 聖女として
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そして時は戻りクロエと勇者パーティーが再会する。
「よう、クロエ、会いたかったぜぇ」
「……」
私の目の前には勇者が、勇者ランドがいる。声が出なかった。今までの事が頭の中で走馬灯のように流れ、便利に使われているだけだった事が頭の中で通り過ぎていく。
「どうしたんだ? 元気だったか?」
「……」
ランドがランドじゃないみたいな事を言ってくる。今まで元気だったかなんて一度も言われたことはなかったし、笑顔なんて最初の方に見せてきたくらいだった。
私が黙っていると、彼は他の人達に向かって言う。
「お前達、少しどこかに行ってくれないか?」
「知り合いなんだな?」
私はラケルスさんの言葉に小さく頷く。彼らは知り合い。それも、昔は一緒のパーティーにいて、世界を救う為の旅をしていた。だから、口が裂けても違うとは言えなかった。
「そうか……それじゃあ俺達は少し離れているぞ。おい! お前達も少し離れろ! パーティー同士で話すこともあるだろう! 邪魔をするんじゃない!」
「うっす!」
ラケルスさん達が言うと、私たちの周りを囲んでいた他の冒険者が離れていく。これでランド達と私だけになったかと思ったら、そうではなかった。
「お前達にも用はねえ。サッサといけ」
「そうはいかない。クロエとは一緒に旅をすると決めているんだ。共に居させてもらうぞ」
「話すなら続けろ」
「フリッツさん……キリルさん……」
2人は私の後ろで微動だにする様子がない。私は、少しだけランドに向き合う気持ちになれた。ランドの方を向いて今日初めて彼に向って声を上げる。
「それで、お話とは何ですか」
「お話とはまた少し遠いじゃないか。何、お前が困ってると思って迎えに来てやったんだ」
「迎えに……来て……やっ……た……???」
彼は何を言っているのだろう? 迎えに来た? 誰を? もしかして私に? それを何で私に向かって言うのか、心の底から理解できない。
「ああ、お前が居なくなってから、お前がいた方がいいことが分かったんだ。だから俺達とまた来い」
「それは……」
「それに、やらなければいけないことがあるのは知っているだろう? だからまた行くぞ」
「………………」
私は何も言えなくなってしまう。私は、私は、行かなければならないのだろうか。私が聖女候補として院で色々生活出来ていたのも、先生や他の子達と楽しくやっていたのも、全ては聖女として世界を救うため。その為に私達は存在している。
ランドにはいらないと言われてしまったし、あんなことを言われたのだからもう会う必要はない。そう思っていた。でも、でも、聖女として、勇者を手伝い支えるのが聖女の役目。世界を守る為に、私たちは本来手を取り合っていかなければならない。
そうしなければいけないのなら、私は私は……。
足が前に出ない。私は聖女、勇者と共に世界を守るための旅に出なければならない。そんなことは院を出る時に、勇者と出会った時に分かっていたこと。私の命は世界の為に使わなければならない。
頭に色々な人が浮かんでは消えていく、カルラさん、ギルさん、ドン・キホーテさん、食材屋のおばあさん、レント君、バルトさん、先生、チンピラ三人組、山賊みたいな冒険者の人、勇者像のおばあさん、フェリさん、孤児院の冒険者の人、隊長さん、蒼穹の息吹の皆、黒橡の車輪の皆、キリルさん、そして、フリッツさん。皆皆いい人たちだ。その人たちと少しでも一緒にいることが出来て私は幸せだった。彼らの幸せを守るために私がいる。それなら、私がすることは……。
一度大きく呼吸をする。そして、覚悟を決める。
「ランド、分かりました」
「クロエ!?」
「……」
私がランドに向かってそう言うと彼は頷いて手を差し出す。
「さっさと行くぞ。魔王は待ってくれねえんだからな」
「はい……」
私は一歩、一歩を踏み出す。その足はとてつもなく重く、一歩踏み出す度に、次の一歩は倍以上に重たくなっていく。どうして。彼らと一緒にいることなんて今まで長かったじゃないか。少しだけ離れていたのもちょっとした夢のようなもの。だから、元に戻るだけ。嫌なことなんてない。
フリッツさんとキリルさんには申し訳ないけど、許して欲しい。私は心の中で謝る。
そして、3歩目を踏み出そうとした時に急に手を引っ張られた。
「え?」
私が振り返ると、私の右手をフリッツさんが掴んでいた。
「どう……しま……した?」
「行くな」
「でも、私、黙っていましたけど、聖女で……それで、勇者と一緒にいないと……世界が……」
「そんなことはどうでもいい」
フリッツさんにそう言われて、私はカッとなった。
「何でですか! 世界がどうでもいいなんてそんな訳ないでしょう! 私が、私が勇者と一緒に旅をして、魔王を討たなければいけないんです! じゃないと世界が大変なことになるから! だから、だから……」
「なら、何で泣いてるんだ!」
「え……」
私は顔に手を当てると、当てた手が濡れている。気が付かない間に泣いていた。
「え……。何で……」
「行きたくないからに決まってるからだ」
「でも、私は聖女で……」
「そんなこと知ったことか。第一、あいつ等なんだろう。お前に魔力片を持たせて危険な森に追い出したのは」
「……」
そうだ、勇者ランド達に、私は殺されかけた。それは間違っていない。そう思う。
ランドが説得するように言ってくる。
「それは誤解だ。あの時、クロエと別れる時に渡したのは少し前に拾ったただの石だ。少し黒かったが、その黒さもまたいいと思ってクロエに渡したんだ」
「そう……なんですか?」
私は、縋るような気持ちでランドを見る。
彼は私を慰めるように見つめ返してきた。
「そうさ、あの時は不幸な考え方の違いで別れたが、それもお前の為を思ってだったんだ。戦闘であまりついていけてないお前を、このままだと死なせたくない。そう思ったんだ」
「ほん……とうですか?」
「ああ、勿論だ」
そうなのか、そうだ、そうに違いない。やっぱり勇者は勇者、人々の希望の星になるような存在なのだ。だから、私の思い過ごしで……。
「嘘だな」
フリッツさんがバッサリと切り捨てる。
そして時は戻りクロエと勇者パーティーが再会する。
「よう、クロエ、会いたかったぜぇ」
「……」
私の目の前には勇者が、勇者ランドがいる。声が出なかった。今までの事が頭の中で走馬灯のように流れ、便利に使われているだけだった事が頭の中で通り過ぎていく。
「どうしたんだ? 元気だったか?」
「……」
ランドがランドじゃないみたいな事を言ってくる。今まで元気だったかなんて一度も言われたことはなかったし、笑顔なんて最初の方に見せてきたくらいだった。
私が黙っていると、彼は他の人達に向かって言う。
「お前達、少しどこかに行ってくれないか?」
「知り合いなんだな?」
私はラケルスさんの言葉に小さく頷く。彼らは知り合い。それも、昔は一緒のパーティーにいて、世界を救う為の旅をしていた。だから、口が裂けても違うとは言えなかった。
「そうか……それじゃあ俺達は少し離れているぞ。おい! お前達も少し離れろ! パーティー同士で話すこともあるだろう! 邪魔をするんじゃない!」
「うっす!」
ラケルスさん達が言うと、私たちの周りを囲んでいた他の冒険者が離れていく。これでランド達と私だけになったかと思ったら、そうではなかった。
「お前達にも用はねえ。サッサといけ」
「そうはいかない。クロエとは一緒に旅をすると決めているんだ。共に居させてもらうぞ」
「話すなら続けろ」
「フリッツさん……キリルさん……」
2人は私の後ろで微動だにする様子がない。私は、少しだけランドに向き合う気持ちになれた。ランドの方を向いて今日初めて彼に向って声を上げる。
「それで、お話とは何ですか」
「お話とはまた少し遠いじゃないか。何、お前が困ってると思って迎えに来てやったんだ」
「迎えに……来て……やっ……た……???」
彼は何を言っているのだろう? 迎えに来た? 誰を? もしかして私に? それを何で私に向かって言うのか、心の底から理解できない。
「ああ、お前が居なくなってから、お前がいた方がいいことが分かったんだ。だから俺達とまた来い」
「それは……」
「それに、やらなければいけないことがあるのは知っているだろう? だからまた行くぞ」
「………………」
私は何も言えなくなってしまう。私は、私は、行かなければならないのだろうか。私が聖女候補として院で色々生活出来ていたのも、先生や他の子達と楽しくやっていたのも、全ては聖女として世界を救うため。その為に私達は存在している。
ランドにはいらないと言われてしまったし、あんなことを言われたのだからもう会う必要はない。そう思っていた。でも、でも、聖女として、勇者を手伝い支えるのが聖女の役目。世界を守る為に、私たちは本来手を取り合っていかなければならない。
そうしなければいけないのなら、私は私は……。
足が前に出ない。私は聖女、勇者と共に世界を守るための旅に出なければならない。そんなことは院を出る時に、勇者と出会った時に分かっていたこと。私の命は世界の為に使わなければならない。
頭に色々な人が浮かんでは消えていく、カルラさん、ギルさん、ドン・キホーテさん、食材屋のおばあさん、レント君、バルトさん、先生、チンピラ三人組、山賊みたいな冒険者の人、勇者像のおばあさん、フェリさん、孤児院の冒険者の人、隊長さん、蒼穹の息吹の皆、黒橡の車輪の皆、キリルさん、そして、フリッツさん。皆皆いい人たちだ。その人たちと少しでも一緒にいることが出来て私は幸せだった。彼らの幸せを守るために私がいる。それなら、私がすることは……。
一度大きく呼吸をする。そして、覚悟を決める。
「ランド、分かりました」
「クロエ!?」
「……」
私がランドに向かってそう言うと彼は頷いて手を差し出す。
「さっさと行くぞ。魔王は待ってくれねえんだからな」
「はい……」
私は一歩、一歩を踏み出す。その足はとてつもなく重く、一歩踏み出す度に、次の一歩は倍以上に重たくなっていく。どうして。彼らと一緒にいることなんて今まで長かったじゃないか。少しだけ離れていたのもちょっとした夢のようなもの。だから、元に戻るだけ。嫌なことなんてない。
フリッツさんとキリルさんには申し訳ないけど、許して欲しい。私は心の中で謝る。
そして、3歩目を踏み出そうとした時に急に手を引っ張られた。
「え?」
私が振り返ると、私の右手をフリッツさんが掴んでいた。
「どう……しま……した?」
「行くな」
「でも、私、黙っていましたけど、聖女で……それで、勇者と一緒にいないと……世界が……」
「そんなことはどうでもいい」
フリッツさんにそう言われて、私はカッとなった。
「何でですか! 世界がどうでもいいなんてそんな訳ないでしょう! 私が、私が勇者と一緒に旅をして、魔王を討たなければいけないんです! じゃないと世界が大変なことになるから! だから、だから……」
「なら、何で泣いてるんだ!」
「え……」
私は顔に手を当てると、当てた手が濡れている。気が付かない間に泣いていた。
「え……。何で……」
「行きたくないからに決まってるからだ」
「でも、私は聖女で……」
「そんなこと知ったことか。第一、あいつ等なんだろう。お前に魔力片を持たせて危険な森に追い出したのは」
「……」
そうだ、勇者ランド達に、私は殺されかけた。それは間違っていない。そう思う。
ランドが説得するように言ってくる。
「それは誤解だ。あの時、クロエと別れる時に渡したのは少し前に拾ったただの石だ。少し黒かったが、その黒さもまたいいと思ってクロエに渡したんだ」
「そう……なんですか?」
私は、縋るような気持ちでランドを見る。
彼は私を慰めるように見つめ返してきた。
「そうさ、あの時は不幸な考え方の違いで別れたが、それもお前の為を思ってだったんだ。戦闘であまりついていけてないお前を、このままだと死なせたくない。そう思ったんだ」
「ほん……とうですか?」
「ああ、勿論だ」
そうなのか、そうだ、そうに違いない。やっぱり勇者は勇者、人々の希望の星になるような存在なのだ。だから、私の思い過ごしで……。
「嘘だな」
フリッツさんがバッサリと切り捨てる。
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