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第2章 聖女は決別する
144話 俺だけが悪者
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話をしていると、黒橡(くろつるばみ)の車輪の彼らが帰ってきた。
「無事だったか?」
「顔は見せてもいいのか?」
「無理だったら言ってくださいね。すぐに離れますから」
私はキリルさんを見ると、首を横に振っている。この感じは気にしていなさそうだ。
「大丈夫らしいですよ」
「そうか、助かった」
「ああ、そろそろ砦にも戻りたかったからな」
「そうですね。囮としてずっと待って頂いていますからね……」
「そうでした! 急いで戻らないと!」
ゴブリンエンペラーを倒すことで頭が一杯で全然考えていなかった!
しかし、フリッツさんはそう思ってはいなかったらしい。
「まぁ待て。俺達も回復していない。お前も魔力は万全とは言えないだろう?」
「それは……そうですが」
「今は体を休めろ。ここで出て行っても即座に戦闘は出来ない」
「そうですけど……」
でも、私たちをここに送るために戦ってくれているのに。
そこに、ダンテさんが言ってくれる。
「大丈夫だろう。ゴブリン共の頭は潰したのだ。そんなすぐに統率が取れるような者達ではあるまい? なぁ、ラケルス」
「そうだな。俺達はあのスープを食ったら十分回復した。それに、どうせ戻るに1日かかるんだ。それくらいなら大丈夫だろう」
「ですね。僕の魔力も多少は回復したので、いざという時の隠蔽は任せてください」
「皆さん……」
彼らは私の味方をしてくれた。
「そうやってクロエに無茶ばかりさせるんじゃない……」
「フリッツさん。心配してくださってありがとうございます。でも、私は助けたいんです」
「キリルお前からは何か無いのか?」
フリッツさんは少し諦めたような顔でキリルさんを見る。
キリルさんは。一言。
「無い」
そう言って下を向いた。
フリッツさんはその言葉を聞いて頭を乱暴にかく。
「はぁ、まるで俺が悪役じゃないか。お前達もかなりきついんだろう? それでもいいんだな?」
「え?」
「問題ない。我らは頑強。それが売りだ」
「だな」
「ですね」
「全く。無茶はしない。これだけは守ってくれ。いいな?」
「「「ああ」」」
「はい」
「わかった」
「よし、まずは行く前にこれを壊す」
「それは?」
「魔力片だ。かなりの数が散らばっていた」
フリッツさんの言葉に、ラケルスさんも険しい声がする。
「……話が変わった。この辺りに残っているそれを壊すのが先ではないか?」
「任せておけ。アイスゴーレム」
キリルさんがそう言うと、私たちの周囲に直立不動で立っていたアイスゴーレムが動き出す。そして、時折足や手を地面に叩きつけていた。
「アイツらに任せておけばいい」
「おお、流石だな」
「……」
そしてフリッツさんは手に持っていた魔力片を全て砕いていた。丸いのとひし形のは1つずつだけ綺麗に真っ二つにして形を保たせていた。
それを見ていたラケルスさんが皆に呼びかける。
「それじゃあ一度戻るぞ」
こうして、私たちは急いで戻ることになった。
それからはゴブリンとほとんど出会うこともなく、出会ったとしてもフリッツさんが瞬殺してくれたので問題なく進めた。
そして、次の日、私は衝撃的な出会いをすることになる。
「無事だったか?」
「顔は見せてもいいのか?」
「無理だったら言ってくださいね。すぐに離れますから」
私はキリルさんを見ると、首を横に振っている。この感じは気にしていなさそうだ。
「大丈夫らしいですよ」
「そうか、助かった」
「ああ、そろそろ砦にも戻りたかったからな」
「そうですね。囮としてずっと待って頂いていますからね……」
「そうでした! 急いで戻らないと!」
ゴブリンエンペラーを倒すことで頭が一杯で全然考えていなかった!
しかし、フリッツさんはそう思ってはいなかったらしい。
「まぁ待て。俺達も回復していない。お前も魔力は万全とは言えないだろう?」
「それは……そうですが」
「今は体を休めろ。ここで出て行っても即座に戦闘は出来ない」
「そうですけど……」
でも、私たちをここに送るために戦ってくれているのに。
そこに、ダンテさんが言ってくれる。
「大丈夫だろう。ゴブリン共の頭は潰したのだ。そんなすぐに統率が取れるような者達ではあるまい? なぁ、ラケルス」
「そうだな。俺達はあのスープを食ったら十分回復した。それに、どうせ戻るに1日かかるんだ。それくらいなら大丈夫だろう」
「ですね。僕の魔力も多少は回復したので、いざという時の隠蔽は任せてください」
「皆さん……」
彼らは私の味方をしてくれた。
「そうやってクロエに無茶ばかりさせるんじゃない……」
「フリッツさん。心配してくださってありがとうございます。でも、私は助けたいんです」
「キリルお前からは何か無いのか?」
フリッツさんは少し諦めたような顔でキリルさんを見る。
キリルさんは。一言。
「無い」
そう言って下を向いた。
フリッツさんはその言葉を聞いて頭を乱暴にかく。
「はぁ、まるで俺が悪役じゃないか。お前達もかなりきついんだろう? それでもいいんだな?」
「え?」
「問題ない。我らは頑強。それが売りだ」
「だな」
「ですね」
「全く。無茶はしない。これだけは守ってくれ。いいな?」
「「「ああ」」」
「はい」
「わかった」
「よし、まずは行く前にこれを壊す」
「それは?」
「魔力片だ。かなりの数が散らばっていた」
フリッツさんの言葉に、ラケルスさんも険しい声がする。
「……話が変わった。この辺りに残っているそれを壊すのが先ではないか?」
「任せておけ。アイスゴーレム」
キリルさんがそう言うと、私たちの周囲に直立不動で立っていたアイスゴーレムが動き出す。そして、時折足や手を地面に叩きつけていた。
「アイツらに任せておけばいい」
「おお、流石だな」
「……」
そしてフリッツさんは手に持っていた魔力片を全て砕いていた。丸いのとひし形のは1つずつだけ綺麗に真っ二つにして形を保たせていた。
それを見ていたラケルスさんが皆に呼びかける。
「それじゃあ一度戻るぞ」
こうして、私たちは急いで戻ることになった。
それからはゴブリンとほとんど出会うこともなく、出会ったとしてもフリッツさんが瞬殺してくれたので問題なく進めた。
そして、次の日、私は衝撃的な出会いをすることになる。
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