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第2章 聖女は決別する
131話 装甲魔法使い
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それから夕食になり、私たち3人と「黒橡(くろつるばみ)の車輪」の3人と一緒に食事をすることになった。
「初めまして、僕が残りのメンバーのメルクです」
「よろしく頼む」
「よ、よろしくお願いします」
「……」
「それではこれからよろしくお願いしますね」
そう言ってメルクさんは席に着く。
夕食の時にラケルスさんの仲間と挨拶をさせてもらうことになって今に至る。そして、私たち3人の正面には黒い大きな鎧をまとった3人が横並びに並んでいた。その圧倒的な迫力に気圧されそうになる。
「3人ともその鎧を着ているのか?」
私が心の中で疑問に思っていたことをフリッツさんがハッキリと言ってくれた。
「そうですよ。これが私たちのトレードマークの様なものですからね」
メルクさんはそう優しく話してくれるが、見た目からくる威圧感は半端ないものがある。ちょっと近寄り難いというか何と言うか……。
「ああ、すいません。ちょっと怖いですよね。頭くらいは取りますね」
そう言ってメルクさんは兜を取ると、そこには優し気な目をした青年がいた。
「ほら、2人も取った方がいいですよ」
「我は取らぬ。取るのは死ぬ時のみ」
「俺も鎧は基本的に脱がない主義でな」
「そんなんだからいつも怖がられるんですよ……? 後洗いなさい」
「2着持っているから問題ない」
「そうだ。それくらいはやってる」
「そういった事は出来るのに、どうして見た目のことは気にしないんですかね……」
「それで、明日の具体的な話を聞いてもいいか?」
「ああ、ごめんね。明日のことについてだけど、僕の気配を薄くする魔法を使って行こうと考えている」
「「え?」」
「……」
「どうかしたかい?」
魔法? 魔法って何だっけ? 鎧を着た人が使うものだっけ?
「どうして鎧を着ているんだ? 魔法使いならローブとか動きやすい格好をすると思うんだが」
「それに後衛がいないって……」
「ああ、それは僕が装甲魔法使いだからね」
「「装甲魔法使い?」」
初めて聞いた職業だ。
「あんまり一般的じゃないからね。というか僕以外ほとんどいないんじゃないかな」
「それで、どういったものなんだ?」
「うんとね。このパーティーって、見ての通り鎧で固めていて動きが遅いでしょ? だから、普通のローブ姿だとカバーが間に合わないことが多々あってね。それでこうやって最初から守っているんだよ」
どういうことだろうか。
「そういうことだったのか」
フリッツさんは分かったらしい。流石だ。
「うん、魔法使いの僕にも最初は大変だったけど、慣れれば簡単さ。さ、クロエさんも一緒にどうだい?」
「遠慮させていただきます」
私の人生の中で最速のお断りだったと思う。
「そうですか。それでは普通にお話と行きましょうか」
「そうしてくれ」
「それで、魔法については僕が話すね。僕は気配を消す魔法が使えるんだ。カモフラージュ」
そう言うと目の前にいる彼の存在感がドンドン薄くなって行くのが分かる。そして、目の前にいるはずなのに、いるのかいないのか分からない。そんな気持ちにさせられる。
そう思っていたら、目の前に彼が再び現れる。
「っと、注目されてる時にやっても効果は薄いけど、普通に歩いているゴブリンとか位なら真後ろから剣を振り下して殺すまで気付かれないからね。魔物相手には十分に使えるよ」
「目の前にいたのにいない様に感じてました……」
「はは、ありがとう」
「それでゴブリンエンペラーの所まで行くんだな?」
「そう。といっても、ずっと使っていられるわけじゃないから。魔物がいたらだけど……その点はそっちの魔法使い君がやってくれるよね?」
「探知は出来る」
メルクさんはキリルさんを見て、キリルさんは短く返す。
「それに期待してるよ。流石に6人も同時にはかなり厳しいからね。許して」
「俺にはかけなくていい」
「どうしてだい?」
「自分の分は自分で何とかする」
「驚いた。君も使えるのか」
「……自分の分だけ」
「それでもすごいよ。5人分でいいなら多少は楽になるからね。それで、どうやって行くかはラケルス。お願い」
「うい」
そうして後を引き継いだのはラケルスさんだ。こういうまとめ役的なのも任されるらしい。
「さて詳細だが……ハッキリ言ってねえ。そろそろ帰ってくるはずだが……ま、いないもんは仕方ない。今、ゴブリンエンペラーの居場所を突き止めるために狩人が何人かで索敵に行っている。その情報を元に行く予定だ」
「戦闘はゴブリンエンペラーと戦う時だけなのか?」
「その予定だ。だが、その予定が激戦になると考えている。基本は俺達が前線で、お前達には俺達の背後を守って貰ったり、いざという時の遊撃として戦って欲しいんだ」
「なるほど、連携の確認はしなくていいのか?」
「あー、俺達は自慢じゃないが、あまり連携とかっていう戦い方じゃないんだ」
「?」
「まぁ、俺達の後ろをついてきてくれればいい。口で説明しても分からないだろうからな。変に説明して混乱されるより、実物を明日見せる。それでいいか?」
「あ、ああ。よくわからんがその方がいいのなら分かった」
そんな話をしていると、外がかなり騒がしくなった。
「何事だ?」
「偵察が帰ってきたぞ!」
「行くぞ」
私たちは席を立ち上がり、食堂の外へ出る。
「初めまして、僕が残りのメンバーのメルクです」
「よろしく頼む」
「よ、よろしくお願いします」
「……」
「それではこれからよろしくお願いしますね」
そう言ってメルクさんは席に着く。
夕食の時にラケルスさんの仲間と挨拶をさせてもらうことになって今に至る。そして、私たち3人の正面には黒い大きな鎧をまとった3人が横並びに並んでいた。その圧倒的な迫力に気圧されそうになる。
「3人ともその鎧を着ているのか?」
私が心の中で疑問に思っていたことをフリッツさんがハッキリと言ってくれた。
「そうですよ。これが私たちのトレードマークの様なものですからね」
メルクさんはそう優しく話してくれるが、見た目からくる威圧感は半端ないものがある。ちょっと近寄り難いというか何と言うか……。
「ああ、すいません。ちょっと怖いですよね。頭くらいは取りますね」
そう言ってメルクさんは兜を取ると、そこには優し気な目をした青年がいた。
「ほら、2人も取った方がいいですよ」
「我は取らぬ。取るのは死ぬ時のみ」
「俺も鎧は基本的に脱がない主義でな」
「そんなんだからいつも怖がられるんですよ……? 後洗いなさい」
「2着持っているから問題ない」
「そうだ。それくらいはやってる」
「そういった事は出来るのに、どうして見た目のことは気にしないんですかね……」
「それで、明日の具体的な話を聞いてもいいか?」
「ああ、ごめんね。明日のことについてだけど、僕の気配を薄くする魔法を使って行こうと考えている」
「「え?」」
「……」
「どうかしたかい?」
魔法? 魔法って何だっけ? 鎧を着た人が使うものだっけ?
「どうして鎧を着ているんだ? 魔法使いならローブとか動きやすい格好をすると思うんだが」
「それに後衛がいないって……」
「ああ、それは僕が装甲魔法使いだからね」
「「装甲魔法使い?」」
初めて聞いた職業だ。
「あんまり一般的じゃないからね。というか僕以外ほとんどいないんじゃないかな」
「それで、どういったものなんだ?」
「うんとね。このパーティーって、見ての通り鎧で固めていて動きが遅いでしょ? だから、普通のローブ姿だとカバーが間に合わないことが多々あってね。それでこうやって最初から守っているんだよ」
どういうことだろうか。
「そういうことだったのか」
フリッツさんは分かったらしい。流石だ。
「うん、魔法使いの僕にも最初は大変だったけど、慣れれば簡単さ。さ、クロエさんも一緒にどうだい?」
「遠慮させていただきます」
私の人生の中で最速のお断りだったと思う。
「そうですか。それでは普通にお話と行きましょうか」
「そうしてくれ」
「それで、魔法については僕が話すね。僕は気配を消す魔法が使えるんだ。カモフラージュ」
そう言うと目の前にいる彼の存在感がドンドン薄くなって行くのが分かる。そして、目の前にいるはずなのに、いるのかいないのか分からない。そんな気持ちにさせられる。
そう思っていたら、目の前に彼が再び現れる。
「っと、注目されてる時にやっても効果は薄いけど、普通に歩いているゴブリンとか位なら真後ろから剣を振り下して殺すまで気付かれないからね。魔物相手には十分に使えるよ」
「目の前にいたのにいない様に感じてました……」
「はは、ありがとう」
「それでゴブリンエンペラーの所まで行くんだな?」
「そう。といっても、ずっと使っていられるわけじゃないから。魔物がいたらだけど……その点はそっちの魔法使い君がやってくれるよね?」
「探知は出来る」
メルクさんはキリルさんを見て、キリルさんは短く返す。
「それに期待してるよ。流石に6人も同時にはかなり厳しいからね。許して」
「俺にはかけなくていい」
「どうしてだい?」
「自分の分は自分で何とかする」
「驚いた。君も使えるのか」
「……自分の分だけ」
「それでもすごいよ。5人分でいいなら多少は楽になるからね。それで、どうやって行くかはラケルス。お願い」
「うい」
そうして後を引き継いだのはラケルスさんだ。こういうまとめ役的なのも任されるらしい。
「さて詳細だが……ハッキリ言ってねえ。そろそろ帰ってくるはずだが……ま、いないもんは仕方ない。今、ゴブリンエンペラーの居場所を突き止めるために狩人が何人かで索敵に行っている。その情報を元に行く予定だ」
「戦闘はゴブリンエンペラーと戦う時だけなのか?」
「その予定だ。だが、その予定が激戦になると考えている。基本は俺達が前線で、お前達には俺達の背後を守って貰ったり、いざという時の遊撃として戦って欲しいんだ」
「なるほど、連携の確認はしなくていいのか?」
「あー、俺達は自慢じゃないが、あまり連携とかっていう戦い方じゃないんだ」
「?」
「まぁ、俺達の後ろをついてきてくれればいい。口で説明しても分からないだろうからな。変に説明して混乱されるより、実物を明日見せる。それでいいか?」
「あ、ああ。よくわからんがその方がいいのなら分かった」
そんな話をしていると、外がかなり騒がしくなった。
「何事だ?」
「偵察が帰ってきたぞ!」
「行くぞ」
私たちは席を立ち上がり、食堂の外へ出る。
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