127 / 203
第2章 聖女は決別する
127話 ダンテとラケルス
しおりを挟む
次の日の朝。鳥のさえずりで目が覚める。
「ううん」
コンコン。
「ん? ちょっと待ってください」
私は眠たい目を擦りながら起き上がる。小鳥に起こされても寝ていればよかったが、人が来るのであれば起きなければ。
服とか身だしなみを最低限見て問題ないことを確かめる。
「どうぞ」
フリッツさんだろうか。それともキリルさんか。どちらだろうか。そう思って扉を見て待っていると、扉が開く。
そこにいたのは真っ黒で大きな甲冑を着こんだ人だった。全身を黒い鎧で覆っていて、顔も見ることはできない。身長は高く、装備の質は凄くいいように感じる。
「え?」
ガッ!
「え?」
「ん?」
その大きな甲冑が扉に引っかかり、中に入れないでいる。それなのにその人は強引に突破しようとしているのか、じりじりと進み何とか入ろうとしている。その影響で扉からはミシミシといった音が聞こえていた。横を向けば入れると思うのだけれど、その人は正面を向いたまま入るのをやめようとしない。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ん? どうした」
聞こえた声は男性の物だったが、そんなことより止めなければ。
「扉が! 扉が壊れますって!」
「何、この扉は頑丈だ。この程度ではびくともせん」
その鎧の彼が言った時に、バギン! っと音がして扉がが壊れた。
その代わりと言っていいのかは分からないが、彼は部屋の中に入ることが出来る。
「あ」
「む」
私も彼もその壊れた部分をじっと見つめていた。
「この軟弱な扉め」
「だからさっき壊れるって言ったじゃないですか!」
「我はこの扉を信じたのだ。この扉の頑強さを」
「えぇ。そんな事を言っても……」
その彼は勝手に失望しているが何と言うか……。
「おい! 何やってるんだ!」
「む? その声はラケルスか?」
「ダンテ! お前また扉を壊したのか!」
そう言って部屋に入ってきたのは今部屋の中にいる人と同じような、しかし細部が違っている黒い鎧を来た男の人だった。彼もさっきの男の人と同じように全身顔も鎧で覆っていて、身長もかなり高い。ただ、さっきの人とは違って体を横にして部屋に入ってくることはしていた。といってももう壊れているから遅いような気がしないでもないけど……。
「壊したのではない。勝手に壊れたのだ」
「勝手に壊れる訳ないだろう! 修理を頼まないと……人手は無限にある訳じゃないのに……」
「しかし、彼女に会うためには仕方なかったのだ」
「彼女……? ああ、っておい。何勝手に女性の部屋に入った挙句扉まで壊しているんだ」
そう言ってその男性は思い切り鎧で鎧を叩く。ガイン! っと音はするけど、そこまで痛そうには見えない。
「何をする」
「はぁ、その頑丈さは本当に……。と、失礼しました。私の名前はラケルスと言います。こちらの男、ダンテと同様に冒険者をしています。本当はもう一人いるんですが、そいつは今は少し寝ていまして」
「は、はぁ」
そう言ってくる人はラケルスさんと言うらしい。かなり紳士的な感じを漂わせている。ダンテさんの野性的な感じとは大分違う。
「あ、私はクロエと言います。一応神官をしています」
「ああ知っている」
「あれ? どこかでお会いしたことありましたっけ?」
絶対にないと思うが一応聞いてみる。
「こら。さっきから失礼だろうが。俺が話す」
「分かった」
そう言ってラケルスさんが前に出てくる。
「昨日の貴方の防御魔法を拝見させて頂きました。率直に言います。その実力を見込んで我々の仲間になっていただきたい」
「ええ!? 唐突過ぎませんか!?」
「いえ、出会いとは常に唐突な物。これを利用しない手はありません。我々であれば貴方と良い関係を結ぶことも出来ると考えています。その証拠にダンテがこんなにも話していることなんてほとんどないのです。(まぁ、色々行動でやらかしますが……)。っと、いかがでしょうか?」
「その、ごめんなさい。一緒に旅をしている仲間がいますので……」
「そこを何とか、我々男しかいなくて花が」
「お前が欲しい」
「ふぇ?」
「一緒にダラスを守ろう」
ラケルスさんの説得を遮ってダンテさんがずいっと出て来る。どうなっているんだろうか。というか寝起きでいきなり過ぎて頭が追いつかない。
ダンテさんは私の手を取って鎧の隙間から見つめてくる。その目は澄んだ海を思わせる綺麗な水色だった。そして、彼の手は凄く大きく、暖かかった。
「誰だお前達は!」
「ん?」
「あ」
部屋に入って来たのはフリッツさんだった。その顔はかなり怒っている。
「我はダンテ、この少女を貰い受ける」
「はああああああ!?」
「えええええええ!?」
「何やってんだよ……」
フリッツさんは怒り、私は驚き、ラケルスさんは頭を抱えていた。
頭を抱えたいのは私なのでダンテさんを止めてはくれないだろうか。
「あの、取りあえず手を離して頂けないでしょうか?」
「分かった」
そう言うとダンテさんは手を離してくれる。良かった。言葉は通じるみたい。
「クロエ、お前まさか……?」
「待ってください。私はこれでも寝起きなんです。少し落ち着かせてください」
「寝起き……? あの後そいつらと……?」
フリッツさんの顔が絶望に染まったような顔になる。
「へ? あの、もう、ああもう! 落ち着いてくださいって! っていうか私も混乱してるんですから!」
「ああ、そうだよな。悪かった。そうだよな。そんないきなりな訳ないよな。祝い金はどれくらい包めばいいんだったか」
「分かってないじゃないですか!?」
「あー、すまん。少しいいか?」
そう言ってラケルスさんが声を上げる。
「何ですか?」
私の目はこれ以上面倒を起こすんじゃないのかという疑いの目を彼に向ける。もう、寝起きで頭が働かないのにどうなっているのか。
「飯でも食いにいかないか?」
「え? そういう?」
「飯か、確かに腹が減った」
「飯……。ケーキか?」
こうして4人でご飯を食べに行くことになった。
後、私は防御魔法を自分にかけて、フリッツさんを叩く。すると、彼は元に戻ったので良かった。
「ううん」
コンコン。
「ん? ちょっと待ってください」
私は眠たい目を擦りながら起き上がる。小鳥に起こされても寝ていればよかったが、人が来るのであれば起きなければ。
服とか身だしなみを最低限見て問題ないことを確かめる。
「どうぞ」
フリッツさんだろうか。それともキリルさんか。どちらだろうか。そう思って扉を見て待っていると、扉が開く。
そこにいたのは真っ黒で大きな甲冑を着こんだ人だった。全身を黒い鎧で覆っていて、顔も見ることはできない。身長は高く、装備の質は凄くいいように感じる。
「え?」
ガッ!
「え?」
「ん?」
その大きな甲冑が扉に引っかかり、中に入れないでいる。それなのにその人は強引に突破しようとしているのか、じりじりと進み何とか入ろうとしている。その影響で扉からはミシミシといった音が聞こえていた。横を向けば入れると思うのだけれど、その人は正面を向いたまま入るのをやめようとしない。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ん? どうした」
聞こえた声は男性の物だったが、そんなことより止めなければ。
「扉が! 扉が壊れますって!」
「何、この扉は頑丈だ。この程度ではびくともせん」
その鎧の彼が言った時に、バギン! っと音がして扉がが壊れた。
その代わりと言っていいのかは分からないが、彼は部屋の中に入ることが出来る。
「あ」
「む」
私も彼もその壊れた部分をじっと見つめていた。
「この軟弱な扉め」
「だからさっき壊れるって言ったじゃないですか!」
「我はこの扉を信じたのだ。この扉の頑強さを」
「えぇ。そんな事を言っても……」
その彼は勝手に失望しているが何と言うか……。
「おい! 何やってるんだ!」
「む? その声はラケルスか?」
「ダンテ! お前また扉を壊したのか!」
そう言って部屋に入ってきたのは今部屋の中にいる人と同じような、しかし細部が違っている黒い鎧を来た男の人だった。彼もさっきの男の人と同じように全身顔も鎧で覆っていて、身長もかなり高い。ただ、さっきの人とは違って体を横にして部屋に入ってくることはしていた。といってももう壊れているから遅いような気がしないでもないけど……。
「壊したのではない。勝手に壊れたのだ」
「勝手に壊れる訳ないだろう! 修理を頼まないと……人手は無限にある訳じゃないのに……」
「しかし、彼女に会うためには仕方なかったのだ」
「彼女……? ああ、っておい。何勝手に女性の部屋に入った挙句扉まで壊しているんだ」
そう言ってその男性は思い切り鎧で鎧を叩く。ガイン! っと音はするけど、そこまで痛そうには見えない。
「何をする」
「はぁ、その頑丈さは本当に……。と、失礼しました。私の名前はラケルスと言います。こちらの男、ダンテと同様に冒険者をしています。本当はもう一人いるんですが、そいつは今は少し寝ていまして」
「は、はぁ」
そう言ってくる人はラケルスさんと言うらしい。かなり紳士的な感じを漂わせている。ダンテさんの野性的な感じとは大分違う。
「あ、私はクロエと言います。一応神官をしています」
「ああ知っている」
「あれ? どこかでお会いしたことありましたっけ?」
絶対にないと思うが一応聞いてみる。
「こら。さっきから失礼だろうが。俺が話す」
「分かった」
そう言ってラケルスさんが前に出てくる。
「昨日の貴方の防御魔法を拝見させて頂きました。率直に言います。その実力を見込んで我々の仲間になっていただきたい」
「ええ!? 唐突過ぎませんか!?」
「いえ、出会いとは常に唐突な物。これを利用しない手はありません。我々であれば貴方と良い関係を結ぶことも出来ると考えています。その証拠にダンテがこんなにも話していることなんてほとんどないのです。(まぁ、色々行動でやらかしますが……)。っと、いかがでしょうか?」
「その、ごめんなさい。一緒に旅をしている仲間がいますので……」
「そこを何とか、我々男しかいなくて花が」
「お前が欲しい」
「ふぇ?」
「一緒にダラスを守ろう」
ラケルスさんの説得を遮ってダンテさんがずいっと出て来る。どうなっているんだろうか。というか寝起きでいきなり過ぎて頭が追いつかない。
ダンテさんは私の手を取って鎧の隙間から見つめてくる。その目は澄んだ海を思わせる綺麗な水色だった。そして、彼の手は凄く大きく、暖かかった。
「誰だお前達は!」
「ん?」
「あ」
部屋に入って来たのはフリッツさんだった。その顔はかなり怒っている。
「我はダンテ、この少女を貰い受ける」
「はああああああ!?」
「えええええええ!?」
「何やってんだよ……」
フリッツさんは怒り、私は驚き、ラケルスさんは頭を抱えていた。
頭を抱えたいのは私なのでダンテさんを止めてはくれないだろうか。
「あの、取りあえず手を離して頂けないでしょうか?」
「分かった」
そう言うとダンテさんは手を離してくれる。良かった。言葉は通じるみたい。
「クロエ、お前まさか……?」
「待ってください。私はこれでも寝起きなんです。少し落ち着かせてください」
「寝起き……? あの後そいつらと……?」
フリッツさんの顔が絶望に染まったような顔になる。
「へ? あの、もう、ああもう! 落ち着いてくださいって! っていうか私も混乱してるんですから!」
「ああ、そうだよな。悪かった。そうだよな。そんないきなりな訳ないよな。祝い金はどれくらい包めばいいんだったか」
「分かってないじゃないですか!?」
「あー、すまん。少しいいか?」
そう言ってラケルスさんが声を上げる。
「何ですか?」
私の目はこれ以上面倒を起こすんじゃないのかという疑いの目を彼に向ける。もう、寝起きで頭が働かないのにどうなっているのか。
「飯でも食いにいかないか?」
「え? そういう?」
「飯か、確かに腹が減った」
「飯……。ケーキか?」
こうして4人でご飯を食べに行くことになった。
後、私は防御魔法を自分にかけて、フリッツさんを叩く。すると、彼は元に戻ったので良かった。
1
お気に入りに追加
1,622
あなたにおすすめの小説
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~
渡琉兎
ファンタジー
15歳から20年もの間、王都の門番として勤めていたレインズは、国民性もあって自らのスキル魔獣キラーが忌避され続けた結果――不当解雇されてしまう。
最初は途方にくれたものの、すぐに自分を必要としてくれる人を探すべく国を出る決意をする。
そんな折、移住者を探す一人の女性との出会いがレインズの運命を大きく変える事になったのだった。
相棒の獣魔、SSSランクのデンと共に、レインズは海を渡り第二の故郷を探す旅に出る!
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、で掲載しています。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる