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第2章 聖女は決別する

127話 ダンテとラケルス

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 次の日の朝。鳥のさえずりで目が覚める。

「ううん」

 コンコン。

「ん? ちょっと待ってください」

 私は眠たい目を擦りながら起き上がる。小鳥に起こされても寝ていればよかったが、人が来るのであれば起きなければ。

 服とか身だしなみを最低限見て問題ないことを確かめる。

「どうぞ」

 フリッツさんだろうか。それともキリルさんか。どちらだろうか。そう思って扉を見て待っていると、扉が開く。

 そこにいたのは真っ黒で大きな甲冑を着こんだ人だった。全身を黒い鎧で覆っていて、顔も見ることはできない。身長は高く、装備の質は凄くいいように感じる。

「え?」

 ガッ!

「え?」
「ん?」

 その大きな甲冑が扉に引っかかり、中に入れないでいる。それなのにその人は強引に突破しようとしているのか、じりじりと進み何とか入ろうとしている。その影響で扉からはミシミシといった音が聞こえていた。横を向けば入れると思うのだけれど、その人は正面を向いたまま入るのをやめようとしない。

「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ん? どうした」

 聞こえた声は男性の物だったが、そんなことより止めなければ。

「扉が! 扉が壊れますって!」
「何、この扉は頑丈だ。この程度ではびくともせん」

 その鎧の彼が言った時に、バギン! っと音がして扉がが壊れた。

 その代わりと言っていいのかは分からないが、彼は部屋の中に入ることが出来る。

「あ」
「む」

 私も彼もその壊れた部分をじっと見つめていた。

「この軟弱な扉め」
「だからさっき壊れるって言ったじゃないですか!」
「我はこの扉を信じたのだ。この扉の頑強さを」
「えぇ。そんな事を言っても……」

 その彼は勝手に失望しているが何と言うか……。

「おい! 何やってるんだ!」
「む? その声はラケルスか?」
「ダンテ! お前また扉を壊したのか!」

 そう言って部屋に入ってきたのは今部屋の中にいる人と同じような、しかし細部が違っている黒い鎧を来た男の人だった。彼もさっきの男の人と同じように全身顔も鎧で覆っていて、身長もかなり高い。ただ、さっきの人とは違って体を横にして部屋に入ってくることはしていた。といってももう壊れているから遅いような気がしないでもないけど……。

「壊したのではない。勝手に壊れたのだ」
「勝手に壊れる訳ないだろう! 修理を頼まないと……人手は無限にある訳じゃないのに……」
「しかし、彼女に会うためには仕方なかったのだ」
「彼女……? ああ、っておい。何勝手に女性の部屋に入った挙句扉まで壊しているんだ」

 そう言ってその男性は思い切り鎧で鎧を叩く。ガイン! っと音はするけど、そこまで痛そうには見えない。

「何をする」
「はぁ、その頑丈さは本当に……。と、失礼しました。私の名前はラケルスと言います。こちらの男、ダンテと同様に冒険者をしています。本当はもう一人いるんですが、そいつは今は少し寝ていまして」
「は、はぁ」

 そう言ってくる人はラケルスさんと言うらしい。かなり紳士的な感じを漂わせている。ダンテさんの野性的な感じとは大分違う。

「あ、私はクロエと言います。一応神官をしています」
「ああ知っている」
「あれ? どこかでお会いしたことありましたっけ?」

 絶対にないと思うが一応聞いてみる。

「こら。さっきから失礼だろうが。俺が話す」
「分かった」

 そう言ってラケルスさんが前に出てくる。

「昨日の貴方の防御魔法を拝見させて頂きました。率直に言います。その実力を見込んで我々の仲間になっていただきたい」
「ええ!? 唐突過ぎませんか!?」
「いえ、出会いとは常に唐突な物。これを利用しない手はありません。我々であれば貴方と良い関係を結ぶことも出来ると考えています。その証拠にダンテがこんなにも話していることなんてほとんどないのです。(まぁ、色々行動でやらかしますが……)。っと、いかがでしょうか?」
「その、ごめんなさい。一緒に旅をしている仲間がいますので……」
「そこを何とか、我々男しかいなくて花が」
「お前が欲しい」
「ふぇ?」
「一緒にダラスを守ろう」

 ラケルスさんの説得を遮ってダンテさんがずいっと出て来る。どうなっているんだろうか。というか寝起きでいきなり過ぎて頭が追いつかない。

 ダンテさんは私の手を取って鎧の隙間から見つめてくる。その目は澄んだ海を思わせる綺麗な水色だった。そして、彼の手は凄く大きく、暖かかった。

「誰だお前達は!」
「ん?」
「あ」

 部屋に入って来たのはフリッツさんだった。その顔はかなり怒っている。

「我はダンテ、この少女を貰い受ける」
「はああああああ!?」
「えええええええ!?」
「何やってんだよ……」

 フリッツさんは怒り、私は驚き、ラケルスさんは頭を抱えていた。

 頭を抱えたいのは私なのでダンテさんを止めてはくれないだろうか。

「あの、取りあえず手を離して頂けないでしょうか?」
「分かった」

 そう言うとダンテさんは手を離してくれる。良かった。言葉は通じるみたい。

「クロエ、お前まさか……?」
「待ってください。私はこれでも寝起きなんです。少し落ち着かせてください」
「寝起き……? あの後そいつらと……?」

 フリッツさんの顔が絶望に染まったような顔になる。

「へ? あの、もう、ああもう! 落ち着いてくださいって! っていうか私も混乱してるんですから!」
「ああ、そうだよな。悪かった。そうだよな。そんないきなりな訳ないよな。祝い金はどれくらい包めばいいんだったか」
「分かってないじゃないですか!?」
「あー、すまん。少しいいか?」

 そう言ってラケルスさんが声を上げる。

「何ですか?」

 私の目はこれ以上面倒を起こすんじゃないのかという疑いの目を彼に向ける。もう、寝起きで頭が働かないのにどうなっているのか。

「飯でも食いにいかないか?」
「え? そういう?」
「飯か、確かに腹が減った」
「飯……。ケーキか?」

 こうして4人でご飯を食べに行くことになった。

 後、私は防御魔法を自分にかけて、フリッツさんを叩く。すると、彼は元に戻ったので良かった。
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