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第2章 聖女は決別する
114話 冒険者登録とグリー魔道具店
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「取りあえず冒険者ギルドに行きますか?」
「ああ、それがいいと思う。取りあえずこいつを処理したいしな」
「そういえばキリルさんも冒険者登録はしているのですか?」
「していない」
「でしたらしておきますか? 今後も使うかもしれませんよ?」
「それが必要になるのか?」
「というよりもしておいた方が便利といった所だな。他の国とかを移動する際にも役に立つ」
「分かった。しておこう」
「それでは行きましょうか」
「ああ」
そうして、冒険者ギルドに到着する。
「俺はこの依頼を処理してくる。クロエはキリルの登録を任せてもいいか?」
「はい。少し前にやったばかりですからね。任せてください」
そう言うとフリッツさんは優しく笑ってくれる。
「任せた」
「はい」
そう言って彼はどこか他の受付に並んだ。
私はキリルさんを連れて初心者用の所に行く。
それからの登録は慣れたものだったので、割とすぐに終えることが出来た。
「これで終わりなのか?」
「はい。大した時間はかかりませんでしたね。しかもEランクからっていうのが凄いです」
「クロエは違うのか?」
「私はFランクからですよ?」
「そうか……」
「……」
フリッツさんだったらもう少し会話が進むと思うんだけど、キリルさんとはなかなか進まない。でも、一番初めの頃よりは答えが返って来るようになっただけマシなのだろうか。
私たちはフリッツさんの方に行くと、フリッツさんも丁度終わったようだった。
「お、そっちも終わったか」
「はい。丁度良かったです」
「よし、それじゃあ残りの時間だけど……。どうするか」
「そうですねぇ、行っておきたい所はもう行きましたし……。キリルさんが行きたい所はないんですか?」
そう言えば勝手な理由で連れまわしてしまったと思い聞いてみる。
「魔法関係の店に行きたい」
「そうですよねー。どこでも……ん?」
「魔法関係の店に行きたい」
「まほうかんけい? 今魔法って言いました?」
「言った」
「……」
私はキリルさんの言っている意味が分からなくて固まる。そこにフリッツさんが起こしてくれた。
「クロエ、おーい? 帰ってこい」
「はっ! いえ、何でもありません。フリッツさんは魔法関係のお店って知ってますか?」
何とかならないかと思ってフリッツさんに聞いてみる。
「ああ、知ってるぞ」
「流石フリッツさんです」
私は彼を尊敬する。
「お前が知ってる店と同じだけどな」
「ですよね……」
尊敬すると言ったのは嘘だったかもしれない。
「そこはいい店なのか?」
「そうですね……。レント君のおススメのお店でもありますし、説明も丁寧でいい所かもしれませんね……」
最大限いい所を選んで言う。悪い所ではないのは確実だ。ちょっとお話がというか説明が凝り性過ぎる感じがある位だ。それが致命的と思う人もいるかもしれないけど。
「そうか、ではそこに行きたい」
「魔道具屋さんですよ?」
「構わない」
「やってるか分かりませんよ?」
「構わない」
「結構気難しい店主の方ですよ?」
「構わない」
「分かりました……」
ここまでハッキリと行きたいと言っているのだ。それについて行くのがいいんだろうと思う。私はフリッツさんを見るが、彼も若干諦めの表情をしていた。
「こっちだ」
フリッツさんがそう言って案内をしてくれる。
そして、例の魔道具屋に到着する。その外観は相変わらずで、すぐにでも倒壊してしまいそうに見える。
しかし、キリルさんには違って見えるらしい。
「あれは隠蔽……いや、偽装しているだけか? なんの為に? 意味はなさそうだが……。かなり持つように設計されているし、これを施した者の腕前は一体……? それに至る所に仕掛けが……。どれが何のトリガーになるか分からん。不用意な事は出来んか……」
「あのキリルさん?」
今までと別人のような位にしゃべっていた気がする。今までの言葉を足したのと同じくらいなんじゃないだろうか。
「ああ、それでは行こうか」
「はい」
「行くか……」
私とフリッツさんの気は少しだけ重い。
店の中に入ると、その様子はいつもと変わっておらず、薄暗い。その中をキリルさんが一生懸命に見て回っていた。
そして、キリルさんはいつになく真剣な目つきで魔道具を隅々まで見ている。
私たちがその様子を見ていると、店の奥から店主が現れた。
「ほうほう、久しぶりじゃのう。また魔道具を見に来たのかのう?」
「今回は少し違いまして、お金はないんですが、彼が魔法関係の店に興味があるとのことです」
「ほう、興味があると、どれどれ誰……」
店主は嬉しそうにキリルさんを見て、そして動きが止まった。
「店主。これについて聞きたい」
「……む? それか? それはじゃな……」
と店主が止まったのが嘘かの様にキリルさんの側に行って解説を始める。私とフリッツさんはそれを後ろで黙って聞いていることしか出来なかった。
2人の話が終わったのは外が真っ暗になってからだった。
「いやー、話が分かるやつだのう。中々にいいやつだった」
「そちらこそ、これほどの技術力は見たことがない」
「伊達に長いこと生きておらんわい」
「「……」」
元気そうに話す2人を尻目に、私とフリッツさんはかなりげっそりとしていた。お昼ご飯も食べることなくぶっ続けで話を聞いていたのだから仕方ないだろう。それにどこかに行こうとしても鋭い視線がなぜか飛んできて逃げられなかった。
「待たせたな」
「いえ……それほどでも」
「ああ、飯に行こうか」
何とかそう返すだけで精一杯だった。
「おお、もうそんな時間か。すまんのう。少し話し込み過ぎた」
「気にしなくても大丈夫だ。ただ、今日はこれで失礼する」
「またどこかで来ますので……これで」
「ああ、いつでも来るといい。待っておるからの」
「はい」
「ああ」
「また来る」
そして私たちは店を出て、食事をしたら何もする元気も無くなり、泥のように眠りについてしまった。
「ああ、それがいいと思う。取りあえずこいつを処理したいしな」
「そういえばキリルさんも冒険者登録はしているのですか?」
「していない」
「でしたらしておきますか? 今後も使うかもしれませんよ?」
「それが必要になるのか?」
「というよりもしておいた方が便利といった所だな。他の国とかを移動する際にも役に立つ」
「分かった。しておこう」
「それでは行きましょうか」
「ああ」
そうして、冒険者ギルドに到着する。
「俺はこの依頼を処理してくる。クロエはキリルの登録を任せてもいいか?」
「はい。少し前にやったばかりですからね。任せてください」
そう言うとフリッツさんは優しく笑ってくれる。
「任せた」
「はい」
そう言って彼はどこか他の受付に並んだ。
私はキリルさんを連れて初心者用の所に行く。
それからの登録は慣れたものだったので、割とすぐに終えることが出来た。
「これで終わりなのか?」
「はい。大した時間はかかりませんでしたね。しかもEランクからっていうのが凄いです」
「クロエは違うのか?」
「私はFランクからですよ?」
「そうか……」
「……」
フリッツさんだったらもう少し会話が進むと思うんだけど、キリルさんとはなかなか進まない。でも、一番初めの頃よりは答えが返って来るようになっただけマシなのだろうか。
私たちはフリッツさんの方に行くと、フリッツさんも丁度終わったようだった。
「お、そっちも終わったか」
「はい。丁度良かったです」
「よし、それじゃあ残りの時間だけど……。どうするか」
「そうですねぇ、行っておきたい所はもう行きましたし……。キリルさんが行きたい所はないんですか?」
そう言えば勝手な理由で連れまわしてしまったと思い聞いてみる。
「魔法関係の店に行きたい」
「そうですよねー。どこでも……ん?」
「魔法関係の店に行きたい」
「まほうかんけい? 今魔法って言いました?」
「言った」
「……」
私はキリルさんの言っている意味が分からなくて固まる。そこにフリッツさんが起こしてくれた。
「クロエ、おーい? 帰ってこい」
「はっ! いえ、何でもありません。フリッツさんは魔法関係のお店って知ってますか?」
何とかならないかと思ってフリッツさんに聞いてみる。
「ああ、知ってるぞ」
「流石フリッツさんです」
私は彼を尊敬する。
「お前が知ってる店と同じだけどな」
「ですよね……」
尊敬すると言ったのは嘘だったかもしれない。
「そこはいい店なのか?」
「そうですね……。レント君のおススメのお店でもありますし、説明も丁寧でいい所かもしれませんね……」
最大限いい所を選んで言う。悪い所ではないのは確実だ。ちょっとお話がというか説明が凝り性過ぎる感じがある位だ。それが致命的と思う人もいるかもしれないけど。
「そうか、ではそこに行きたい」
「魔道具屋さんですよ?」
「構わない」
「やってるか分かりませんよ?」
「構わない」
「結構気難しい店主の方ですよ?」
「構わない」
「分かりました……」
ここまでハッキリと行きたいと言っているのだ。それについて行くのがいいんだろうと思う。私はフリッツさんを見るが、彼も若干諦めの表情をしていた。
「こっちだ」
フリッツさんがそう言って案内をしてくれる。
そして、例の魔道具屋に到着する。その外観は相変わらずで、すぐにでも倒壊してしまいそうに見える。
しかし、キリルさんには違って見えるらしい。
「あれは隠蔽……いや、偽装しているだけか? なんの為に? 意味はなさそうだが……。かなり持つように設計されているし、これを施した者の腕前は一体……? それに至る所に仕掛けが……。どれが何のトリガーになるか分からん。不用意な事は出来んか……」
「あのキリルさん?」
今までと別人のような位にしゃべっていた気がする。今までの言葉を足したのと同じくらいなんじゃないだろうか。
「ああ、それでは行こうか」
「はい」
「行くか……」
私とフリッツさんの気は少しだけ重い。
店の中に入ると、その様子はいつもと変わっておらず、薄暗い。その中をキリルさんが一生懸命に見て回っていた。
そして、キリルさんはいつになく真剣な目つきで魔道具を隅々まで見ている。
私たちがその様子を見ていると、店の奥から店主が現れた。
「ほうほう、久しぶりじゃのう。また魔道具を見に来たのかのう?」
「今回は少し違いまして、お金はないんですが、彼が魔法関係の店に興味があるとのことです」
「ほう、興味があると、どれどれ誰……」
店主は嬉しそうにキリルさんを見て、そして動きが止まった。
「店主。これについて聞きたい」
「……む? それか? それはじゃな……」
と店主が止まったのが嘘かの様にキリルさんの側に行って解説を始める。私とフリッツさんはそれを後ろで黙って聞いていることしか出来なかった。
2人の話が終わったのは外が真っ暗になってからだった。
「いやー、話が分かるやつだのう。中々にいいやつだった」
「そちらこそ、これほどの技術力は見たことがない」
「伊達に長いこと生きておらんわい」
「「……」」
元気そうに話す2人を尻目に、私とフリッツさんはかなりげっそりとしていた。お昼ご飯も食べることなくぶっ続けで話を聞いていたのだから仕方ないだろう。それにどこかに行こうとしても鋭い視線がなぜか飛んできて逃げられなかった。
「待たせたな」
「いえ……それほどでも」
「ああ、飯に行こうか」
何とかそう返すだけで精一杯だった。
「おお、もうそんな時間か。すまんのう。少し話し込み過ぎた」
「気にしなくても大丈夫だ。ただ、今日はこれで失礼する」
「またどこかで来ますので……これで」
「ああ、いつでも来るといい。待っておるからの」
「はい」
「ああ」
「また来る」
そして私たちは店を出て、食事をしたら何もする元気も無くなり、泥のように眠りについてしまった。
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