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第2章 聖女は決別する

103話 ついて行きたい?

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 ダラスまで後1日といった夜にとある変化が起きた。

「クロエちょっといいか?」
「はい?」

 それは深夜の見張り交代の時、フリッツさんと交代する時に言われた。

 おばあさんもキリルさんも寝ていて、起きているのは私とフリッツさんだけだ。

「さっきキリルに俺達の旅について行きたいと言われた」
「え? どうしてですか?」
「分からない。ただついて行きたいと」
「それは……」

 ちょっとどうなんだろうか。流石にいきなり出会った彼と一緒に旅をするのは違う気がする。

 それはフリッツさんも思ったらしい。私が少し困った顔をしているのを察してくれる。

「ああ、俺も最初断った。だが……」
「どうかしたんですか?」

 珍しく歯切れが悪い。

「髪の色がバレた」
「え? あの真紅の色がですか?」
「ああ、先ほど話している時にそう言われて、黙ってて欲しかったら連れて行ってくれと言っていた」
「それは……。おかしくないですか?」
「ああ、俺達と一緒に旅をしたいのにその俺達を脅すなんて有り得ない。というかハッキリ言って死にたいのかとすら思う」

 そういうフリッツさんの表情は何か悩んでいるようだった。

「ではどうして何でしょうか?」
「分からん。分からんが……。クロエの方からも話はしてみて欲しいと思っている」
「なるほど……。私の言葉に返してくれるか分かりませんけど、聞いてみますね」
「頼む」

 私はキリルさんに近寄って優しく起こそうと手を伸ばす。どういう理由でそうなっているのかは分からないが、それでもちゃんと聞いてみるべきだと思ったから。

「なんだ」

 と思ったらキリルさんは起きていたみたいで、体を触る前に目を開けていた。そして、起き上がってくる。

「お休みの所すいません。フリッツさんから聞きました。私たちについてきたがっているって。その理由を聞いてもいいですか?」
「……言えない」
「どうしてですか?」
「言えないからだ」
「そんな言い方をされてしまうと一緒に行くという気持ちにはなれないのですが……」
「頼む。迷惑をかけるような事はしない。だから……」

 キリルさんはそう言って頭を下げてくる。

 私は彼が縋りついて居る様にすら感じた。困って困って、どうしようも無くなってそれでも、どうにかしたくて頼んでいるように感じたのだ。

「少しだけ時間をください」
「ああ」

 私は彼から離れてフリッツさんの元へ行く。

「フリッツさん。少し様子を見てもいいでしょうか?」
「クロエならそう言うと思った。ダラスでの行動を見てだな。それにしてもすまん」
「いえ、そんなことはありません。何かある様な気がするので」

 彼の悲し気な不安げな目には救わなければいけない何かがあると思った。

 そして、その事をフリッツさんも同意してくれているようだった。

「取りあえずはダラスとかでも話を聞いたり、行動を見て……だな」
「はい」

 そうして、キリルさんにその事を伝えると、彼は少しだけ首を縦に振るのだった。

 そうして、少し問題はありつつもダラスに到着した。
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