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第2章 聖女は決別する
102話 魔法ってすごい
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2人でにぎやかにやっていると思っていたら、フリッツさんが森の方を向いて凝視している。何かあったのだろうか?
「フリッツさん?」
「魔物が来るな」
「魔物ですか?」
「ああ、ただ大した事はない。それに一匹だろう」
「では防御魔法を一応かけておきますね。プロテクト×4」
自分も含めてその場にいる全員にかける。フリッツさんがいるので大丈夫だとは思うけど、おばあさんを守る護衛依頼なんだし念のためというやつだ。
「……これは?」
「私の防御魔法ですよ」
「……」
キリルさんはそう言って彼の体にかかったプロテクトを見続けている。そして、両手を合わせたりしていた。
「どうかしました?」
「いや、素晴らしい魔法だ」
「ありがとうございます」
「そうだぞ、クロエの防御魔法は凄い」
フリッツさんがそう言って森の方を向く。
そうした途端に森から一匹の魔物が飛び出してきた。
「がるるるるるるるるる」
飛び出して来た魔物はシャドーウルフ。ケルベロスの群れにいた一体かもしれない。
「よっと」
フリッツさんは左腕を掲げ、シャドーウルフにわざと噛みつかせる。
「ちょっと!」
「ほっと」
そして、空いている右腕で剣を持ち、シャドーウルフの首を切り落とした。
「クロエの防御魔法はシャドーウルフ程度じゃ抜けないんだよ」
「なるほど……」
「フリッツさん! そういう危ない事はやめてください!」
「悪かったって、でも、信じてるからやれるんだぞ?」
「だとしても心配はさせないでください……」
「悪かったって」
そんなやり取りをしてダラスまで進む。その間にキリルさんについて分かったことはほとんどなく、フリッツさんにも身の上話は話してくれていないようだった。
そんなことがありつつ不安を抱えたまま夜を迎える。
「俺が野営の準備をする。クロエは食事の準備を、キリルは周囲の警戒をしていてくれ」
「分かりました」
「分かった」
フリッツさんが火を起こしたり、寝床の警戒をしたり、今夜ここで寝るための準備をする。そして私はご飯の準備だ。今日は一体何を作ろうか。
「これがそろそろ傷みそうだからねえ。使ってくれないかい?」
「いいんですか?」
おばあさんに差し出されたのは立派な野菜だった。
「ああ、もう数日で食えない感じになりそうだからねえ。今日中に食べてしまいたくてね」
「そう言うのも分かるんですね。すごいです」
「まぁねぇ。伊達に歳は食ってないよ」
「それでは使わせて頂きますね!」
「ああ、頼んだよ」
私は『どこでも万能調理キット』を取り出し、調理を開始する。
「いい匂いだな」
「本当ですか?」
すぐ近くにいたキリルさんが話しかけてくる。まさかこうやって話しかけて来るなんて思わなかった。
「ああ、食欲をそそる」
「気合入れて作りますね!」
「頼む」
そうして私は腕まくりをして、気合を入れる。
「今日は一段と美味いな」
フリッツさんが笑顔で私に向かって言ってくれる。
「ありがとうございます。おばあさんに貰った野菜がとっても良かったんだと思います」
「それだけじゃないだろうさね」
「ああ、クロエだからだ」
「美味い」
「ありがとうございます」
良かった。キリルさんも美味しいと言ってくれたのは本当に嬉しかった。こんな事を言われたら本当に料理店を開こうかという気になってしまうではないか。
そんな会話をしつつ、キリルさんもぽつりぽつりとしゃべってくれるようになっていた。そして、『どこでも万能調理キット』に魔石をはめて終わりにしようとした時に、キリルさんが話しかけてくる。
「洗わないのか?」
「え? 何がですか?」
「(すっ)」
キリルさんは指で『どこでも万能調理キット』を指していた。きっとそれを洗わないのかと言うことだろうか。
「これは魔石を入れてセットしておけば自動で洗ってくれる優れものなんですよ!」
「魔石を使うのか?」
「それは……そうですけど」
実を言うと今は意外と金欠でかなり厳しいと言えるかもしれない。だから、本当は手洗いの方がいいのだけど、この辺りに川や池は無いので仕方がなかった。
「出して見ろ」
「これをですか?」
「(こくん)」
キリルさんに言われたのでこれから洗う予定のキットを彼に渡す。
「ウォーターボール」
彼は魔法で水を作って宙に浮かべた。そして、その中へと『どこでも万能調理キット』を入れる。
「おお、凄い」
「これから」
彼はそう言うと、手でかき混ぜる仕草をする。
すると、ウォーターボールの中がぐるぐると回り始めて『どこでも万能調理キット』を洗い始めたではないか。
「凄い! 魔法を使うとこんなに簡単に洗えるんですね!」
「……」
キリルさんは何も言わないが、ちょっと誇らしげだ。
そうして、キリルさんの魔法が終わる。これで終わりなのか? と思っていたらまだまだあったようだ。
「ウインドブロー」
「きゃ」
少し強めの風が吹き、濡れた『どこでも万能調理キット』を風で乾かしている。数分もすると水分は全て吹き飛び、ピカピカの新品の様になっていた。
「ありがとうございます!」
「気にするな。これくらいはやる」
「はい! またお願いしますね!」
キリルさんはそう言って去っていく。まさかこんなにやってくれるなんて、凄い。
「フリッツさん?」
「魔物が来るな」
「魔物ですか?」
「ああ、ただ大した事はない。それに一匹だろう」
「では防御魔法を一応かけておきますね。プロテクト×4」
自分も含めてその場にいる全員にかける。フリッツさんがいるので大丈夫だとは思うけど、おばあさんを守る護衛依頼なんだし念のためというやつだ。
「……これは?」
「私の防御魔法ですよ」
「……」
キリルさんはそう言って彼の体にかかったプロテクトを見続けている。そして、両手を合わせたりしていた。
「どうかしました?」
「いや、素晴らしい魔法だ」
「ありがとうございます」
「そうだぞ、クロエの防御魔法は凄い」
フリッツさんがそう言って森の方を向く。
そうした途端に森から一匹の魔物が飛び出してきた。
「がるるるるるるるるる」
飛び出して来た魔物はシャドーウルフ。ケルベロスの群れにいた一体かもしれない。
「よっと」
フリッツさんは左腕を掲げ、シャドーウルフにわざと噛みつかせる。
「ちょっと!」
「ほっと」
そして、空いている右腕で剣を持ち、シャドーウルフの首を切り落とした。
「クロエの防御魔法はシャドーウルフ程度じゃ抜けないんだよ」
「なるほど……」
「フリッツさん! そういう危ない事はやめてください!」
「悪かったって、でも、信じてるからやれるんだぞ?」
「だとしても心配はさせないでください……」
「悪かったって」
そんなやり取りをしてダラスまで進む。その間にキリルさんについて分かったことはほとんどなく、フリッツさんにも身の上話は話してくれていないようだった。
そんなことがありつつ不安を抱えたまま夜を迎える。
「俺が野営の準備をする。クロエは食事の準備を、キリルは周囲の警戒をしていてくれ」
「分かりました」
「分かった」
フリッツさんが火を起こしたり、寝床の警戒をしたり、今夜ここで寝るための準備をする。そして私はご飯の準備だ。今日は一体何を作ろうか。
「これがそろそろ傷みそうだからねえ。使ってくれないかい?」
「いいんですか?」
おばあさんに差し出されたのは立派な野菜だった。
「ああ、もう数日で食えない感じになりそうだからねえ。今日中に食べてしまいたくてね」
「そう言うのも分かるんですね。すごいです」
「まぁねぇ。伊達に歳は食ってないよ」
「それでは使わせて頂きますね!」
「ああ、頼んだよ」
私は『どこでも万能調理キット』を取り出し、調理を開始する。
「いい匂いだな」
「本当ですか?」
すぐ近くにいたキリルさんが話しかけてくる。まさかこうやって話しかけて来るなんて思わなかった。
「ああ、食欲をそそる」
「気合入れて作りますね!」
「頼む」
そうして私は腕まくりをして、気合を入れる。
「今日は一段と美味いな」
フリッツさんが笑顔で私に向かって言ってくれる。
「ありがとうございます。おばあさんに貰った野菜がとっても良かったんだと思います」
「それだけじゃないだろうさね」
「ああ、クロエだからだ」
「美味い」
「ありがとうございます」
良かった。キリルさんも美味しいと言ってくれたのは本当に嬉しかった。こんな事を言われたら本当に料理店を開こうかという気になってしまうではないか。
そんな会話をしつつ、キリルさんもぽつりぽつりとしゃべってくれるようになっていた。そして、『どこでも万能調理キット』に魔石をはめて終わりにしようとした時に、キリルさんが話しかけてくる。
「洗わないのか?」
「え? 何がですか?」
「(すっ)」
キリルさんは指で『どこでも万能調理キット』を指していた。きっとそれを洗わないのかと言うことだろうか。
「これは魔石を入れてセットしておけば自動で洗ってくれる優れものなんですよ!」
「魔石を使うのか?」
「それは……そうですけど」
実を言うと今は意外と金欠でかなり厳しいと言えるかもしれない。だから、本当は手洗いの方がいいのだけど、この辺りに川や池は無いので仕方がなかった。
「出して見ろ」
「これをですか?」
「(こくん)」
キリルさんに言われたのでこれから洗う予定のキットを彼に渡す。
「ウォーターボール」
彼は魔法で水を作って宙に浮かべた。そして、その中へと『どこでも万能調理キット』を入れる。
「おお、凄い」
「これから」
彼はそう言うと、手でかき混ぜる仕草をする。
すると、ウォーターボールの中がぐるぐると回り始めて『どこでも万能調理キット』を洗い始めたではないか。
「凄い! 魔法を使うとこんなに簡単に洗えるんですね!」
「……」
キリルさんは何も言わないが、ちょっと誇らしげだ。
そうして、キリルさんの魔法が終わる。これで終わりなのか? と思っていたらまだまだあったようだ。
「ウインドブロー」
「きゃ」
少し強めの風が吹き、濡れた『どこでも万能調理キット』を風で乾かしている。数分もすると水分は全て吹き飛び、ピカピカの新品の様になっていた。
「ありがとうございます!」
「気にするな。これくらいはやる」
「はい! またお願いしますね!」
キリルさんはそう言って去っていく。まさかこんなにやってくれるなんて、凄い。
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