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第1章 聖女は出会う

97話 決着

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「なんだこれは!?」

 フリッツさんが叫んでいる。自身の体に起きた変化に警戒しているのかもしれない。

「フリッツさん! 強化です! そのまま戦ってください!」
「さっき唱えていたのはこれか!」
「はい! お願いします!」
「分かった!」

 フリッツさんは目の前のケルベロスを迂回するように回り込む。その速度は今までよりも圧倒的で、ケルベロスはフリッツさんが回る速度についていけてない。

「これほどの力は流石だ! クロエ! 俺は風だ!」
「戦いに集中してください!」
「悪い!」

 圧倒的な力に少し浮かれているようだ。この力はそれだけで強さを対象者に与える。身体能力を1、2段階は引き上げることが出来るくらいだろうか。だから彼のように興奮状態になるものがいない訳ではない。人によってはその力に溺れることもある。だから誰にでも使っていいという訳ではない。本当に認めた人でなければ。

 だけど、私は心配していなかった。フリッツさんならきっとそんなことにはならないだろうから。

「はあああああ!!!!」
「グアアアアアファアアアアア!!」

 フリッツさんが接近してケルベロスの首を一つ切り落とした。

 ケルベロスは叫んでブレスをフリッツさんに放っているが、その場にフリッツさんはおらずに何もない宙を焦がす。

「フリッツさん! 防御力は少し落ちています! 気を付けてください!」
「分かった!」

 これは私の防御魔法とは違って、聖女に代々受け継がれるもの。そこに私固有の力が追加されることはない。だから注意を促す。

 フリッツさんは私の話を聞いてもさっきまでと動きは変わらず、攻撃を続けている。ケルベロスも警戒したのかカウンターに転じるようにしているが、フリッツさんの動きにはついていけてない。

 フリッツさんはその力を持ってケルベロスを攻撃していき、首を全て切り落とした。

「グアアアファアアア!」

 ケルベロスは遂に力尽き、地面に横たわった。

そして、この場に立っている者は私たち以外居なくなる。

「終わった……のか?」
「はい、フリッツさんがやってくれたんですよ」
「クロエ! お前……もしかして」

 私は彼に近づいていき、力尽きて倒れた。

「クロエ!」

 フリッツさんが走ってきてくれるのが分かる。それでも、もうそれを見るだけの体力も魔力もない。この技は私の力を全て吸いつくす。勿論。死ぬわけではないけれど、この技を使った後は丸1日は動けなくなる。

 瞼が重い……。フリッツさん……。後は……よろしく……。

 そうして私の意識は落ちた。
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