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第1章 聖女は出会う
85話 お願いします
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カルラさんは立ち上がって私に近づいて来た。
「クロエさん」
「はい」
「あの子を守って上げて頂戴。いえ、お願いします」
「はい? え? どうしたんですか?」
カルラさんは立ち上がり私に縋りついてくる。
「貴方がどういった理由であの子といるのかは私は知らない。それでも、一緒にいてくれているということは悪くは思っていないはず。だから、あの子の事をお願い」
「私に出来ることだったら全力でやらせていただきます」
「そう……。あの子はああ見えて色々と抱え込んでしまうの。私が好きにしてもいいって言ってもここに残ろうとする。旅が好きで色んな場所に行くのが好きなのに、あの子はずっと私の側に居てくれる。とっても優しい子」
「はい、知っています」
カルラさんは純粋にフリッツさんを思っているようだった。その顔は私を見ているが、見ているのはフリッツさんな気がした。
「そう、もうそんなに仲良くなっていたのね。あの子それなりにいい顔をしているでしょう?」
「え? ま、まぁ。はい。そうだと思います」
「ふふ、あの子はあれで色々あってガードが固いから、あんまり人に心情を言わないし、心を許さない子なのよ。それどころか人によっては全く笑わなくなるし」
「そうなんですか?」
割と笑ってるイメージが強いから衝撃の事実だ。
「ええ、それはあの子が貴方に心を許しているからだと思うわ。ありがとう」
「私の方こそ彼に助けていただいたので」
「そうね。お互いのことを思う気持ちは大切よ。私が言いたかったのはそれだけ」
「ありがとうございます。フリッツさんの違った一面を知れてよかったです」
「ならあの子を守ってあげて、女の子に言うのも間違ってるかもしれないけど」
「私に出来る限りはさせてもらいます」
「気を付けてね。話は以上よ」
「分かりました。ケルベロスをちょっと倒しに行ってきますね」
「ええ」
私はそう言って扉を出て、外にいるフリッツさんに合流した。
「何の話をしてたんだ?」
「それは簡単ですよ?」
「?」
「ケルベロスをサッサと倒して、皆無事に帰って来ようってお話ですよ」
「なんだ、それだったら俺がいても良かったじゃないか」
「ダメですよ。これは女のお話なんです」
「はは、仕方ないな。それを言われたら引き下がるしかない」
やっぱりフリッツさんはよく笑う人だ。この笑顔も私は守りたい。そう思った。
「それではドン・キホーテさんのお見舞いに行きましょう」
「そうだな。ちょっと茶化しに行かないと」
「もう、喧嘩を売ってはダメですよ?」
「そんなことはしないよ」
私とフリッツさんはドン・キホーテさんの家へと向かう。
その光景を見つめる者がいた。
「あの子をお願いします。聖女様……」
その声は誰にも届くことはなかった。
「クロエさん」
「はい」
「あの子を守って上げて頂戴。いえ、お願いします」
「はい? え? どうしたんですか?」
カルラさんは立ち上がり私に縋りついてくる。
「貴方がどういった理由であの子といるのかは私は知らない。それでも、一緒にいてくれているということは悪くは思っていないはず。だから、あの子の事をお願い」
「私に出来ることだったら全力でやらせていただきます」
「そう……。あの子はああ見えて色々と抱え込んでしまうの。私が好きにしてもいいって言ってもここに残ろうとする。旅が好きで色んな場所に行くのが好きなのに、あの子はずっと私の側に居てくれる。とっても優しい子」
「はい、知っています」
カルラさんは純粋にフリッツさんを思っているようだった。その顔は私を見ているが、見ているのはフリッツさんな気がした。
「そう、もうそんなに仲良くなっていたのね。あの子それなりにいい顔をしているでしょう?」
「え? ま、まぁ。はい。そうだと思います」
「ふふ、あの子はあれで色々あってガードが固いから、あんまり人に心情を言わないし、心を許さない子なのよ。それどころか人によっては全く笑わなくなるし」
「そうなんですか?」
割と笑ってるイメージが強いから衝撃の事実だ。
「ええ、それはあの子が貴方に心を許しているからだと思うわ。ありがとう」
「私の方こそ彼に助けていただいたので」
「そうね。お互いのことを思う気持ちは大切よ。私が言いたかったのはそれだけ」
「ありがとうございます。フリッツさんの違った一面を知れてよかったです」
「ならあの子を守ってあげて、女の子に言うのも間違ってるかもしれないけど」
「私に出来る限りはさせてもらいます」
「気を付けてね。話は以上よ」
「分かりました。ケルベロスをちょっと倒しに行ってきますね」
「ええ」
私はそう言って扉を出て、外にいるフリッツさんに合流した。
「何の話をしてたんだ?」
「それは簡単ですよ?」
「?」
「ケルベロスをサッサと倒して、皆無事に帰って来ようってお話ですよ」
「なんだ、それだったら俺がいても良かったじゃないか」
「ダメですよ。これは女のお話なんです」
「はは、仕方ないな。それを言われたら引き下がるしかない」
やっぱりフリッツさんはよく笑う人だ。この笑顔も私は守りたい。そう思った。
「それではドン・キホーテさんのお見舞いに行きましょう」
「そうだな。ちょっと茶化しに行かないと」
「もう、喧嘩を売ってはダメですよ?」
「そんなことはしないよ」
私とフリッツさんはドン・キホーテさんの家へと向かう。
その光景を見つめる者がいた。
「あの子をお願いします。聖女様……」
その声は誰にも届くことはなかった。
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