防御魔法しか使えない聖女はいらないと勇者パーティーを追放されました~そんな私は優しい人と出会って今は幸せです

土偶の友

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第1章 聖女は出会う

78話 みんな

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「え……?」

 私の頭は混乱していた。これまで多くの人に断られて、誰一人として受けてはくれなかった。それなのに、何でこの人たちが?

「もしかしてもう必要なかったですか?」
「え、いえ、だって、誰も受けてくれなくて……。私、もう、無理だろうって……」
「ちょっと依頼を見せて貰えます?」
「あ、はい……」

 私は握っていたのかくしゃくしゃになった依頼書を彼らに見せる。

 彼らはそれを気にした風もなく拡げ、内容を確認していた。

「確かにこれは難しい依頼ですね。でも、我々が受けましょう」

 そこで私が言った言葉は感謝でも了承でもなく、疑問だった。

「なぜ?」
「なぜ……とは。貴方が依頼したことだとは思いますけど」
「だって、難しい依頼だって……」

 そう言うと彼らは苦笑いを浮かべて頬を掻いている。

「それはそうですけど、人助けをするのも立派なことですから。それに、我々はアンリ孤児院出身の冒険者なんですよ」
「アンリ孤児院の?」
「ええ、貴方がこの数日間やってくださったことにとても感謝しているんです。貴方の依頼を是非受けるようにと。お嬢様からのお達しなんです」
「お嬢様……?」
「おや? 聞いてないんですか? でしたら是非……と。来てくださったみたいですね」

 彼はそう言って振り返った。私もそれに釣られて視線を向けると、そこにはフェリさんがいた。

「フェリ……さん?」

 扉の入り口にはフェリさんが所在なさげに立っている。そうか、男性が苦手なうえに特に苦手な冒険者だから。

 私が行かないと。

 そう思って立ち上がるが、それを見た彼女が私の方に駆け寄ってくる。

「お姉様!」

 彼女が私の胸に飛び込んでくる。

「フェリ……さん?」
「大丈夫でしたか? お待たせしてすいません」
「お待たせ……とは?」
「お姉様が突然居なくなって、心配していたんですが何も出来なくって。その後司祭様からお話を聞いて、それでそろそろ帰ってくる予定だった孤児院出身の冒険者の所まで行ってて、何とか出会えて、彼らだけでも先に来てもらうように頼んできたんです。勿論おじい様の許可も貰ってますよ?」
「え? どういうこと? おじい様?」

 側にいた冒険者が補足してくれる。

「お嬢様はアンリ孤児院の院長の孫娘なんですよ。そのお嬢様にあんなに頼み込まれたらやらない訳には行きませんからね。それだけではないですけど。我々も孤児院には本当にお世話になったので、彼女のおばあさまにも、お母さまにも。それで巡礼の旅の護衛としてついて行っていた俺達が一足先に帰ってきたんですよ」
「だから、お姉様、元気を出してください……。お姉様ならきっとケルベロスなんかに負けません……」
「フェリさん……。ありがとう」

 私はその時泣いていたと思う。これだけ断られて、誰も助けてくれない。そう思っていた矢先にこれだったのだ。この人達がいれば戦える。私はそう思った。

「ちょっと待ちな」

 扉の方で別の声がする。その声は前に聞いたことがあって、確か勇者の像を掃除した時に……。

「嬢ちゃんや。あんただけいい顔をするんじゃないよ。アタシも来たからね。元気だしな」
「おばあさん……」
「そんなに涙を流して、全く今の冒険者は腑抜けしか居ないのかい? アタシが現役の頃はね……」

 彼女が周囲の冒険者を睨みつける。が、それに言葉を返せる者はいない。

 それを制してくれたのは彼女の娘さんだ。

「おばあちゃん。今はそれよりも」
「ああ、そうだったね。クロエ、ちょっと領主に話をつけて騎士を少し借りて来たよ。こき使ってやっておくれ」

 そう言って彼女が後ろを示すと、そこには白銀の鎧を全身に纏い、長剣を腰に佩いた騎士が何人もいた。はためくマントと一切微動だにしない練度が頼もしさを感じさせる。

「おばあちゃん。そんないい方しちゃダメでしょ? 後、ここは邪魔だから外に……」
「煩い。今はいい所じゃろうが……。まぁ、ここが邪魔になるのは分かっておる。一度場所を変えるぞ」
「それなら……孤児院の庭でどうでしょうか?」

 フェリさんが提案してくれる。

「それならここから近いし広く使えるね。そうしようか。いいね?」
「え?」
「アンタが依頼人なんだ。しっかりおし」
「……はい!」

 私は立ち上がり、建物の外に向かう。皆が私に力を貸してくれる。私はこれまでにないほど……。
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