71 / 203
第1章 聖女は出会う
71話 フェリさんとの会話
しおりを挟む
その日の夜。フリッツさんは違った意味で疲れたと言ってサッサと部屋で休んでいた。私はというとフェリさんに呼び出されて彼女の部屋に来ている。
呼び出しというと昔のイメージであんまりいい思い出がないんだけど、大丈夫なんだろうか。孤児院で怒られた記憶しかない。
「お待たせしてすいません」
「あ、いえ、そんなことはないですよ」
私は彼女に返事をする。どうしよう。貴方、使えないから依頼は首よ。とか言われたら。
彼女は私にイスを進めて自分はベッドに座った。
私は固唾を飲んで彼女が話し出すのを待つ。
「クロエさん」
「はい」
「今日は本当にありがとうございました」
「は……い?」
「今日来られたばかりなのに子供の食事のお世話から、アルベルトを助けて頂いたり、料理長もクロエさんの料理には唸ったと聞いています」
「あ、ああ。そうだったんですか」
フリッツさんが吠えていたことの方が気になっていたが、料理長にも認められたとなるとちょっと嬉しい。
「ええ、本当に凄いです。私はあの時アルベルトを助けることはできなかったし、あんなに美味しい料理を作ることも出来ません。どうやったら貴方のようになれるのでしょうか?」
「え? ん? 何のお話ですか?」
「いえ……その、クロエさんの様に立派になるにはどうすればよいのかと……」
最後の方は尻すぼみになっていくが、それでもちらちらとこちらを見てくる感じ、本当のことのようだった。
私は自分の人生を振り返る。そして彼女にいう。
「私はそんなに立派じゃないですよ? 間違えても来ましたし、失敗も何度もやってきました。その事を知ってるからとてもじゃないですけど立派だなんて思えません」
「でも、あれだけのことが出来るのなら……」
「私から見たら、フェリさんも立派だと思っています。あれだけの子供たちの世話を毎日やっているのでしょう? 他の人に言われたんです。フェリさんは頑張りすぎるから出来れば見ていて上げて欲しいって」
「そんな。私なんて」
「そう思うでしょう? 私も同じ気持ちですよ」
「そうでしょうか……」
「そうですよ」
フェリさんは少し悩んでいたようだったけど、頭を振ってまた話始める。
「私はクロエさんの様にフリッツさんとか他の人ともほとんど話せないんです。だから今日はご迷惑をお掛けしてしまって」
「誰でも苦手な人はいますからね。ですが、フリッツさんのどこが苦手だったんでしょう?」
「その……直せない所だとは思うんですが……。いいですか?」
「どうぞ?」
「男性というのが私はダメでして……」
「それは……」
どうしよう。フリッツさんに協力してもらってリフちゃんを出すべきだろうか。きっとその方がいい気がする。後で手伝ってもらおう。
頭の中で数瞬で決定する。
「男が苦手なんですか?」
「はい、以前怖い思いをしそうになって……」
「それは……大丈夫でしたか?」
「あ、はい。その時は冒険者の方に助けて貰いまして。事なきを得たんですが、それ以来襲ってきた男性、それも冒険者だと関係がなくても喋れなくなってしまうんです」
「それは……怖いですよね。私も襲われた事はありますから、その怖さは知っているつもりです」
その相手がまさか仲間だと思っていた相手からだとは言わなかった。
「大丈夫だったんですか?」
「大丈夫ですよ。この時ほど自分の防御魔法に感謝したことはなかったです。その後色々あって苦労したんですが、その時に助けてくれたのがフリッツさんだったんです。だからいい人も悪い人もどっちもいるんです。だから話してみて、それからの判断でも遅くないのかなとは思いました。だからあんなことがあっても私は私でいられるんだと思います」
「私でも、クロエさんの様になれるでしょうか?」
「なれますよ。でも、私の様になる所で終わって欲しくはないです。私は私、フェリさんはフェリさんなんですから。きっと私では辿り着けない立派な人になると思います」
「ありがとうございます。私は私なんですもんね……」
彼女は何か納得してくれたのか一人頷いている。
人の相談に載ることは最近はなかったのでちゃんと彼女の為になったかが不安だ。
それでも、何か彼女の中で納得してくれたのならそれでいいかな。
「それと、もう一つお願いがあるんですがいいですか?」
「何でしょう?」
私は乗り切ったという思いから気を抜いていた。
「お姉さまとお呼びしてもいいですか?」
「へ?」
やめてもらうように説得するのに1時間もかかってしまった。
呼び出しというと昔のイメージであんまりいい思い出がないんだけど、大丈夫なんだろうか。孤児院で怒られた記憶しかない。
「お待たせしてすいません」
「あ、いえ、そんなことはないですよ」
私は彼女に返事をする。どうしよう。貴方、使えないから依頼は首よ。とか言われたら。
彼女は私にイスを進めて自分はベッドに座った。
私は固唾を飲んで彼女が話し出すのを待つ。
「クロエさん」
「はい」
「今日は本当にありがとうございました」
「は……い?」
「今日来られたばかりなのに子供の食事のお世話から、アルベルトを助けて頂いたり、料理長もクロエさんの料理には唸ったと聞いています」
「あ、ああ。そうだったんですか」
フリッツさんが吠えていたことの方が気になっていたが、料理長にも認められたとなるとちょっと嬉しい。
「ええ、本当に凄いです。私はあの時アルベルトを助けることはできなかったし、あんなに美味しい料理を作ることも出来ません。どうやったら貴方のようになれるのでしょうか?」
「え? ん? 何のお話ですか?」
「いえ……その、クロエさんの様に立派になるにはどうすればよいのかと……」
最後の方は尻すぼみになっていくが、それでもちらちらとこちらを見てくる感じ、本当のことのようだった。
私は自分の人生を振り返る。そして彼女にいう。
「私はそんなに立派じゃないですよ? 間違えても来ましたし、失敗も何度もやってきました。その事を知ってるからとてもじゃないですけど立派だなんて思えません」
「でも、あれだけのことが出来るのなら……」
「私から見たら、フェリさんも立派だと思っています。あれだけの子供たちの世話を毎日やっているのでしょう? 他の人に言われたんです。フェリさんは頑張りすぎるから出来れば見ていて上げて欲しいって」
「そんな。私なんて」
「そう思うでしょう? 私も同じ気持ちですよ」
「そうでしょうか……」
「そうですよ」
フェリさんは少し悩んでいたようだったけど、頭を振ってまた話始める。
「私はクロエさんの様にフリッツさんとか他の人ともほとんど話せないんです。だから今日はご迷惑をお掛けしてしまって」
「誰でも苦手な人はいますからね。ですが、フリッツさんのどこが苦手だったんでしょう?」
「その……直せない所だとは思うんですが……。いいですか?」
「どうぞ?」
「男性というのが私はダメでして……」
「それは……」
どうしよう。フリッツさんに協力してもらってリフちゃんを出すべきだろうか。きっとその方がいい気がする。後で手伝ってもらおう。
頭の中で数瞬で決定する。
「男が苦手なんですか?」
「はい、以前怖い思いをしそうになって……」
「それは……大丈夫でしたか?」
「あ、はい。その時は冒険者の方に助けて貰いまして。事なきを得たんですが、それ以来襲ってきた男性、それも冒険者だと関係がなくても喋れなくなってしまうんです」
「それは……怖いですよね。私も襲われた事はありますから、その怖さは知っているつもりです」
その相手がまさか仲間だと思っていた相手からだとは言わなかった。
「大丈夫だったんですか?」
「大丈夫ですよ。この時ほど自分の防御魔法に感謝したことはなかったです。その後色々あって苦労したんですが、その時に助けてくれたのがフリッツさんだったんです。だからいい人も悪い人もどっちもいるんです。だから話してみて、それからの判断でも遅くないのかなとは思いました。だからあんなことがあっても私は私でいられるんだと思います」
「私でも、クロエさんの様になれるでしょうか?」
「なれますよ。でも、私の様になる所で終わって欲しくはないです。私は私、フェリさんはフェリさんなんですから。きっと私では辿り着けない立派な人になると思います」
「ありがとうございます。私は私なんですもんね……」
彼女は何か納得してくれたのか一人頷いている。
人の相談に載ることは最近はなかったのでちゃんと彼女の為になったかが不安だ。
それでも、何か彼女の中で納得してくれたのならそれでいいかな。
「それと、もう一つお願いがあるんですがいいですか?」
「何でしょう?」
私は乗り切ったという思いから気を抜いていた。
「お姉さまとお呼びしてもいいですか?」
「へ?」
やめてもらうように説得するのに1時間もかかってしまった。
0
お気に入りに追加
1,622
あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~
まいめろ
ファンタジー
孤児だったエステルは、本来の聖女の代わりとして守護方陣を張り、王国の守りを担っていた。
本来の聖女である公爵令嬢メシアは、17歳の誕生日を迎えても能力が開花しなかった為、急遽、聖女の能力を行使できるエステルが呼ばれたのだ。
それから2年……王政を維持する為に表向きはメシアが守護方陣を展開していると発表され続け、エステルは誰にも知られない影の聖女として労働させられていた。
「メシアが能力開花をした。影でしかないお前はもう、用済みだ」
突然の解雇通知……エステルは反論を許されず、ろくな報酬を与えられず、宮殿から追い出されてしまった。
そんな時、知り合いになっていた隣国の王子が現れ、魔導国家へと招待することになる。エステルの能力は、魔法が盛んな隣国に於いても並ぶ者が居らず、彼女は英雄的な待遇を受けるのであった。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる