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第1章 聖女は出会う
71話 フェリさんとの会話
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その日の夜。フリッツさんは違った意味で疲れたと言ってサッサと部屋で休んでいた。私はというとフェリさんに呼び出されて彼女の部屋に来ている。
呼び出しというと昔のイメージであんまりいい思い出がないんだけど、大丈夫なんだろうか。孤児院で怒られた記憶しかない。
「お待たせしてすいません」
「あ、いえ、そんなことはないですよ」
私は彼女に返事をする。どうしよう。貴方、使えないから依頼は首よ。とか言われたら。
彼女は私にイスを進めて自分はベッドに座った。
私は固唾を飲んで彼女が話し出すのを待つ。
「クロエさん」
「はい」
「今日は本当にありがとうございました」
「は……い?」
「今日来られたばかりなのに子供の食事のお世話から、アルベルトを助けて頂いたり、料理長もクロエさんの料理には唸ったと聞いています」
「あ、ああ。そうだったんですか」
フリッツさんが吠えていたことの方が気になっていたが、料理長にも認められたとなるとちょっと嬉しい。
「ええ、本当に凄いです。私はあの時アルベルトを助けることはできなかったし、あんなに美味しい料理を作ることも出来ません。どうやったら貴方のようになれるのでしょうか?」
「え? ん? 何のお話ですか?」
「いえ……その、クロエさんの様に立派になるにはどうすればよいのかと……」
最後の方は尻すぼみになっていくが、それでもちらちらとこちらを見てくる感じ、本当のことのようだった。
私は自分の人生を振り返る。そして彼女にいう。
「私はそんなに立派じゃないですよ? 間違えても来ましたし、失敗も何度もやってきました。その事を知ってるからとてもじゃないですけど立派だなんて思えません」
「でも、あれだけのことが出来るのなら……」
「私から見たら、フェリさんも立派だと思っています。あれだけの子供たちの世話を毎日やっているのでしょう? 他の人に言われたんです。フェリさんは頑張りすぎるから出来れば見ていて上げて欲しいって」
「そんな。私なんて」
「そう思うでしょう? 私も同じ気持ちですよ」
「そうでしょうか……」
「そうですよ」
フェリさんは少し悩んでいたようだったけど、頭を振ってまた話始める。
「私はクロエさんの様にフリッツさんとか他の人ともほとんど話せないんです。だから今日はご迷惑をお掛けしてしまって」
「誰でも苦手な人はいますからね。ですが、フリッツさんのどこが苦手だったんでしょう?」
「その……直せない所だとは思うんですが……。いいですか?」
「どうぞ?」
「男性というのが私はダメでして……」
「それは……」
どうしよう。フリッツさんに協力してもらってリフちゃんを出すべきだろうか。きっとその方がいい気がする。後で手伝ってもらおう。
頭の中で数瞬で決定する。
「男が苦手なんですか?」
「はい、以前怖い思いをしそうになって……」
「それは……大丈夫でしたか?」
「あ、はい。その時は冒険者の方に助けて貰いまして。事なきを得たんですが、それ以来襲ってきた男性、それも冒険者だと関係がなくても喋れなくなってしまうんです」
「それは……怖いですよね。私も襲われた事はありますから、その怖さは知っているつもりです」
その相手がまさか仲間だと思っていた相手からだとは言わなかった。
「大丈夫だったんですか?」
「大丈夫ですよ。この時ほど自分の防御魔法に感謝したことはなかったです。その後色々あって苦労したんですが、その時に助けてくれたのがフリッツさんだったんです。だからいい人も悪い人もどっちもいるんです。だから話してみて、それからの判断でも遅くないのかなとは思いました。だからあんなことがあっても私は私でいられるんだと思います」
「私でも、クロエさんの様になれるでしょうか?」
「なれますよ。でも、私の様になる所で終わって欲しくはないです。私は私、フェリさんはフェリさんなんですから。きっと私では辿り着けない立派な人になると思います」
「ありがとうございます。私は私なんですもんね……」
彼女は何か納得してくれたのか一人頷いている。
人の相談に載ることは最近はなかったのでちゃんと彼女の為になったかが不安だ。
それでも、何か彼女の中で納得してくれたのならそれでいいかな。
「それと、もう一つお願いがあるんですがいいですか?」
「何でしょう?」
私は乗り切ったという思いから気を抜いていた。
「お姉さまとお呼びしてもいいですか?」
「へ?」
やめてもらうように説得するのに1時間もかかってしまった。
呼び出しというと昔のイメージであんまりいい思い出がないんだけど、大丈夫なんだろうか。孤児院で怒られた記憶しかない。
「お待たせしてすいません」
「あ、いえ、そんなことはないですよ」
私は彼女に返事をする。どうしよう。貴方、使えないから依頼は首よ。とか言われたら。
彼女は私にイスを進めて自分はベッドに座った。
私は固唾を飲んで彼女が話し出すのを待つ。
「クロエさん」
「はい」
「今日は本当にありがとうございました」
「は……い?」
「今日来られたばかりなのに子供の食事のお世話から、アルベルトを助けて頂いたり、料理長もクロエさんの料理には唸ったと聞いています」
「あ、ああ。そうだったんですか」
フリッツさんが吠えていたことの方が気になっていたが、料理長にも認められたとなるとちょっと嬉しい。
「ええ、本当に凄いです。私はあの時アルベルトを助けることはできなかったし、あんなに美味しい料理を作ることも出来ません。どうやったら貴方のようになれるのでしょうか?」
「え? ん? 何のお話ですか?」
「いえ……その、クロエさんの様に立派になるにはどうすればよいのかと……」
最後の方は尻すぼみになっていくが、それでもちらちらとこちらを見てくる感じ、本当のことのようだった。
私は自分の人生を振り返る。そして彼女にいう。
「私はそんなに立派じゃないですよ? 間違えても来ましたし、失敗も何度もやってきました。その事を知ってるからとてもじゃないですけど立派だなんて思えません」
「でも、あれだけのことが出来るのなら……」
「私から見たら、フェリさんも立派だと思っています。あれだけの子供たちの世話を毎日やっているのでしょう? 他の人に言われたんです。フェリさんは頑張りすぎるから出来れば見ていて上げて欲しいって」
「そんな。私なんて」
「そう思うでしょう? 私も同じ気持ちですよ」
「そうでしょうか……」
「そうですよ」
フェリさんは少し悩んでいたようだったけど、頭を振ってまた話始める。
「私はクロエさんの様にフリッツさんとか他の人ともほとんど話せないんです。だから今日はご迷惑をお掛けしてしまって」
「誰でも苦手な人はいますからね。ですが、フリッツさんのどこが苦手だったんでしょう?」
「その……直せない所だとは思うんですが……。いいですか?」
「どうぞ?」
「男性というのが私はダメでして……」
「それは……」
どうしよう。フリッツさんに協力してもらってリフちゃんを出すべきだろうか。きっとその方がいい気がする。後で手伝ってもらおう。
頭の中で数瞬で決定する。
「男が苦手なんですか?」
「はい、以前怖い思いをしそうになって……」
「それは……大丈夫でしたか?」
「あ、はい。その時は冒険者の方に助けて貰いまして。事なきを得たんですが、それ以来襲ってきた男性、それも冒険者だと関係がなくても喋れなくなってしまうんです」
「それは……怖いですよね。私も襲われた事はありますから、その怖さは知っているつもりです」
その相手がまさか仲間だと思っていた相手からだとは言わなかった。
「大丈夫だったんですか?」
「大丈夫ですよ。この時ほど自分の防御魔法に感謝したことはなかったです。その後色々あって苦労したんですが、その時に助けてくれたのがフリッツさんだったんです。だからいい人も悪い人もどっちもいるんです。だから話してみて、それからの判断でも遅くないのかなとは思いました。だからあんなことがあっても私は私でいられるんだと思います」
「私でも、クロエさんの様になれるでしょうか?」
「なれますよ。でも、私の様になる所で終わって欲しくはないです。私は私、フェリさんはフェリさんなんですから。きっと私では辿り着けない立派な人になると思います」
「ありがとうございます。私は私なんですもんね……」
彼女は何か納得してくれたのか一人頷いている。
人の相談に載ることは最近はなかったのでちゃんと彼女の為になったかが不安だ。
それでも、何か彼女の中で納得してくれたのならそれでいいかな。
「それと、もう一つお願いがあるんですがいいですか?」
「何でしょう?」
私は乗り切ったという思いから気を抜いていた。
「お姉さまとお呼びしてもいいですか?」
「へ?」
やめてもらうように説得するのに1時間もかかってしまった。
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