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第1章 聖女は出会う
69話 間に合った
しおりを挟む「「どこ?」」
私とフェリさんはその子が言う方を、具体的には斜め上の木の辺りを指すがどこにいるのかは分からない。
「あそこー」
その子には見えているようでずっと同じ場所を指している。
「見える?」
私は他の子に聞く。
「見えるー」
「なんか捕まってるー」
「おちそー」
「それは! ちょっと退いて!」
私は危険な匂いがして取りあえず指し示される場所に向かって走り出す。フェリさんも遅いが私の後をついてきているようだ。
「落ちた!」
「え!?」
どこ? どこにいるの? 分からないから受け止められない。
「どこ!? 場所を教えて!」
「もっと右奥!」
「急いで!」
「枝を折ってる!!」
「もっと奥だよ奥!」
子供たちの言葉が混じって分からなくなる。ただ、取りあえずもっと奥だということは分かった。そちらの方を向くと、バサバサっと葉を叩くような音が聞こえて来る。それと同時に絶対に間に合わないとも直感で理解した。
私は音のする地面の少し上あたりを見つめる。
そして何かが落ちてきた。
「プロテクト!」
ドサ!
私が防御魔法を使うのと同時に見えた何かが落ちた。
「きゃああああああああ!!!!」
後ろからはフェリさんの悲鳴が聞こえる。私はその声を無視して地面に横たわる何か、彼に近づく。
「うぅ……」
「大丈夫? 怪我はない? 痛い所はない? あるなら見るから言って」
「痛い所……痛い所、あれ? 痛い所ないよ?」
彼は最初ぐったりしていたが、防御魔法が上手くいったのか彼は自分の体中を手を当てて探し回るが痛い箇所はないようだ。
「良かった。間に合った……。立って歩ける?」
「うん! 大丈夫!」
「そう、フェリさんの所に行こう?」
「うん!」
私彼の手を取ってフェリさんの所に戻る。
フェリさんは信じられないような、嬉しいような顔をしてこちらを見ていた。
「フェリさん。彼は何とか無事でした」
「このバカ!」
「え」
フェリさんは彼を叱りつけながら抱きしめている。その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。心配していることは言わなくても伝わってくる。
暫く抱きしめた後に彼女は彼に説教をし始めた。私はその間、他の子達を纏めてどこにいかないようにするのに苦労していた。
「あ、クロエさん。ごめんなさい」
彼女の説教が一段落したころに、彼女は私に謝罪してくる。
「大丈夫ですよ。心配してましたもんね」
「はい、ほんとにあの子は何をするのか分からない子で……」
「無事だったのなら良かったですよ」
私は彼女に笑いかける。彼女も疲れたように見えたからだ。
「ありがとうございます。それで、その、どうやって助けて頂いたんでしょうか? もし何か魔道具とかを使ったのなら、その代金はお支払いしなければ……」
「え? そんなことは必要ありませんよ。防御魔法を使っただけですから」
「え? 防御魔法ってそんなにも凄いんですね……。私も覚えた方がいいのでしょうか……」
「魔法を覚えるのは魔力がないと始まりませんから……。それに魔力があっても魔法が使えるかは難しい所ですからね」
「そうなのですか……」
「もし魔力があって、防御魔法の素養があったらお教えしますよ。私はその魔法の適性しかなかったので」
「結構厳しい門なのですね……」
「そうですよ。私がいた孤児院でも、あ、ちょっと! 何処に行くの!」
「おひるねー」
「ねむたいー」
私はフェリさんを見ると彼女は頷いた。
「一度皆を連れて寝に行きましょう」
「分かりました」
私たちはそこにいる子達を連れて木々の間から出て建物に戻る。そして、皆を寝かせることにした。
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