66 / 203
第1章 聖女は出会う
66話 紹介
しおりを挟む
フェリさんは外に出て足を止める。
「個人個人の紹介は……後でしますね。とりあえず右の走っている子から、アルベルト、テトラ、グルック、テン、シャイアード……」
「待って待って待って待って」
「?」
私は慌てて彼女を止める。いきなりそんなに名前を言われても絶対に覚えきれない。それも庭を走っている子供は少なめに見積もっても20人はいる。
それを彼女は不思議そうに私を見つめていた。
「どうかしましたか?」
「流石にそんな一気に言われても覚えられません」
「そうですか? あんなに分かりやすい子達ですから簡単かと思ったのですが……」
「そ、そうだったんですか。でも、紹介はまた後にしてもらって。どういった遊びをさせたらしていいのか教えてくださるといいなーって」
「そうですね。では私が知ってる範囲でお教えしますね」
「はい」
良かった。何とか話を逸らすことが出来た。
それから木にはこんな遊具があったり、こんな遊びがあるといった事を教えて貰う。そして説明の途中で12時を告げる鐘が鳴る。
「あ、もうこんな時間なのですね。本当はもう少し話したいことがあるのですが、食事が終わってからにしましょうか。その時に皆にも紹介しますね」
「はい。分かりました」
「分かった」
子供たちが私たち目掛けて走ってくる。と思ったら違った。子供たちは私たちというよりも食堂を目指しているらしく、私たちは素通りされていく。ただ、フェリさんは人望があるのか挨拶だけはほぼ全員からされていたように思う。
「好かれているんですね」
「え……あ……。ありがとうございます」
「凄いことだと思います。あんなに子供が一杯いたのに皆に挨拶をされていましたし」
「そうでしょうか」
「はい。そうだと思います」
「なぁ、食事にはいかないのか? 今のって食事をしに行くんだろ?」
「……」
彼女は言葉を返さない。やはり男性が怖いのだろうか。
「食事の時間でしたら案内して欲しいのですがいいですか?」
「はい、ついてきてください」
こうして私たちは食堂に行くことになった。
そして辿り着いた食堂はかなりの人数がいて、はしゃいでいる子供たちでいっぱいだった。
そんな中にどこに座ろうかと思っていると、フェリさんについて行くと大人用の席があるらしく、そこで食事を取るそうだ。
「あ、私はこれで」
「食事はしないのですか?」
「子供たちと。食べますので。終わったら、また来ます」
「ご一緒してもいいですか?」
子供たちの世話をするなら折角だししておきたい。
「え? はい、大丈夫……です。でも、先に皆さんの紹介があると思います」
「ああ、そういえばそこからでしたね」
そんなことを話していると、食堂の中で一際高くなっているところがあった。そこに壮年の男性が登ると大声を張り上げる。
「皆さん! 本日から少しではありますが、皆さんを護り、共に過ごして下さる冒険者の方々が来られました。フリッツさん、クロエさん。是非こちらへ」
私とフリッツさんは彼に 促されるままに登壇する。
食堂にいる子供も大人も関係なく、皆の視線が私たちに集まるのが分かった。
「この男性の方はフリッツさん。Cランク冒険者の方です。そしてこちらの女性はFランクのクロエさんです。どちらも年少の子達を受け持っていただきます。年少の子達は彼らを頼るように。何か一言ありますか?」
壮年の男性が私たちに聞いてくる。
フリッツさんは一つ頷き先に話してくれた。
「俺はフリッツだ。あまり子守をしたことはないが出来る限り頑張るからよろしく頼む」
そう言って私に視線を向ける。
「えっと、私はクロエと言います。よろしくお願いします」
気の利いた一言でも言えればいいんだろうけど。そんな事が出来たら苦労はしていない気がする。
「ありがとうございました。それでは食事に致しましょう」
私たちは席に戻って食事になった。
「個人個人の紹介は……後でしますね。とりあえず右の走っている子から、アルベルト、テトラ、グルック、テン、シャイアード……」
「待って待って待って待って」
「?」
私は慌てて彼女を止める。いきなりそんなに名前を言われても絶対に覚えきれない。それも庭を走っている子供は少なめに見積もっても20人はいる。
それを彼女は不思議そうに私を見つめていた。
「どうかしましたか?」
「流石にそんな一気に言われても覚えられません」
「そうですか? あんなに分かりやすい子達ですから簡単かと思ったのですが……」
「そ、そうだったんですか。でも、紹介はまた後にしてもらって。どういった遊びをさせたらしていいのか教えてくださるといいなーって」
「そうですね。では私が知ってる範囲でお教えしますね」
「はい」
良かった。何とか話を逸らすことが出来た。
それから木にはこんな遊具があったり、こんな遊びがあるといった事を教えて貰う。そして説明の途中で12時を告げる鐘が鳴る。
「あ、もうこんな時間なのですね。本当はもう少し話したいことがあるのですが、食事が終わってからにしましょうか。その時に皆にも紹介しますね」
「はい。分かりました」
「分かった」
子供たちが私たち目掛けて走ってくる。と思ったら違った。子供たちは私たちというよりも食堂を目指しているらしく、私たちは素通りされていく。ただ、フェリさんは人望があるのか挨拶だけはほぼ全員からされていたように思う。
「好かれているんですね」
「え……あ……。ありがとうございます」
「凄いことだと思います。あんなに子供が一杯いたのに皆に挨拶をされていましたし」
「そうでしょうか」
「はい。そうだと思います」
「なぁ、食事にはいかないのか? 今のって食事をしに行くんだろ?」
「……」
彼女は言葉を返さない。やはり男性が怖いのだろうか。
「食事の時間でしたら案内して欲しいのですがいいですか?」
「はい、ついてきてください」
こうして私たちは食堂に行くことになった。
そして辿り着いた食堂はかなりの人数がいて、はしゃいでいる子供たちでいっぱいだった。
そんな中にどこに座ろうかと思っていると、フェリさんについて行くと大人用の席があるらしく、そこで食事を取るそうだ。
「あ、私はこれで」
「食事はしないのですか?」
「子供たちと。食べますので。終わったら、また来ます」
「ご一緒してもいいですか?」
子供たちの世話をするなら折角だししておきたい。
「え? はい、大丈夫……です。でも、先に皆さんの紹介があると思います」
「ああ、そういえばそこからでしたね」
そんなことを話していると、食堂の中で一際高くなっているところがあった。そこに壮年の男性が登ると大声を張り上げる。
「皆さん! 本日から少しではありますが、皆さんを護り、共に過ごして下さる冒険者の方々が来られました。フリッツさん、クロエさん。是非こちらへ」
私とフリッツさんは彼に 促されるままに登壇する。
食堂にいる子供も大人も関係なく、皆の視線が私たちに集まるのが分かった。
「この男性の方はフリッツさん。Cランク冒険者の方です。そしてこちらの女性はFランクのクロエさんです。どちらも年少の子達を受け持っていただきます。年少の子達は彼らを頼るように。何か一言ありますか?」
壮年の男性が私たちに聞いてくる。
フリッツさんは一つ頷き先に話してくれた。
「俺はフリッツだ。あまり子守をしたことはないが出来る限り頑張るからよろしく頼む」
そう言って私に視線を向ける。
「えっと、私はクロエと言います。よろしくお願いします」
気の利いた一言でも言えればいいんだろうけど。そんな事が出来たら苦労はしていない気がする。
「ありがとうございました。それでは食事に致しましょう」
私たちは席に戻って食事になった。
0
お気に入りに追加
1,622
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる