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第1章 聖女は出会う

59話 悩み

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「はぁ……」

 次の日の朝。私はいつもより遅い時間に起きた気がする。なぜかというと腹の減り具合や、窓の隙間から零れる光の量だ。日が高いのかもしれない。

 昨日の老婆の顔が頭から離れない。

「あんな顔をもっと……」

既に日が高いにも関わらず、私はベッドの中で悶々とし続けた。そしてゴロゴロして20分程経った頃に、ドアがノックされる。

 ドンドンドン

「クロエーいるかー? クロエー?」
「いますよー」
「そろそろ昼になるけど、大丈夫なのか!?」
「今起きます」

 私は起き上がり、着替える。そして部屋の外に出るとフリッツさんが心配そうな顔で私を見ていた。

「大丈夫か?」
「何がですか?」
「昨日の話があってから表情が暗いぞ。それに、今日も起きてくるのがだいぶ遅かったし。何かあったのかと思って」
「すいません。ただ、ちょっと……何て言うか言葉に出来ないんですが。悩んでまして」
「なんだ? 出来ることがあるなら相談に乗るぞ?」
「ありがとうございます。でも、少し自分で考えたいなって思っているので……」
「そうか、言いたくなったらいつでも言ってくれ」
「はい」
「それで、今日はどうする? 孤児院の依頼を受けに行くか? それとも今日は休みにするか? この街で知らないことも結構あることが分かったからな。観光というより探検をするのもありかと思っている」
「フリッツさんは旅とかお好きなんですか?」
「そうだな……知らないところに行くは好きだ。自分の知らないもの、知らない人。そんな人達と出会って話す。そんな人生もいいじゃないかと思う」
「でも、リッター村から離れる気はないんですよね?」
「……ああ。それはそうだ。母さんを置いていけはしない」
「難しいですね……」
「そうだな。でも悲観することなどないぞ」
「そうなんですか?」
「ああ、今だってこの街に一人で来ているだろう? それに1か月位旅に出たことだってある。時々帰ってきて顔を見せれば問題ない」

 そう言って彼は私に笑いかける。少しだけ、ほんの少しだけ寂しそうに。

「ありがとうございます。今日から孤児院に行こうと思います」
「そうか。俺もついて行っても?」
「勿論です」
「よろしくな」

 私たちは冒険者ギルドに移動する。その途中で出店で食べ物を買う。パンにオーク肉の焼いたものを挟んだもの。他にも野菜やソース等も豪快に入っていてボリューム満点だ。

 それをフリッツさんと仲良く食べながら冒険者ギルドを目指す。

「これ、意外といけますね」
「だな。出店にしては充分だ。ただ、昨日のを思い出すとな」
「それは言わない約束ですよ」
「それもそうだな。あれと比べたらクロエの料理くらいしか張り合えない」
「もう。そんなに言っても何も出ませんよ」
「冗談じゃないんだがな」

 そんな会話をしながら冒険者ギルドに到着する。
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