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第1章 聖女は出会う
43話 一方勇者はその頃②
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そのころ勇者パーティ一行は、魔族の町の周辺で戦闘になっていた。
「はああああ!!」
「ぐあ!」
「消し飛びなさい! ライトニングボルト!」
「ぎゃああああ!!!!」
「があああああ!!!!」
戦っている相手は魔族であり、戦闘は勇者パーティの優位に進んでいるが相手の数は多い。この優勢が何時まで持つかは分からなかった。
元をただすとこの原因は盗賊のハブルールにある。彼が斥候をしている最中に見つかってしまい、尾行されていたのだ。そして勇者パーティが来ているということが魔族の町に知られ、かなりの戦力と戦うことになっていた。
「ちょっとハブルール! アンタ囮になってあいつらを引き離しなさいよ! 斥候なのにバレるなんて馬鹿じゃないの!?」
ハブルールに怒鳴り散らすのは魔法使いのサラだ。彼女は魔法学院でも成績は常にトップだった為何事にも妥協は許さない。ハブルールの中途半端さに怒りを覚えていたのは彼女だけではない。
「そうよ! いい加減になさい! 私のペットの方がまだ優秀だったわ! 今からでも変わるかしら!?」
付与術師のディーナ。彼女も前に所属していたAランクパーティの斥候の方がまともな働きをしたことだろう。
「あいつらの中にヤバいやつがいただけだ! 俺は悪くねえ!」
「その程度の想像も出来ないアンタが悪いのよ!」
「そうよ! その程度しか出来ないのに勇者パーティにいて恥ずかしくないわけ!?」
「うるせえ! 俺は全力で」
「黙れお前ら! 今は戦闘に集中しろ! じゃねえと全員死ぬぞ!」
それまで行く末を見守っていた勇者ランドが遂に声を上げる。彼は今までルーカスと共に黙って戦線を維持していたが、女性二人がハブルールを攻め始めて支援がおろそかになってきたことに業を煮やしたためだった。
断じてハブルールを守りたいといったことはなかった。ただ、ハブルールをパーティに入れたのはランド自身である為、彼を入れたことを攻められたくなかったのかもしれない。
「ご、ごめん。ライトニングボルト!」
「ぐぅぅぅぅ!」
「エンチャント、アシストスピード! バリア!」
サラとディーナは即座に支援に移る。この辺りは流石に経験値が高いだけあって流石だった。それでもじわじわと戦線は押され始め、遂にはルーカスが撤退を叫ぶ。
「ランド! ここは引くぞ! これ以上戦っても得られるものはない!」
「ふざけんな! 魔族みたいなカスに背中は見せられねえよ!」
斬!
ランドは目の前にいる魔族の兵士を斬り殺しながらそう叫ぶ。肌が浅黒い魔族の兵士から血が飛び散った。
だがルーカスも黙ってはいない。彼のこれまでの傭兵としての経験が今は危険だと叫んでいる。
「無理だ! 奴らの攻撃力が想定よりも圧倒的に高い! 今のままでは誰かがやられるぞ! そうなればお終いだ!」
「クソっ! それでも!」
「一度下がるくらいがなんだ! 死んだら終わりなんだぞ!」
「チッ! 一旦下がる! サラ! 妨害系の魔法を放て!」
「分かったわ! 下がって!」
サラの言葉で前線にいた二人が下がり、そこへ魔族の兵士が追撃して来ようとする。しかし、それはサラ得意の魔法で防がれる。
「ファイアーウォール!」
前線を張っていたランドとルーカスの目の前、魔族の兵士たちの足元から燃え盛る炎が立ち上った。
「ぎゃああああ!!!!」
「あついいいあついいいい!!」
「やめてくれええええ!!!!」
「今のうちに下がるぞ!」
ランドの声で皆が森の中に撤退する。
魔族もやられただけではすまないと回り込む。しかし、ファイアーウォールはかなりの広範囲で使われていたため、魔族の兵士たちが回り込んだ時には既に勇者パーティの面々は居なくなっていた。
「はああああ!!」
「ぐあ!」
「消し飛びなさい! ライトニングボルト!」
「ぎゃああああ!!!!」
「があああああ!!!!」
戦っている相手は魔族であり、戦闘は勇者パーティの優位に進んでいるが相手の数は多い。この優勢が何時まで持つかは分からなかった。
元をただすとこの原因は盗賊のハブルールにある。彼が斥候をしている最中に見つかってしまい、尾行されていたのだ。そして勇者パーティが来ているということが魔族の町に知られ、かなりの戦力と戦うことになっていた。
「ちょっとハブルール! アンタ囮になってあいつらを引き離しなさいよ! 斥候なのにバレるなんて馬鹿じゃないの!?」
ハブルールに怒鳴り散らすのは魔法使いのサラだ。彼女は魔法学院でも成績は常にトップだった為何事にも妥協は許さない。ハブルールの中途半端さに怒りを覚えていたのは彼女だけではない。
「そうよ! いい加減になさい! 私のペットの方がまだ優秀だったわ! 今からでも変わるかしら!?」
付与術師のディーナ。彼女も前に所属していたAランクパーティの斥候の方がまともな働きをしたことだろう。
「あいつらの中にヤバいやつがいただけだ! 俺は悪くねえ!」
「その程度の想像も出来ないアンタが悪いのよ!」
「そうよ! その程度しか出来ないのに勇者パーティにいて恥ずかしくないわけ!?」
「うるせえ! 俺は全力で」
「黙れお前ら! 今は戦闘に集中しろ! じゃねえと全員死ぬぞ!」
それまで行く末を見守っていた勇者ランドが遂に声を上げる。彼は今までルーカスと共に黙って戦線を維持していたが、女性二人がハブルールを攻め始めて支援がおろそかになってきたことに業を煮やしたためだった。
断じてハブルールを守りたいといったことはなかった。ただ、ハブルールをパーティに入れたのはランド自身である為、彼を入れたことを攻められたくなかったのかもしれない。
「ご、ごめん。ライトニングボルト!」
「ぐぅぅぅぅ!」
「エンチャント、アシストスピード! バリア!」
サラとディーナは即座に支援に移る。この辺りは流石に経験値が高いだけあって流石だった。それでもじわじわと戦線は押され始め、遂にはルーカスが撤退を叫ぶ。
「ランド! ここは引くぞ! これ以上戦っても得られるものはない!」
「ふざけんな! 魔族みたいなカスに背中は見せられねえよ!」
斬!
ランドは目の前にいる魔族の兵士を斬り殺しながらそう叫ぶ。肌が浅黒い魔族の兵士から血が飛び散った。
だがルーカスも黙ってはいない。彼のこれまでの傭兵としての経験が今は危険だと叫んでいる。
「無理だ! 奴らの攻撃力が想定よりも圧倒的に高い! 今のままでは誰かがやられるぞ! そうなればお終いだ!」
「クソっ! それでも!」
「一度下がるくらいがなんだ! 死んだら終わりなんだぞ!」
「チッ! 一旦下がる! サラ! 妨害系の魔法を放て!」
「分かったわ! 下がって!」
サラの言葉で前線にいた二人が下がり、そこへ魔族の兵士が追撃して来ようとする。しかし、それはサラ得意の魔法で防がれる。
「ファイアーウォール!」
前線を張っていたランドとルーカスの目の前、魔族の兵士たちの足元から燃え盛る炎が立ち上った。
「ぎゃああああ!!!!」
「あついいいあついいいい!!」
「やめてくれええええ!!!!」
「今のうちに下がるぞ!」
ランドの声で皆が森の中に撤退する。
魔族もやられただけではすまないと回り込む。しかし、ファイアーウォールはかなりの広範囲で使われていたため、魔族の兵士たちが回り込んだ時には既に勇者パーティの面々は居なくなっていた。
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