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第1章 聖女は出会う
39話 金貨400枚
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「何だか緊張しますね」
「そうだな、これだけ高級感のある部屋だとちょっと……」
フリッツさんも庶民派な様でかなり気にしている。
そこへバルドさんが後ろの部屋から入ってきた。
「お待たせしました」
彼はそう言って手に持っているカップなどを3人分机の上に置く。そしてティーポットから温かいティーを注ぎ始めた。注がれるお茶は綺麗な色をしている。
「美味しい!」
「これは美味いな……」
「恐縮です」
「これ、バルドさんが入れたんですか?」
「はい。最近入れるのに凝ってまして」
「凄いですね。こんなに美味しいのは飲んだことないです」
「俺も初めてだな。これだけ出来れば本職に変えても食っていけそうだな?」
「ありがとうございます。しかし、これはあくまでも趣味のような物ですから」
そう言っている間に大きな袋を持ったレント君が帰ってくる。
「お待たせしました。ああ、バルドもう来ていたのですか」
「直ぐにお入れしますね」
「頼む。それでは商談に入りましょうか」
彼は持って来た袋を机の上に置き、こちらを見る。
「それでは例のものを」
「分かった」
フリッツさんもケルベロスの素材を机の上に置いた。
「お互い今一度確認してもいいでしょうか?」
「分かってる」
そしてお互いがそれぞれの物を確認する。
「こっちはちゃんと400枚あるな」
「こちらも先ほどの物でお間違いないですね」
「それじゃあ」
「はい」
こうして取引は成立した。
「助かった。本当だったらどうやって売ろうか苦肉の策であんな事をしていたんだ」
「それでなんですね。しかし、お二人はこの街に住んでいらっしゃらないですよね?」
「そうだが、どうして?」
こんな広い街で住んでいるかどうかはどうやって分かったのだろう。
「言ってはあれですが僕のことを知りませんでしたし、あれだけ強いのにバルドが知っていることもない。となれば他の街から来た人達というのが合っているのかなと」
「そうか、言われればそうだったな。隠しても仕方ないが、確かに俺達は他の場所から来た。といってもこんなことはもうないだろうから気にしないでくれると助かる」
「分かりました。ですが、もしまたこのような魔物の素材を得ることがあれば僕を尋ねて来てください。いつでも歓迎します」
そう言って笑う彼はまるで私たちがケルベロスを倒したんでしょう? とでも言わんばかりだった。
「もしもの時はそうさせてもらおう」
「ないと思いますけどね」
「それと依頼の荷物もお預かりしますね。よろしいですか?」
「ああ、頼まれてくれるか」
「勿論です」
フリッツさんは鞄から別の小包と依頼書をを取り出す。そしてそれをレント君に渡した。
レント君は中身を確認したり依頼書をしかりと読み込んだ後に懐からハンコを取り出し依頼書に押す。
「これで依頼は達成です。報酬はこちらですね」
レント君はそう言って先ほどの金貨の入った袋を渡してくる。
それをフリッツさんが受け取った。
「分かった」
「それではこれで失礼しますね」
「ああ、助かった」
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました。これでもっとこの商会を大きく出来るかもしれません。後、この素材は2,3日後には発表しますのでお忘れなく。それと、マジックバックは購入されなくていいのですか?」
「マジックバック?」
「どうしてですか?」
「どうしてもこうしてもそれだけの金貨を財布に入れたからといって、持っておくのはかなり危険ですよ?」
「そうか……」
「それもそうですね……」
「ここに予備はないので、もし良かったら『グリー魔道具店』に行かれることをおススメします。ここのは質もいいですし、価格もそこまで高くない。僕の名前を出せばサービスもしてくれると思います」
「いいのか? そこまでしてくれて」
「命の恩人に返すものとしては足りないくらいですよ? お気になさらず」
「感謝しておく」
「ありがとうございます」
「いえいえ、お二人のような素敵な方々に救っていただけて良かったです。それでは僕はこれで、と詳しい場所は出る時に門番にでも言えば案内してくれます。というかバルド。案内してきてもらっていいかな?」
「はい、分かりました」
「それでは僕はこれで」
レント君はそう言って颯爽と奥の扉から去って行った。
「そうだな、これだけ高級感のある部屋だとちょっと……」
フリッツさんも庶民派な様でかなり気にしている。
そこへバルドさんが後ろの部屋から入ってきた。
「お待たせしました」
彼はそう言って手に持っているカップなどを3人分机の上に置く。そしてティーポットから温かいティーを注ぎ始めた。注がれるお茶は綺麗な色をしている。
「美味しい!」
「これは美味いな……」
「恐縮です」
「これ、バルドさんが入れたんですか?」
「はい。最近入れるのに凝ってまして」
「凄いですね。こんなに美味しいのは飲んだことないです」
「俺も初めてだな。これだけ出来れば本職に変えても食っていけそうだな?」
「ありがとうございます。しかし、これはあくまでも趣味のような物ですから」
そう言っている間に大きな袋を持ったレント君が帰ってくる。
「お待たせしました。ああ、バルドもう来ていたのですか」
「直ぐにお入れしますね」
「頼む。それでは商談に入りましょうか」
彼は持って来た袋を机の上に置き、こちらを見る。
「それでは例のものを」
「分かった」
フリッツさんもケルベロスの素材を机の上に置いた。
「お互い今一度確認してもいいでしょうか?」
「分かってる」
そしてお互いがそれぞれの物を確認する。
「こっちはちゃんと400枚あるな」
「こちらも先ほどの物でお間違いないですね」
「それじゃあ」
「はい」
こうして取引は成立した。
「助かった。本当だったらどうやって売ろうか苦肉の策であんな事をしていたんだ」
「それでなんですね。しかし、お二人はこの街に住んでいらっしゃらないですよね?」
「そうだが、どうして?」
こんな広い街で住んでいるかどうかはどうやって分かったのだろう。
「言ってはあれですが僕のことを知りませんでしたし、あれだけ強いのにバルドが知っていることもない。となれば他の街から来た人達というのが合っているのかなと」
「そうか、言われればそうだったな。隠しても仕方ないが、確かに俺達は他の場所から来た。といってもこんなことはもうないだろうから気にしないでくれると助かる」
「分かりました。ですが、もしまたこのような魔物の素材を得ることがあれば僕を尋ねて来てください。いつでも歓迎します」
そう言って笑う彼はまるで私たちがケルベロスを倒したんでしょう? とでも言わんばかりだった。
「もしもの時はそうさせてもらおう」
「ないと思いますけどね」
「それと依頼の荷物もお預かりしますね。よろしいですか?」
「ああ、頼まれてくれるか」
「勿論です」
フリッツさんは鞄から別の小包と依頼書をを取り出す。そしてそれをレント君に渡した。
レント君は中身を確認したり依頼書をしかりと読み込んだ後に懐からハンコを取り出し依頼書に押す。
「これで依頼は達成です。報酬はこちらですね」
レント君はそう言って先ほどの金貨の入った袋を渡してくる。
それをフリッツさんが受け取った。
「分かった」
「それではこれで失礼しますね」
「ああ、助かった」
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました。これでもっとこの商会を大きく出来るかもしれません。後、この素材は2,3日後には発表しますのでお忘れなく。それと、マジックバックは購入されなくていいのですか?」
「マジックバック?」
「どうしてですか?」
「どうしてもこうしてもそれだけの金貨を財布に入れたからといって、持っておくのはかなり危険ですよ?」
「そうか……」
「それもそうですね……」
「ここに予備はないので、もし良かったら『グリー魔道具店』に行かれることをおススメします。ここのは質もいいですし、価格もそこまで高くない。僕の名前を出せばサービスもしてくれると思います」
「いいのか? そこまでしてくれて」
「命の恩人に返すものとしては足りないくらいですよ? お気になさらず」
「感謝しておく」
「ありがとうございます」
「いえいえ、お二人のような素敵な方々に救っていただけて良かったです。それでは僕はこれで、と詳しい場所は出る時に門番にでも言えば案内してくれます。というかバルド。案内してきてもらっていいかな?」
「はい、分かりました」
「それでは僕はこれで」
レント君はそう言って颯爽と奥の扉から去って行った。
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