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第1章 聖女は出会う
30話 大声で呼んでくれ
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それから数分間走り続けた。私は冒険者として走り回ったりしているので体力に自信があるが、彼らも意外としつこかった。
「どこまで追いかけて来るんですか!」
「お前が止まるまでだ!」
「しつこい男は嫌われますよ!」
「途中で諦めるような男に俺はならねえ!」
「そんなかっこよく言ってもダメですから!」
色々走っているがここが何処か分からない。何とか行き止まりにならない様に逃げてはいるがこのままだとどうなるか分からない。しかし、走っていると見知った姿があった。
私は彼の側に行きそこで止まる。
「フリッツさん!」
「クロエ、あいつらは?」
「すれ違った時に因縁をつけられまして」
「そうか、どうなってもいいんだな?」
「え、ええ」
何だろう。ちょっと怖いような雰囲気を漂わせてる。
そこへさっきの二人が追いつく。
「あ? 誰だてめえ」
「ちょっと飛んでみろや」
「お前らは黙ってろ」
フリッツさんがそう言ったかと思うと姿が消える。
「へ?」
その後に後ろの方でドガっ! バギッ! という音が聞こえてきて、慌てて振り向くとそこには地面に横たわるさっきの2人がいた。
その近くでフリッツさんが何も言わずに佇んでいる。
「ふ、フリッツさん?」
「クロエ、何でこんなところにいるんだ?」
「えっと……秋海の小波亭に行こうとしてたらこんな奥にあるって言われてしまったんです」
「クロエ……」
「はい?」
「そんな名前の店ではなく『秋風の小枝亭』だ」
「え? あーそうだったんですか……。あはは」
「全く、心配して来てみれば騒ぎに巻き込まれているし」
「す、すいません」
「まぁいい。宿はこっちだ」
「あ、はい」
フリッツさんは先に歩き出したので私もそれについていく。彼はあんな言い方をしてはいたが、歩く速度は私に合わせてくれているようで直ぐに追いつけた。
「……」
「……」
気まずい。何とも気まずい。いつもなら話しかけてくれる彼が黙ったままだし、それに声をかけていいのか、いや、声をかけるなっていう空気を凄い出している気がする。
そんなことを思って少し歩くと、唐突に彼が話しかけてきた。
「クロエ、道が分からなくなったら冒険者ギルドにいくなり、大声で呼ぶなりしてくれ」
「大声で呼ぶのはちょっと……」
「だったら変な場所に行くのはやめてくれ。いいか?」
「はい、気を付けます」
「頼むぜ。(心配になるからな)行こうか」
「はい! はい? 真ん中に何か言ってませんでした?」
「いいから行くぞ」
彼はそれだけ言うと私に笑顔を向けてくれた。その笑顔には嬉しさと同時に申し訳なさを感じてしまう。だから、次からはこんなことにならないようにちゃんと宿の道のりを覚えておこうと誓った。
「どこまで追いかけて来るんですか!」
「お前が止まるまでだ!」
「しつこい男は嫌われますよ!」
「途中で諦めるような男に俺はならねえ!」
「そんなかっこよく言ってもダメですから!」
色々走っているがここが何処か分からない。何とか行き止まりにならない様に逃げてはいるがこのままだとどうなるか分からない。しかし、走っていると見知った姿があった。
私は彼の側に行きそこで止まる。
「フリッツさん!」
「クロエ、あいつらは?」
「すれ違った時に因縁をつけられまして」
「そうか、どうなってもいいんだな?」
「え、ええ」
何だろう。ちょっと怖いような雰囲気を漂わせてる。
そこへさっきの二人が追いつく。
「あ? 誰だてめえ」
「ちょっと飛んでみろや」
「お前らは黙ってろ」
フリッツさんがそう言ったかと思うと姿が消える。
「へ?」
その後に後ろの方でドガっ! バギッ! という音が聞こえてきて、慌てて振り向くとそこには地面に横たわるさっきの2人がいた。
その近くでフリッツさんが何も言わずに佇んでいる。
「ふ、フリッツさん?」
「クロエ、何でこんなところにいるんだ?」
「えっと……秋海の小波亭に行こうとしてたらこんな奥にあるって言われてしまったんです」
「クロエ……」
「はい?」
「そんな名前の店ではなく『秋風の小枝亭』だ」
「え? あーそうだったんですか……。あはは」
「全く、心配して来てみれば騒ぎに巻き込まれているし」
「す、すいません」
「まぁいい。宿はこっちだ」
「あ、はい」
フリッツさんは先に歩き出したので私もそれについていく。彼はあんな言い方をしてはいたが、歩く速度は私に合わせてくれているようで直ぐに追いつけた。
「……」
「……」
気まずい。何とも気まずい。いつもなら話しかけてくれる彼が黙ったままだし、それに声をかけていいのか、いや、声をかけるなっていう空気を凄い出している気がする。
そんなことを思って少し歩くと、唐突に彼が話しかけてきた。
「クロエ、道が分からなくなったら冒険者ギルドにいくなり、大声で呼ぶなりしてくれ」
「大声で呼ぶのはちょっと……」
「だったら変な場所に行くのはやめてくれ。いいか?」
「はい、気を付けます」
「頼むぜ。(心配になるからな)行こうか」
「はい! はい? 真ん中に何か言ってませんでした?」
「いいから行くぞ」
彼はそれだけ言うと私に笑顔を向けてくれた。その笑顔には嬉しさと同時に申し訳なさを感じてしまう。だから、次からはこんなことにならないようにちゃんと宿の道のりを覚えておこうと誓った。
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