27 / 203
第1章 聖女は出会う
27話 教会の聖印はすごい
しおりを挟む
「それにしてもなかなか面白い人達でしたね」
「だな。しかもお付きの人間を連れているとか、かなり大きな所の人間かもしれないな」
「そうですね。もしかしたらダラス1の商会の人だったりして」
「そうだったら凄いな。ケルベロスの素材も買い取ってもらえばよかったか」
「だけどそれだと私達だとバレちゃうんじゃないですか?」
「それもそうか。お、見えてきた。あれがダラスだ」
「私も少し前に来たばっかりなので覚えていますよ~」
そんな会話をしながら門に到着する。門には数人の商人や旅人が並んでいるだけで、込んでいる様子はなかった。
「あんまり混んでいないんですね」
「こっち方面に行こうって人間はあんまりいないからな。というか村自体も少ない。そんな場所だからこれだけ少ないんだよ」
「なるほど」
「反対側とかは逆にそれなりに混むからな。少しでもこっちに分けて欲しいといつも思うんだが」
「あはは、この人の少なさを見るとそうかもしれませんね」
そうやって話していると私たちの番が回ってきた。
「次!」
「はい」
「はい」
「入る目的は?」
「俺は冒険者でリッター村の依頼で来た。これがその依頼表になる」
「貸してみろ」
おお、結構雑な印象だったけどこういった時はちゃんと出来るんだ。私はそう思って彼のことを見ていた。
「よし、お前は通って良し。……貴方は?」
「私は旅のシスターです。道の途中で彼に助けてもらい、彼のご厚意でこうして案内していただきました」
「なるほど、聖印はお持ちで?」
「こちらに」
私は院で貰った聖印を彼に見せる。聖印は院に入った物であるなら誰もが持っているし、旅のシスターも全員持っていものだ。だからこれを求められるのは分かっていた。
「これは……失礼しました。貴方の道に神のご加護があらんことを」
「貴方の道にこそご加護がありますように」
「何か不自由していることはございませんか?」
「私ですか?」
「はい、私に出来ることであれば何なりと」
「そのお気持ちだけで充分です。貴方の気持ちはしかと受け取りました」
「そうですか……。ああ、そうそう、教会は中に入ってそのまま道を真っすぐに行けばあります」
「ご丁寧にありがとうございます」
「それではどうぞ中へ」
「失礼します」
私たちは問題なくダラスの街中へ入ることだ出来た。それにしても敬虔な信者の方もいるんだな。あの態度は私の格好をというか聖印を見たからだろう。教会の聖印はすごい。
街の中は流石国境線最大の街ダラス、といった所でリッター村とは比べるべくもない。家々が所狭しと並んでいるし、道端には露店なども盛んに開かれている。そもそも家の大きさからしてかなり違っていて、2階3階建ての建物が当たり前のように存在していた。
「それじゃあ早速……どうしましょうか?」
こういう時は基本的に他のメンバーがばらばらに動いていたからどうしていいのか。早速荷物を渡しに行くのか? それともケルベロスを売る商会を見つけるのだろうか?
「取りあえずは宿でいいんじゃないか? 幾ら早くてもここに数日は滞在するだろう?」
「ああそっか、それもそうですね。早速行きましょうか」
「いつも俺が行っているところでいいか?」
「勿論です」
こうして進んでいる最中に私は想定外の人物と出会う。
「クロエ?」
呼ばれて振り返った相手は司祭の服に身を包んだ女性だった。彼女は緩いパーマがかかった金髪なのだが、今はそれをウィンプルと呼ばれる被り物で隠している。顔は左の目のあたりに泣き黒子があって目は釣り目がちな人だった。
「え? 先生?」
すれ違った相手はかつて院で、一番お世話になった先生だった。
「だな。しかもお付きの人間を連れているとか、かなり大きな所の人間かもしれないな」
「そうですね。もしかしたらダラス1の商会の人だったりして」
「そうだったら凄いな。ケルベロスの素材も買い取ってもらえばよかったか」
「だけどそれだと私達だとバレちゃうんじゃないですか?」
「それもそうか。お、見えてきた。あれがダラスだ」
「私も少し前に来たばっかりなので覚えていますよ~」
そんな会話をしながら門に到着する。門には数人の商人や旅人が並んでいるだけで、込んでいる様子はなかった。
「あんまり混んでいないんですね」
「こっち方面に行こうって人間はあんまりいないからな。というか村自体も少ない。そんな場所だからこれだけ少ないんだよ」
「なるほど」
「反対側とかは逆にそれなりに混むからな。少しでもこっちに分けて欲しいといつも思うんだが」
「あはは、この人の少なさを見るとそうかもしれませんね」
そうやって話していると私たちの番が回ってきた。
「次!」
「はい」
「はい」
「入る目的は?」
「俺は冒険者でリッター村の依頼で来た。これがその依頼表になる」
「貸してみろ」
おお、結構雑な印象だったけどこういった時はちゃんと出来るんだ。私はそう思って彼のことを見ていた。
「よし、お前は通って良し。……貴方は?」
「私は旅のシスターです。道の途中で彼に助けてもらい、彼のご厚意でこうして案内していただきました」
「なるほど、聖印はお持ちで?」
「こちらに」
私は院で貰った聖印を彼に見せる。聖印は院に入った物であるなら誰もが持っているし、旅のシスターも全員持っていものだ。だからこれを求められるのは分かっていた。
「これは……失礼しました。貴方の道に神のご加護があらんことを」
「貴方の道にこそご加護がありますように」
「何か不自由していることはございませんか?」
「私ですか?」
「はい、私に出来ることであれば何なりと」
「そのお気持ちだけで充分です。貴方の気持ちはしかと受け取りました」
「そうですか……。ああ、そうそう、教会は中に入ってそのまま道を真っすぐに行けばあります」
「ご丁寧にありがとうございます」
「それではどうぞ中へ」
「失礼します」
私たちは問題なくダラスの街中へ入ることだ出来た。それにしても敬虔な信者の方もいるんだな。あの態度は私の格好をというか聖印を見たからだろう。教会の聖印はすごい。
街の中は流石国境線最大の街ダラス、といった所でリッター村とは比べるべくもない。家々が所狭しと並んでいるし、道端には露店なども盛んに開かれている。そもそも家の大きさからしてかなり違っていて、2階3階建ての建物が当たり前のように存在していた。
「それじゃあ早速……どうしましょうか?」
こういう時は基本的に他のメンバーがばらばらに動いていたからどうしていいのか。早速荷物を渡しに行くのか? それともケルベロスを売る商会を見つけるのだろうか?
「取りあえずは宿でいいんじゃないか? 幾ら早くてもここに数日は滞在するだろう?」
「ああそっか、それもそうですね。早速行きましょうか」
「いつも俺が行っているところでいいか?」
「勿論です」
こうして進んでいる最中に私は想定外の人物と出会う。
「クロエ?」
呼ばれて振り返った相手は司祭の服に身を包んだ女性だった。彼女は緩いパーマがかかった金髪なのだが、今はそれをウィンプルと呼ばれる被り物で隠している。顔は左の目のあたりに泣き黒子があって目は釣り目がちな人だった。
「え? 先生?」
すれ違った相手はかつて院で、一番お世話になった先生だった。
2
お気に入りに追加
1,622
あなたにおすすめの小説
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる