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第1章 聖女は出会う
21話 3人で食べる夕食
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「出来ました~」
私はスープや豚の香草焼き等を持っていく。パンとかサラダは先に置いていたからこれで十分だろう。といってもあんまり材料を使っていいのか分からなかったので普通よりちょっと多いくらいで止めておいた。
「おお! うまそうないい匂いだ!」
「……確かにいい匂いだけれど、しっかりと味わってみてからじゃないと言えないわ」
「はい、それではどうぞ」
私は固唾を飲んで2人が食べるのを見つめるが2人は食べ始める様子はない。
「どうしました?」
「それはこっちのセリフだ。どうして座らないんだ?」
「そうですよ、貴方が作ったのですから。一緒に座って食べることくらいはいいでしょう」
「はい。分かりました」
そうして私も席につくが、ちょっと感動していた。こうやって人と一緒に食卓を囲むというのはなんだか院を思わせてくれる。勇者パーティの時は街ではそれぞれがばらばらに食べていたからだ。
一人でそんなことを考えていると2人は既に食事を始めていた。
「うん! やっぱりクロエの作る料理は旨いな! 毎日作ってくれ!」
「え」
「そうねぇ。これなら毎日食べてもいいかもしれないわ」
「あ、ありがとうございます」
素直に嬉しかった。今まで勇者パーティで料理を作ってきたが、こんなこと言われたことなんて1度も無かったのだ。皆の体調や健康、好みとかも色々と把握しようとしていたが、彼らには関係無かった。それがこんなあっさりと言われて私は感極まってしまう。
「うっうぅ」
「クロエ!?」
「どうしたんですか?」
「いえ、その、すいません。私、嬉しくってみんなで食卓を囲みながらありがとうなんて言われたのが久しぶり過ぎて……」
「クロエ……」
「そうだったの。ここにいれば幾らでも言ってあげるわよ」
「ありがとうございます」
それから暫く私は泣いてしまう。そんな私を2人は私を慰めてくれる。
泣き止んだ頃にはスープなどはすっかり冷めてしまっていて、申し訳なく思う。
「すいません」
「大丈夫だ」
「こういうことなら任せて、かの者の熱を上げよ。ホット」
カルラさんがそう唱えるとその場にあった料理が全て温かくなる。それも出来立てかのようにほかほかで湯気まで立てているではないか。
「凄いですね! 全部一気に行けるなんて驚きです!」
「私にかかればこんなもんよ」
「そうだぜ、早速食べようぜ」
そして3人そろってスープを口に入れる。
「「「あ、熱い!」」」
スープの温度は驚くほど熱く、舌が火傷するかと思った。それは2人も同様だったようで舌を出して冷ましていた。
「ふふ、あっつあつですね」
私はそんな状況なのに、なぜかおかしいような、嬉しいような気持ちになっていた。それは2人も同じなのか笑っている。
「だな」
「そうね」
そうして舌が冷めた後は3人で美味しい夕食を取った。
私はスープや豚の香草焼き等を持っていく。パンとかサラダは先に置いていたからこれで十分だろう。といってもあんまり材料を使っていいのか分からなかったので普通よりちょっと多いくらいで止めておいた。
「おお! うまそうないい匂いだ!」
「……確かにいい匂いだけれど、しっかりと味わってみてからじゃないと言えないわ」
「はい、それではどうぞ」
私は固唾を飲んで2人が食べるのを見つめるが2人は食べ始める様子はない。
「どうしました?」
「それはこっちのセリフだ。どうして座らないんだ?」
「そうですよ、貴方が作ったのですから。一緒に座って食べることくらいはいいでしょう」
「はい。分かりました」
そうして私も席につくが、ちょっと感動していた。こうやって人と一緒に食卓を囲むというのはなんだか院を思わせてくれる。勇者パーティの時は街ではそれぞれがばらばらに食べていたからだ。
一人でそんなことを考えていると2人は既に食事を始めていた。
「うん! やっぱりクロエの作る料理は旨いな! 毎日作ってくれ!」
「え」
「そうねぇ。これなら毎日食べてもいいかもしれないわ」
「あ、ありがとうございます」
素直に嬉しかった。今まで勇者パーティで料理を作ってきたが、こんなこと言われたことなんて1度も無かったのだ。皆の体調や健康、好みとかも色々と把握しようとしていたが、彼らには関係無かった。それがこんなあっさりと言われて私は感極まってしまう。
「うっうぅ」
「クロエ!?」
「どうしたんですか?」
「いえ、その、すいません。私、嬉しくってみんなで食卓を囲みながらありがとうなんて言われたのが久しぶり過ぎて……」
「クロエ……」
「そうだったの。ここにいれば幾らでも言ってあげるわよ」
「ありがとうございます」
それから暫く私は泣いてしまう。そんな私を2人は私を慰めてくれる。
泣き止んだ頃にはスープなどはすっかり冷めてしまっていて、申し訳なく思う。
「すいません」
「大丈夫だ」
「こういうことなら任せて、かの者の熱を上げよ。ホット」
カルラさんがそう唱えるとその場にあった料理が全て温かくなる。それも出来立てかのようにほかほかで湯気まで立てているではないか。
「凄いですね! 全部一気に行けるなんて驚きです!」
「私にかかればこんなもんよ」
「そうだぜ、早速食べようぜ」
そして3人そろってスープを口に入れる。
「「「あ、熱い!」」」
スープの温度は驚くほど熱く、舌が火傷するかと思った。それは2人も同様だったようで舌を出して冷ましていた。
「ふふ、あっつあつですね」
私はそんな状況なのに、なぜかおかしいような、嬉しいような気持ちになっていた。それは2人も同じなのか笑っている。
「だな」
「そうね」
そうして舌が冷めた後は3人で美味しい夕食を取った。
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