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第1章 聖女は出会う
12話 ケルベロススープ
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私は数十分くらいかけてじっくり丁寧に調理をする。ランド達だったら遅いと文句を言ってくるところだが、フリッツさんは待っていてくれた。
「出来ました」
「おお、いい匂いがする」
フリッツさんは私の料理を興味津々に見ていたが、その様子は犬が尻尾を振っているようで少し可愛かった。
「はい、それでは……あ」
ケルベロスの肉を香料を使って匂いを消したり、野菜を刻んで入れて、スープを作った。しかし、私は気付いてしまう。それを入れるお玉も、盛る皿も食べるスプーンもないことに。
「食べる食器がありません……」
「なんだそんなことか」
「そんなことって、素手で食べる訳には」
「ちょっと待ってろ」
彼はそう言って木の太い幹に近寄り、剣を抜き放つ。そして太めの枝を切り落としたと思ったらそれを刻んで皿とスプーンを作ってくれた。
「これでいいか?」
「ありがとうございます。でもお玉が」
「そんなの。スプーンで掬えばいいだろ?」
彼はそう言って大き目のスプーンを躊躇いなく鍋の中に入れている。そして肉や野菜を取って私に差し出してくれた。
「ん」
「え?」
「お前が作ったんだ。そういう権利はお前にあるだろ?」
「いいんですか?」
私は全力で作ったが、こういう時は私はいつも最後だった。それなのに本当にいいんだろうか?
「当然だろ? 冷める前にとっとと食おうぜ」
そう言って笑いかけてくる彼の笑顔は優しげだった。
「はい」
私は受け取り自分で作った料理を食べる。自画自賛する訳じゃないがこんなに美味しくなるとは。ケルベロスの肉がやっぱりおいしいのかな? 元々肉自体に味があるようで味付けは薄くしたつもりだったが丁度いい感じになっていた。
これは私も久しぶりに大満足して料理を食べられる。彼はどうかと思って見てみると。
「がつがつがつがつ」
物凄い勢いで料理をかき込んでいる。その姿は飢えた獣のごとくかき込んでいるのでぽーっと見つめてしまった。
その視線を彼は敏感に気付いたようだ。
「ん? どうした?」
彼は勢いよくかき込んでいるため口の横に野菜のくずがついている。
「そんな勢いで食べなくても無くならないですよ。それと、ここ。野菜ついています」
「お、サンキュ。ただこの飯が上手くてな。こんなに上手い飯は久しぶりに食った」
「そう言ってくれて嬉しいです。ケルベロスの肉が美味しいってのもあると思いますけどね」
「そうだとしても俺だったらこんな味には絶対に作れなかった。お前がいなかったら食えなかったから感謝しかねえよ」
「……」
彼はそう言って更に入っている料理を口に入れる。
私はその光景を見つめていることしか出来なかった。
「は~美味かった。サンキューな」
「いえ、お粗末様でした」
それから数十分後。
彼は作った全てを平らげてくれた。本当は明日の朝用に作った分もあったのだが、あんなにおいしそうに食べられては止める訳にはいかなかったのだ。
「それじゃあ寝るか。見張りは俺が最初にやろう。半分くらいになったら起こすからそれでいいか?」
「半分でいいんですか?」
「当たり前だろ。本当はもっとちゃんと寝かせてやりたいんだがな。流石に寝ずに行くのは無理だからな」
「そんな、半分でも十分です。それでは先に失礼しますね」
「ああ、お休み」
「はい、おやすみなさい」
私は少し離れて横になった。
「出来ました」
「おお、いい匂いがする」
フリッツさんは私の料理を興味津々に見ていたが、その様子は犬が尻尾を振っているようで少し可愛かった。
「はい、それでは……あ」
ケルベロスの肉を香料を使って匂いを消したり、野菜を刻んで入れて、スープを作った。しかし、私は気付いてしまう。それを入れるお玉も、盛る皿も食べるスプーンもないことに。
「食べる食器がありません……」
「なんだそんなことか」
「そんなことって、素手で食べる訳には」
「ちょっと待ってろ」
彼はそう言って木の太い幹に近寄り、剣を抜き放つ。そして太めの枝を切り落としたと思ったらそれを刻んで皿とスプーンを作ってくれた。
「これでいいか?」
「ありがとうございます。でもお玉が」
「そんなの。スプーンで掬えばいいだろ?」
彼はそう言って大き目のスプーンを躊躇いなく鍋の中に入れている。そして肉や野菜を取って私に差し出してくれた。
「ん」
「え?」
「お前が作ったんだ。そういう権利はお前にあるだろ?」
「いいんですか?」
私は全力で作ったが、こういう時は私はいつも最後だった。それなのに本当にいいんだろうか?
「当然だろ? 冷める前にとっとと食おうぜ」
そう言って笑いかけてくる彼の笑顔は優しげだった。
「はい」
私は受け取り自分で作った料理を食べる。自画自賛する訳じゃないがこんなに美味しくなるとは。ケルベロスの肉がやっぱりおいしいのかな? 元々肉自体に味があるようで味付けは薄くしたつもりだったが丁度いい感じになっていた。
これは私も久しぶりに大満足して料理を食べられる。彼はどうかと思って見てみると。
「がつがつがつがつ」
物凄い勢いで料理をかき込んでいる。その姿は飢えた獣のごとくかき込んでいるのでぽーっと見つめてしまった。
その視線を彼は敏感に気付いたようだ。
「ん? どうした?」
彼は勢いよくかき込んでいるため口の横に野菜のくずがついている。
「そんな勢いで食べなくても無くならないですよ。それと、ここ。野菜ついています」
「お、サンキュ。ただこの飯が上手くてな。こんなに上手い飯は久しぶりに食った」
「そう言ってくれて嬉しいです。ケルベロスの肉が美味しいってのもあると思いますけどね」
「そうだとしても俺だったらこんな味には絶対に作れなかった。お前がいなかったら食えなかったから感謝しかねえよ」
「……」
彼はそう言って更に入っている料理を口に入れる。
私はその光景を見つめていることしか出来なかった。
「は~美味かった。サンキューな」
「いえ、お粗末様でした」
それから数十分後。
彼は作った全てを平らげてくれた。本当は明日の朝用に作った分もあったのだが、あんなにおいしそうに食べられては止める訳にはいかなかったのだ。
「それじゃあ寝るか。見張りは俺が最初にやろう。半分くらいになったら起こすからそれでいいか?」
「半分でいいんですか?」
「当たり前だろ。本当はもっとちゃんと寝かせてやりたいんだがな。流石に寝ずに行くのは無理だからな」
「そんな、半分でも十分です。それでは先に失礼しますね」
「ああ、お休み」
「はい、おやすみなさい」
私は少し離れて横になった。
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