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8話 新たな日常
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「ふぅ……」
私は1人部屋を貰えるとは思わなかった。
食事も奴隷に食べさせるとは思えないほどの豪華な物。
それに普通はさせて貰えない湯あみまでさせてくれると言われるのは何か裏があるようにしか思えない。
でも、今はそんなことに頭が回っている様子がなかった。
今日のことをしっかりと、ヴァルターの癖等をしっかりと思いだしていた。
「時折髪をかき上げる癖……。人を見る時に左手を見ている? でもどうして?」
あまり多くの時間をかけて見る訳にはいかなかったけれど、それでも、ある程度の情報を入手することは出来ていた。
と言っても使えるかどうか分からない癖ばかり。
それでも、左手から見るような人物であれば、右手にナイフ等を持っておく様にすれば、発見が数瞬でも遅れる。
そうなれば、暗殺の成功率も上がる。
何が役に立つか分からない。
だから、明日もまた同じ仕事が出来るようにと、少しの期間で暗殺を出来るように考えながら眠りにつく。
家族の事から逃げるように、彼女は思考を向けないようにしていた。
******
次の日の朝。彼女は日の出と共に起きていた。
窓はないが、感覚で朝だと分かる。
「朝……」
急いで起き、私は仕事用に貰った服に着替えた。
すると、昨日の年配のメイドがノックもしないで部屋に入ってくる。
「食事です。終わり次第我が主の元へ向かいなさい」
「はい。ありがとうございます」
「仕事です。礼は必要ありません」
メイドがぴしゃりと言って来る。
食事の乗ったお盆を部屋の机に置いてそのまま部屋を出ていく。
私と一瞬でもいたくないようだ。
しかし、仕事で命令された事は絶対に守るためなのか。
食事の量を減らされていたり、何かを盛られている様子は無かった。
私は食事を終えて部屋を出る。
そこには先ほどとは別のメイドが待っていた。
「ついてきなさい」
「はい」
私は彼女についてヴァルターの部屋に向かう。
メイドが中に入っていいか聞き、許可が出ると私に入るように促してくる。
私は一声かけてから中に入った。
「失礼します」
中には昨日の夜。
帰る時と全く同じような格好でヴァルダーが仕事をしていた。
一体いつ眠ったりしているのだろう? これでもかなり速い時間にやっていたと思うのだけれど……。
他に部屋にいるのは昨日の騎士とは違った人だ。
彼もやはり私を警戒している様だった。
「お仕事にきました」
「ああ。これを」
「はい」
私はヴァルダーの側に行く。
彼の顔を見ている事がバレないように気を付けながら観察する。
昨日かなり遅い時間まで仕事をしていたようなのに疲れた形跡はない。
「場所はそこだ」
「?」
「お前の席だ」
「ありがとうございます」
私は彼に差されている場所を見ると、一組の机とイスが置かれていた。
場所はヴァルダーの左斜め前辺りだろうか。
執務机とソファの丁度中間くらいだ。
(かなり立派だな……)
今まで使って来たどんな机やイスよりも立派な物に不安を覚えるけれど、どちらにしろ今はやるしかない。
椅子に座り自分の仕事をし始めると、渡された量が昨日よりも増えていることに気が付いた。
(枚数が増えてる……。内容は……そこまで変っていないみたいだけれど……)
私はそれから仕事を続けた。
時折刺さる騎士やヴァルダーの視線に気が付かない振りをしながらだ。
そして、その日も休憩時間もほとんどなく、ずっと仕事仕事仕事。
仕事以外していないのではないか。
そう思うほどに仕事しかしていなかった。
時間が遅くなってくると、ヴァルダーが部屋に戻れと言ってくるので私は戻る。
そんな生活を1週間は続けた。
私は1人部屋を貰えるとは思わなかった。
食事も奴隷に食べさせるとは思えないほどの豪華な物。
それに普通はさせて貰えない湯あみまでさせてくれると言われるのは何か裏があるようにしか思えない。
でも、今はそんなことに頭が回っている様子がなかった。
今日のことをしっかりと、ヴァルターの癖等をしっかりと思いだしていた。
「時折髪をかき上げる癖……。人を見る時に左手を見ている? でもどうして?」
あまり多くの時間をかけて見る訳にはいかなかったけれど、それでも、ある程度の情報を入手することは出来ていた。
と言っても使えるかどうか分からない癖ばかり。
それでも、左手から見るような人物であれば、右手にナイフ等を持っておく様にすれば、発見が数瞬でも遅れる。
そうなれば、暗殺の成功率も上がる。
何が役に立つか分からない。
だから、明日もまた同じ仕事が出来るようにと、少しの期間で暗殺を出来るように考えながら眠りにつく。
家族の事から逃げるように、彼女は思考を向けないようにしていた。
******
次の日の朝。彼女は日の出と共に起きていた。
窓はないが、感覚で朝だと分かる。
「朝……」
急いで起き、私は仕事用に貰った服に着替えた。
すると、昨日の年配のメイドがノックもしないで部屋に入ってくる。
「食事です。終わり次第我が主の元へ向かいなさい」
「はい。ありがとうございます」
「仕事です。礼は必要ありません」
メイドがぴしゃりと言って来る。
食事の乗ったお盆を部屋の机に置いてそのまま部屋を出ていく。
私と一瞬でもいたくないようだ。
しかし、仕事で命令された事は絶対に守るためなのか。
食事の量を減らされていたり、何かを盛られている様子は無かった。
私は食事を終えて部屋を出る。
そこには先ほどとは別のメイドが待っていた。
「ついてきなさい」
「はい」
私は彼女についてヴァルターの部屋に向かう。
メイドが中に入っていいか聞き、許可が出ると私に入るように促してくる。
私は一声かけてから中に入った。
「失礼します」
中には昨日の夜。
帰る時と全く同じような格好でヴァルダーが仕事をしていた。
一体いつ眠ったりしているのだろう? これでもかなり速い時間にやっていたと思うのだけれど……。
他に部屋にいるのは昨日の騎士とは違った人だ。
彼もやはり私を警戒している様だった。
「お仕事にきました」
「ああ。これを」
「はい」
私はヴァルダーの側に行く。
彼の顔を見ている事がバレないように気を付けながら観察する。
昨日かなり遅い時間まで仕事をしていたようなのに疲れた形跡はない。
「場所はそこだ」
「?」
「お前の席だ」
「ありがとうございます」
私は彼に差されている場所を見ると、一組の机とイスが置かれていた。
場所はヴァルダーの左斜め前辺りだろうか。
執務机とソファの丁度中間くらいだ。
(かなり立派だな……)
今まで使って来たどんな机やイスよりも立派な物に不安を覚えるけれど、どちらにしろ今はやるしかない。
椅子に座り自分の仕事をし始めると、渡された量が昨日よりも増えていることに気が付いた。
(枚数が増えてる……。内容は……そこまで変っていないみたいだけれど……)
私はそれから仕事を続けた。
時折刺さる騎士やヴァルダーの視線に気が付かない振りをしながらだ。
そして、その日も休憩時間もほとんどなく、ずっと仕事仕事仕事。
仕事以外していないのではないか。
そう思うほどに仕事しかしていなかった。
時間が遅くなってくると、ヴァルダーが部屋に戻れと言ってくるので私は戻る。
そんな生活を1週間は続けた。
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