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「お、ダイチ!昨日は大丈夫だったか?」
「おはようございます。健康は大事ですからね」
「おはよう、ダイチ君。元気?」
3人が現れると俺は彼らが救世主の様にも思えた。
「大丈夫だ!いや、大丈夫じゃない!ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」
「「「?」」」
俺は最近起きた夜中に唐突に聞こえる声について聞いてみた。何て説明していいか分からなくてほとんどありのまま起きたことについて話すだけだったが、彼らは考えてくれる。
「うーん。聞いたことねぇな」
「僕もないね」
「私も知らない」
「そう・・・」
3人とも知らないということはじいちゃん達に聞いてみた方がいいのだろうか。というかそうしないと怖くてこの島には居られない。
「あ、じゃあスイノコ様にお願いしてみるってのはどう?」
ミカが名案を思いついたというように提案してきた。
「スイノコ様?」
「ああ、そいつはいいな」
「そうですね。それがいいかもしれません」
「え、そのスイノコ様って何?なんかじいちゃんにも聞いた気がするけど」
確かこの島の守り神か何かだった気がする。でもわざわざお願いに行くのってどうなんだ?
「スイノコ様はこの島の守り神でいつも私達の事を見守っててくださるんだから。島の中心に神社があったから一緒に行きましょう?」
「それがいいぞ。正直声が何かは分かんねえがスイノコ様なら助けてくれるかもしれねぇ」
「僕は見たことないですけど・・・やらないよりはやった方がいいのかもしれません」
「何でそこまでスイノコ様のいいことがあるって言えるの?」
都会の方だとあんまりそういったことに頓着しなかったから何だか不思議だ。
「私達も何かいいことあったって言われないんだけどね。ただ大人の人達は皆言うよね」
「言うな」
「言いますね」
「そ、そこまで言われたら行くしかないのか?」
「そうよ、どうせなら町も案内してあげたいし、一緒に行きましょう?」
ミカにやたら強く押されたので行くことになった。
俺達4人は車通りもないので1列に広がって歩く。
「そういや3人の家ってどこら辺にあるんだ?いっつも海で遊んでたから知らないんだよな」
「私達の家はもっと西寄りなの。私の家が一番東側にあるからそこで集まってるわ」
「そうだぜ、ミカの家には漫画がたっくさんあるんだぜ!少女漫画だけど・・・」
「そうですね。僕達の場合だとお小遣いは遊び道具とお菓子に消えちゃいますからね」
「へーそうだったんだ。ん?お菓子好きなら今度買いに行こうぜ!」
「それが・・・タクミがもう今月分のお小遣いを使い切ってしまってるんですよ」
「し、仕方ねぇだろ!あの時しか買えなかったんだから!」
「そんな買い方しているから直ぐにお金が無くなるんですよ。僕みたいにちゃんと計画的に使わないと」
「毎日あんな少量づつ食べていくなんて満足出来ねぇよ」
「タクミこそあんなに一気に食べたら味が分からないじゃないですか」
二人はいつの間にかそんな会話をして盛り上がっていた。こうやって話しながら町を歩き回るのも楽しいもんだな。きっとそれは皆同じ意見だったに違いない。
そんなことを思いながら歩いていると神社に辿り着く。
「あ、あそこだ」
ミカが声を上げたので俺はそっちの方を向く。タクミとケンはちらりと見ただけでしゃべることは止めなかった。
「ミカ達は結構来た事あるの?」
「そうだね。島のイベントをやる時は大抵ここに集合だったりするしからね。二人も来すぎてあんまりありがたみは湧かないでしょ」
あはは、とミカは苦笑した。
「まぁ、何だかんだで良くここは通るしこっちにいる間はよく来るからな」
「ですね。いつも見かけてると何とも・・・」
「そんなもんか」
彼らも親に言われてるからそういう風に思ってるんだなと納得した。
そして俺達は中に入る。真っ赤な鳥居は最近塗り直されたばかりの様で汚れなどほとんど見当たらない。鳥居をくぐるとそこは小さめの神社があった。目の前の正面には賽銭箱が置いてあってその上にはガラガラ鳴らす物が置いてある。右側には神社の人達が住む場所なのだろうか?犬が繋がれていた。左側には手を洗う場所があったが今回は海に行ってきたから大丈夫だろう。
たったそれだけしかない小さな神社だった。
「それじゃあ早速お願いしましょ」
「あ、俺金持ってくるの忘れた」
「じゃあ今回だけよ?」
ミカが財布から5円を取り出し俺にくれた。
「あ、ありがとう」
「今度ちゃんと返してね?」
「う、うん」
「ミカ、俺にも金貸してくんねぇか?」
「ダメよ。タクミは直ぐに使っちゃうでしょう?」
「大丈夫、小遣いが入ったら直ぐに返すから」
タクミが将来借金まみれになりそうなことを言っていた。
俺達はそのまま賽銭箱の前まで来てガラガラを必要以上に長く振ってからお金を入れる。
(スイノコ様助けてください。お願いします。とても困っています)
俺は一心不乱でスイノコ様に祈り続けた。
「そろそろ行こうぜ。いつまでお祈りしてるんだよ」
「そうですよ。もう十分お願いしたでしょう?」
「しつこい男は嫌われちゃうよ?」
「・・・」
そんな声が聞こえたので祈るのを止めた。そして下に降りる前に建物の中身をちらりと見て思わず二度見した。
「え?」
「どうした?」
タクミの言葉でそちら向いて彼らを呼ぶ。
「なあ!あれって何?なんであんなのがあるの?」
俺がそう叫ぶと3人は渋々と来てくれた。
「あれってどれの事だよ」
「あれに決まってるだろ!あの井戸みたいなやつのことだよ!」
井戸は水を汲む場所のはずだ。確かに雨水とかが入らないように屋根とかがあることはあるが今回の様に建物の中に入っているのは見たことがない。
「何って別に普通だろ?」
「ですねぇ。特におかしいとは思えませんけど・・・」
「何が変なの?」
「俺がおかしいのか?」
今まで行ったことのある神社には建物の中に井戸があるなんてことはなかった。ただしそれは俺のいる地方だけでここではそれが常識なのか?と思ってしまう。
そうだ、それがここの常識なのかもしれない。だって俺はまだ10才だし、そんなに神社に詳しい訳でもないんだから。
「あれって何に使うか知ってる?」
それでも確認の為に聞いてみる。
「それがかぁちゃん教えてくれねぇんだよな。おめぇが使うことは一生ねぇから気にすんなって。あ、東の海に繋がってるって聞いたことはあるけど」
「僕も知らないんですよねぇ。母は大事な日に使うって事だけを教えてくれたんですが」
「・・・私も詳しい事は知らない。でも、大きくなったら私は使うかもって母さんが言ってた」
それぞれに教えられてるのが違うのか。といってもミカが大きくなったら使うかもしれないだけでそれ以外の情報はない。つまり分からない。
「じゃあわかんないよな」
「そうだぜ。気にするだけ無駄さ」
という訳で考えるのを止めた。帰ったら母さん達に聞いてみようと決める。
それからは3人で町の中を歩き回った。色とりどりの看板が一杯並ぶ通りは昼間なのに一切の電気がついていなくて不思議だった。電気を通して光らせたら綺麗だろうなと思う。
それからじいちゃんには止められていた漁師の港も行ってみた。そこではタクミが仲良さそうに漁師のおっちゃん達と話している。
「なんでタクミはあんなに仲がいいんだ?」
「ああ、知らないんでしたね。タクミは将来漁師になりたいんですよ。それでここに来ては修行させてくれって言ってて。気が付いたら仲良くなってましたね」
「へーもう将来の夢を決めてるのか」
「まぁ、タクミの場合は分かりませんが」
「?」
「あいつは結構勢いでやっちゃうことがあるでしょう?だからもしかしたらって思うんですよ。それにしては結構長いこと通ってますけど」
「そうなのか」
将来のことなんて考えたこともなかった。一日中友達とゲームして、競い合って、学校の勉強もそこそこにやっているだけだ。
一人悩んでいるとタクミが近寄ってきていた。
「よう。腹減ってねぇか?美味い魚食わしてくれるってよ!」
タクミが漁師の人達の方を差すと漁師の人が大きな魚を掲げてくれる。日焼けをした体に太い腕、頭に巻いたタオルがよく似合っていた。きっとタクミはそんな力強さに憧れたのではないかと思う。
それから俺達は魚を食べさせてもらって、別れることとなった。
「昼からはどうする?」
俺は彼らに問いかける。
「あー俺はこの後漁に連れてってくれるらしいからいけねぇんだ。悪いな」
「僕もこの後用事あって・・・」
「私も今日は母さんの手伝いをしないといけないの」
「皆そろいもそろってなのか・・・?」
「悪いな・・・」
「すみません」
「ごめんね」
「いや、用事があるんなら仕方ないよ・・・」
折角町の案内とかしてもらえると思ったのに。って文句を言っても用事が無くなる訳じゃない。
「じゃあまた明日な!」
「おう!」
「はい、また遊びましょう」
「また明日ね」
俺は3人と別れて家路に着いた。
そしてこれからのことを考える。これからどうしようか・・・。正直1人で海で泳ぐのはもう飽きちゃったし、やっぱり宿題をするか・・・。でも家でするのはあの声がするかもしれないし・・・。
今日の午後のやることを考えながら悶々と家に帰った。
「おはようございます。健康は大事ですからね」
「おはよう、ダイチ君。元気?」
3人が現れると俺は彼らが救世主の様にも思えた。
「大丈夫だ!いや、大丈夫じゃない!ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」
「「「?」」」
俺は最近起きた夜中に唐突に聞こえる声について聞いてみた。何て説明していいか分からなくてほとんどありのまま起きたことについて話すだけだったが、彼らは考えてくれる。
「うーん。聞いたことねぇな」
「僕もないね」
「私も知らない」
「そう・・・」
3人とも知らないということはじいちゃん達に聞いてみた方がいいのだろうか。というかそうしないと怖くてこの島には居られない。
「あ、じゃあスイノコ様にお願いしてみるってのはどう?」
ミカが名案を思いついたというように提案してきた。
「スイノコ様?」
「ああ、そいつはいいな」
「そうですね。それがいいかもしれません」
「え、そのスイノコ様って何?なんかじいちゃんにも聞いた気がするけど」
確かこの島の守り神か何かだった気がする。でもわざわざお願いに行くのってどうなんだ?
「スイノコ様はこの島の守り神でいつも私達の事を見守っててくださるんだから。島の中心に神社があったから一緒に行きましょう?」
「それがいいぞ。正直声が何かは分かんねえがスイノコ様なら助けてくれるかもしれねぇ」
「僕は見たことないですけど・・・やらないよりはやった方がいいのかもしれません」
「何でそこまでスイノコ様のいいことがあるって言えるの?」
都会の方だとあんまりそういったことに頓着しなかったから何だか不思議だ。
「私達も何かいいことあったって言われないんだけどね。ただ大人の人達は皆言うよね」
「言うな」
「言いますね」
「そ、そこまで言われたら行くしかないのか?」
「そうよ、どうせなら町も案内してあげたいし、一緒に行きましょう?」
ミカにやたら強く押されたので行くことになった。
俺達4人は車通りもないので1列に広がって歩く。
「そういや3人の家ってどこら辺にあるんだ?いっつも海で遊んでたから知らないんだよな」
「私達の家はもっと西寄りなの。私の家が一番東側にあるからそこで集まってるわ」
「そうだぜ、ミカの家には漫画がたっくさんあるんだぜ!少女漫画だけど・・・」
「そうですね。僕達の場合だとお小遣いは遊び道具とお菓子に消えちゃいますからね」
「へーそうだったんだ。ん?お菓子好きなら今度買いに行こうぜ!」
「それが・・・タクミがもう今月分のお小遣いを使い切ってしまってるんですよ」
「し、仕方ねぇだろ!あの時しか買えなかったんだから!」
「そんな買い方しているから直ぐにお金が無くなるんですよ。僕みたいにちゃんと計画的に使わないと」
「毎日あんな少量づつ食べていくなんて満足出来ねぇよ」
「タクミこそあんなに一気に食べたら味が分からないじゃないですか」
二人はいつの間にかそんな会話をして盛り上がっていた。こうやって話しながら町を歩き回るのも楽しいもんだな。きっとそれは皆同じ意見だったに違いない。
そんなことを思いながら歩いていると神社に辿り着く。
「あ、あそこだ」
ミカが声を上げたので俺はそっちの方を向く。タクミとケンはちらりと見ただけでしゃべることは止めなかった。
「ミカ達は結構来た事あるの?」
「そうだね。島のイベントをやる時は大抵ここに集合だったりするしからね。二人も来すぎてあんまりありがたみは湧かないでしょ」
あはは、とミカは苦笑した。
「まぁ、何だかんだで良くここは通るしこっちにいる間はよく来るからな」
「ですね。いつも見かけてると何とも・・・」
「そんなもんか」
彼らも親に言われてるからそういう風に思ってるんだなと納得した。
そして俺達は中に入る。真っ赤な鳥居は最近塗り直されたばかりの様で汚れなどほとんど見当たらない。鳥居をくぐるとそこは小さめの神社があった。目の前の正面には賽銭箱が置いてあってその上にはガラガラ鳴らす物が置いてある。右側には神社の人達が住む場所なのだろうか?犬が繋がれていた。左側には手を洗う場所があったが今回は海に行ってきたから大丈夫だろう。
たったそれだけしかない小さな神社だった。
「それじゃあ早速お願いしましょ」
「あ、俺金持ってくるの忘れた」
「じゃあ今回だけよ?」
ミカが財布から5円を取り出し俺にくれた。
「あ、ありがとう」
「今度ちゃんと返してね?」
「う、うん」
「ミカ、俺にも金貸してくんねぇか?」
「ダメよ。タクミは直ぐに使っちゃうでしょう?」
「大丈夫、小遣いが入ったら直ぐに返すから」
タクミが将来借金まみれになりそうなことを言っていた。
俺達はそのまま賽銭箱の前まで来てガラガラを必要以上に長く振ってからお金を入れる。
(スイノコ様助けてください。お願いします。とても困っています)
俺は一心不乱でスイノコ様に祈り続けた。
「そろそろ行こうぜ。いつまでお祈りしてるんだよ」
「そうですよ。もう十分お願いしたでしょう?」
「しつこい男は嫌われちゃうよ?」
「・・・」
そんな声が聞こえたので祈るのを止めた。そして下に降りる前に建物の中身をちらりと見て思わず二度見した。
「え?」
「どうした?」
タクミの言葉でそちら向いて彼らを呼ぶ。
「なあ!あれって何?なんであんなのがあるの?」
俺がそう叫ぶと3人は渋々と来てくれた。
「あれってどれの事だよ」
「あれに決まってるだろ!あの井戸みたいなやつのことだよ!」
井戸は水を汲む場所のはずだ。確かに雨水とかが入らないように屋根とかがあることはあるが今回の様に建物の中に入っているのは見たことがない。
「何って別に普通だろ?」
「ですねぇ。特におかしいとは思えませんけど・・・」
「何が変なの?」
「俺がおかしいのか?」
今まで行ったことのある神社には建物の中に井戸があるなんてことはなかった。ただしそれは俺のいる地方だけでここではそれが常識なのか?と思ってしまう。
そうだ、それがここの常識なのかもしれない。だって俺はまだ10才だし、そんなに神社に詳しい訳でもないんだから。
「あれって何に使うか知ってる?」
それでも確認の為に聞いてみる。
「それがかぁちゃん教えてくれねぇんだよな。おめぇが使うことは一生ねぇから気にすんなって。あ、東の海に繋がってるって聞いたことはあるけど」
「僕も知らないんですよねぇ。母は大事な日に使うって事だけを教えてくれたんですが」
「・・・私も詳しい事は知らない。でも、大きくなったら私は使うかもって母さんが言ってた」
それぞれに教えられてるのが違うのか。といってもミカが大きくなったら使うかもしれないだけでそれ以外の情報はない。つまり分からない。
「じゃあわかんないよな」
「そうだぜ。気にするだけ無駄さ」
という訳で考えるのを止めた。帰ったら母さん達に聞いてみようと決める。
それからは3人で町の中を歩き回った。色とりどりの看板が一杯並ぶ通りは昼間なのに一切の電気がついていなくて不思議だった。電気を通して光らせたら綺麗だろうなと思う。
それからじいちゃんには止められていた漁師の港も行ってみた。そこではタクミが仲良さそうに漁師のおっちゃん達と話している。
「なんでタクミはあんなに仲がいいんだ?」
「ああ、知らないんでしたね。タクミは将来漁師になりたいんですよ。それでここに来ては修行させてくれって言ってて。気が付いたら仲良くなってましたね」
「へーもう将来の夢を決めてるのか」
「まぁ、タクミの場合は分かりませんが」
「?」
「あいつは結構勢いでやっちゃうことがあるでしょう?だからもしかしたらって思うんですよ。それにしては結構長いこと通ってますけど」
「そうなのか」
将来のことなんて考えたこともなかった。一日中友達とゲームして、競い合って、学校の勉強もそこそこにやっているだけだ。
一人悩んでいるとタクミが近寄ってきていた。
「よう。腹減ってねぇか?美味い魚食わしてくれるってよ!」
タクミが漁師の人達の方を差すと漁師の人が大きな魚を掲げてくれる。日焼けをした体に太い腕、頭に巻いたタオルがよく似合っていた。きっとタクミはそんな力強さに憧れたのではないかと思う。
それから俺達は魚を食べさせてもらって、別れることとなった。
「昼からはどうする?」
俺は彼らに問いかける。
「あー俺はこの後漁に連れてってくれるらしいからいけねぇんだ。悪いな」
「僕もこの後用事あって・・・」
「私も今日は母さんの手伝いをしないといけないの」
「皆そろいもそろってなのか・・・?」
「悪いな・・・」
「すみません」
「ごめんね」
「いや、用事があるんなら仕方ないよ・・・」
折角町の案内とかしてもらえると思ったのに。って文句を言っても用事が無くなる訳じゃない。
「じゃあまた明日な!」
「おう!」
「はい、また遊びましょう」
「また明日ね」
俺は3人と別れて家路に着いた。
そしてこれからのことを考える。これからどうしようか・・・。正直1人で海で泳ぐのはもう飽きちゃったし、やっぱり宿題をするか・・・。でも家でするのはあの声がするかもしれないし・・・。
今日の午後のやることを考えながら悶々と家に帰った。
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