幸せの島

土偶の友

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 その後俺は駄菓子屋に行き、かっこ良さそうな絵柄の物を買って砂浜へと急いだ。

 ちゃりちゃりと小銭の音を鳴らしながら砂浜へと飛び出る。



「ってまだ来てねえよな・・・」



 急いで来たはいいもののまだタクミ達は来ていなかった。そういえば時間とか決めずに別れちゃったなと思い出す。



「せっかくだし練習でもするか」



 メンコは何枚か売っていたので良さそうな絵柄とかも練習用で買っていた。それを砂浜に置いて何度も何度も叩きつけ練習した。

 1人でも熱中出来るようでずっとやっていた。



「お、いたいた。おーいダイチー!」



 1人で熱中してどれくらい経ったのか分からない。30分くらいだろうか。1人で練習している所にタクミから声がかかった。



「おー!やっと来たー!」



 俺は地面に置いていたメンコを拾うと急いで彼の元へと走り出した。



「あれ?3人一緒?」



 タクミの元に行くとケンとミカも一緒にだった。別れる時も一緒だったから気になっていたがどうして?



「ああ、言ってなかったか。俺達の母親が仲良しでそれで俺達も良く一緒にいるんだよ」

「ご飯まで一緒なのか?」

「ほとんどそうだな」

「ですね」

「だねー」

「いいなあ」



 思わず思ってしまったことが出てしまった。



「そんなにいいもんでもねぇよ。ずっと一緒だとあんまり話すこと無くなっちまうしな?」

「それでも一緒にいるのはなんでなんでしょうね?」

「3人でいると居心地がいいからなー?」



 3人は何でだろうと顔を見合わせている。



「まぁ、いいじゃねぇか。ちゃんとメンコは買ってきたのか?」



 タクミがまたぼこぼこにしてやるといった顔をしている。



「ちゃんと買ってきたぜ!今度は覚悟しろよ!」

「俺が勝つって決まってんだよ」

「やってみなくちゃ分かんないだろ!」



 そんなことを話しながら再びメンコを始めた。



「くそーやっぱりまだまだか・・・」



 それから何戦しても敗北が増えるだけだった。



「いつでも勝負は受けてやるよ」

「ダイチ君もだいぶ上手くなってますよ」

「そうだよ、きっと今度は勝てるよ!」



 3人は仲が良くていいやつらだ。こんな奴らと友達になれたことが嬉しかった。

 それからは森に行ってかくれんぼもやったりした。学校でやった時は子供っぽいとしか思わなかったけれど、何だかんだで楽しかった。



「じゃあまた明日ねー!」

「また遊びましょう!」

「今度は勝ってねー!」



 3人と明日の約束をしてから家に帰った。家に帰ると母がラフな格好でどこかに行くところだった。玄関で彼女は立ち止まり話しかけてくる。



「ただいまー!」

「おーお帰り。どうだった?」

「すっげえ楽しかった!」

「そっか良かった良かった。誰の子・・・は分かんなくても名前は分かる?」

「タクミとケンとミカだよ!」

「あー礼香達のとこの子か。じゃあいい子達だね」

「うん!また明日も約束したんだ!」



 それを聞いた母は笑顔になって俺の頭をくしゃくしゃにした。



「そっか。大事にしなさい」

「うん!」

「じゃあ私はちょっと出掛けてくるからいい子にしてるんだぞ?」

「またどこか行くの?」

「友達とねー。私これでも友達は多いんだー。じゃあね」

「いってらっしゃーい」



 母を見送り家へと入る。そして居間に行くと夕飯が準備されていた。



「ただいま!」

「おう、お帰り、メンコはどうだった?」

「まだ勝てないけど楽しかった!後でコツとか教えて!」

「いいぞ。これでも昔はメンコで鳴らした腕があるからな」

「まぁまぁそれは何十年前のお話かしら?お帰りなさい。夕食は少し待っていてね」

「うん!」

「これもスイノコ様のお陰だなぁ」

「スイノコ様?」



 祖父から突然聞きなれない言葉が聞こえた。そのため不思議に思って聞き直す。



「ああ、この島の守り神でな。この島にいる人を幸せにしてくれるんだ。だからおめぇも感謝しておけ」

「分かった!ありがとうスイノコ様!」

「ふふふ、スイノコ様も喜んでいることでしょう」

「だなぁ」



 その日はそうして過ぎていき奇妙な声は聞こえなかった。



******



 それから数日は実に楽しかった。あの3人と砂浜で会い、一緒に遊んだり泳いだり一日のほとんどの時間を共に過ごしていたと思う。

 だけどある時からそれに変化が起きた。それはきっと夜に掛かってきた友人からの電話だったと思う。



「はぃもしもし?」

「よう大地久しぶり。元気にしてるか?」

「達也!久しぶりだな!どうしたんだよ!」



 それはいつも良く遊んでいる学校の友達の達也だった。彼とは一緒に買うゲームも相談した仲で、いつも一緒に遊んでいた。



「ゲーム持ってけないって言ってたから暇そうにしてると思ってな。電話してやったんだよ」

「そうなんだよー。俺、ゲーム持ってこれなくてさー。母ちゃんホントにひでーよー」

「でもそっちはどうなんだよ?なんか面白い物とかないのか?」

「それがさ、こっちの友達と仲良くなって今はメンコで遊んでるんだけど、これが意外に面白くってさ!」

「メンコってあの札を叩きつける奴?」

「そうそう、一緒にいるやつがまた強くてさー。なかなかかてねぇんだけど遂にこの間一勝できて、あの時の顔を達也にも見せてやりたかったぜ!」

「・・・ふーん。そっちでも楽しそうにしてるじゃん」

「田舎って思ってたけど中々いい所だぜ!海も綺麗で冷たいしさ!」

「そっかーこっちはメダルほぼコンプしたもんねー。後2枚か3枚位だったかな?かなり進んでるぜー」

「あ・・・」



 その言葉を聞いて唐突にゲームがやりたくなってきてしまった。



「しかもなんか裏面みたいなのを発見してさ。それがなんか難しいのなんのって。だけどやりがいがあってそれが楽しいんだよなあ」

「・・・」



 達也の言葉でどんどんと都会の記憶が湧いて出てくる。ゲームやクーラー他にも都会でしか味わえないものが頭の中を駆け巡る。



「大地?どうした?」

「何でもない。何でもないけどハンバーガー食べてえ」

「唐突にどうしたんだ。それなら昨日食ったぞ?」

「クッソ帰ったらそっこーで進めて逆転してやるからな!覚えてろ!」

「お前の知らない強いパーツとかもあるけど勝てるのかなー?」

「まじ潰す!」

「待ってるぜ、さっさと帰って来いよ」



 そんなことを話してその日は終わった。


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