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4章
64話 治療と宝物
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自分自身を治せなかった日から数日。
僕は、師匠と一緒に町の人達の治療をしていた。
部屋は個室で、僕達と患者2人以外には誰もいない。
ベッドには男女2人の患者が寝かせられ、苦痛にうめき声をあげている。
「ぐ……うぅ……」
「痛い……」
「魂に安らぎを、体に平穏を『眠りへ誘え』」
「すぅ……すぅ……」
仮面を被った師匠が魔法を使い、2人を眠らせる。
「エミリオ。頼む」
「はい。其の体は頑強なり、其の心は奮い立つ。幾億の者よ立ち上がれ『体力増強』」
今度は僕が2人に魔法を使い、体力を向上させる。
「よし。いいぞエミリオ。これから中に入る」
「はい」
師匠の素早い手つきを参考にしながら、僕も師匠が入らない方の患者に入っていく。
最初こそ一緒に治療をしていたが、それでは手が足りない。
ということで僕も患者の中に入って、治療をするようになっていた。
師匠についてもらって僕だけで治療する。
次からは治療が終わった後に師匠が確認をしてくれる。
そんな風にやって行き、今では1人でやれるようになっていた。
こうやって実戦で魔法を使う。
それだけで練度が桁違いに上がっていくのが分かる。
その例であげると、3重魔法だ。
最初は発動させるだけで頭が割れるように痛かった。
けれど、今では『体力増強』『生命憑依』と体内で魔物を倒すようの魔法、『氷雪剣生成』の同時起動を難なくこなせるようになっている。
「あそこか」
僕は患者の体内を移動して、敵を見つける。
「シュロロロロロロ!!!」
敵は患者の体内を攻撃するのに忙しいらしい。
不意をついて出来るだけ早く処理する。
それも一流の回復術師に求められる力だ。
「いけ」
僕は『氷雪剣生成』に魔力を注ぎ変形させる。
氷の剣は何百にも枝分かれを繰り返し、ほとんど全ての敵を串刺しにする。
「シュロロロロロロ!!??」
「一匹逃がしたか」
それでも、この魔法を使い始めてまだ数日。
少し使い方が甘い。
想像では完璧に作れるようになっていても、どうしても漏れ出てしまうことはある。
「もっと力をつけないと……」
残った一体を串刺しにしててからまた次の場所に向って飛び立つ。
1人でどうしたら良いのか、どうしたらもっと効率的に、早く敵を倒せるのかを考えながら治療を進めていく。
「こんなものかな?」
体内をほとんど周り、敵を排除しつくして元の体に戻る。
当然、氷の剣は出来るだけ小さくして患者に害がないように。
僕は目が覚めるのを感じた。
「ふぅ……」
「お疲れ。大分早くなったじゃないか」
「師匠……いえ、まだまだです。師匠の様に早くなれたらいいのですが……」
「なに。普通の2級回復術師だったらとっくに越えている」
「ありがとうございます」
師匠も珍しくお世辞を言うんだと思いつつ、これからのことに想像する。
病の進行は何とか食い止めていた。
けれど、未だに発生し続けていて、その原因が分かっていない。
だから患者は減るけれど、ついでに増えてもいるので完璧に治し切ることができないのだ。
「むぅ……」
「そら、患者を起こすぞ。いいか?」
「あ、は、はい! すいません」
「気にするな。思考することは大切だ。だが……患者のケアを最優先にな?」
「はい!」
それから師匠は魔法を解いて2人を起こす。
「う……うぅ……ぅ?」
「ぐぅ……ぁ……ぅ?」
男女は苦しそうな表情をしながらも目を覚まし、周囲を見回す。
「大丈夫ですか? 痛い所はありませんか?」
「え……ええ。私は……大丈夫だけれど……」
「俺も……全く痛くない……」
2人の患者さんはそう言って、患者同士で見つめ合う。 え?
「無事で良かった!」
「君もだよ!」
2人はそう言ってお互いに抱き締め合う。
2人は……そういう関係だったのか。
などと思いながら2人を見ていると、唐突にヴィーの顔が頭をよぎる。
(そういえば……全然連絡とれてないな……忙しかったけど……それで手紙を送らない。っていうのも変だし……明日にでも送ろうかな)
今は町が結構大変なことになっているので、楽しい事は書けないかもしれない。
でも、何でもいいからヴィーに送りたい。
そう思った。
僕は1人そんな事を考えていると、患者の2人がいつの間にか僕の前に立っていた。
「あの……お弟子さん。本当にありがとうございます!」
「俺達……もう……ダメかと思っていて……回復術師の方々って本当に凄いんですね! こんなにすぐに治るとは思いませんでした!」
「え、ええ。お大事に」
「はい! いつでもこの町にいらしてください!」
「いつもはもっとにぎやかでいい町なんです!」
2人が幸せそうに戻っていく姿を見て、僕は……少しだけ満たされた。
「この瞬間がいいと思うだろう?」
「師匠……」
「回復術師の技術は高度だ。だからよく……貴族に囲われるがな。そういう事をよしとしない。ただ回復するべきモノだけを回復するために、放浪する回復術師もいる。級を持つ者持たない者。それぞれいるが、彼らは今の顔を見るために過ごしている事が多い」
「なるほど……」
「それはそれでいいが、今は時間は有限だ。出来る限りやるべき事をやるぞ」
「はい!」
それからは午前中一杯を使って治療を続けた。
******
「うーん……どうしようかな……」
時刻はかなり遅い時間。
その時に、僕は自室の机でうなっていた。
「ヴィーになんて書こう……」
今日は絶対にヴィーに手紙を送るぞ。
そう決めたは良いものの、中々いい内容が思いつかない。
「うーん。決めた」
結構悩んだけれど、今起きている状況……はあんまり多くは書けない……っていうのか、書いても悲しくなってしまうだけだ。
だから、出来るだけ楽しくなりそうな話や、ヴィーに会いたいです。
という感じの事を書いておいた。
「こんなものでいいかな。初めての友達に送るのはこれでいいのかわかんないけど……」
何かダメな事があったらヴィーならきっと教えてくれる。
そんな軽い気持ちで出すことにした。
「よし。これでいいかな。後はこれを母さんに頼んで……」
そう思って部屋を出て、自室に向う。
その時に、たまたま師匠に出会った。
「師匠。こんな夜遅くにどうしたんですか?」
「ああ、エミリオ。中央に手紙を送りたくてな。夫人に会いに行くところだ」
「僕と一緒ですね」
「エミリオもか?」
「はい。僕はヴィー……ゴルーニ侯爵家のヴィクトリアに手紙を送ろうかと」
「ふむ……その手紙におれの手紙を混ぜてもらってもいいか?」
「え? いいと思いますけど……みられると思いますよ? いいんですか?」
「ああ、構わない。むしろ見せて欲しいくらいだ」
「それで良ければ……」
師匠は1枚の便箋を渡してくる。
僕はそれを受け取った。
「それではこれは母さんに渡しておきますね」
「ああ、頼む。良い夜を」
「はい。お休みなさい」
それから僕は母さんの部屋に行くと、母さんはかなり遅い時間だと言うのに執務室に座って仕事をしていた。
目の下には隈が出来ていて、かなり辛そうだ。
「母さん。大丈夫?」
「エミリオ……私は大丈夫よ。どうしたの?」
「ヴィーに手紙を出したくって……。それで出してもいいかな? 師匠の手紙も一緒に入っているんだけど……」
「……ええ。構わないわ」
「ほんと!? ありがとう母さん!」
母さんは優しく微笑むと、手紙を預かってくれた。
「出すのは明日よ。流石に今から出すのは大変だからね」
「うん。それでもいい。というか、母さん……今日は一緒に寝れるの?」
「ええ、後から行くわ。先に寝ていて」
「分かった……」
僕はそれだけ言うと、リーナが眠る母さんの部屋に向かう。
リーナを起こさないように、そっと部屋に入ると、ベッドでもぞもぞと動く何かがいた。
なんだ? と思って見ていると、リーナがゆっくりと起きてくる。
「リーナ。どうしたの? もう寝ないと……」
「ううん。ダメ。リーナ起きてる」
「どうして……」
「お母さん疲れてる。リーナがごほん読んであげるの」
「リーナ……」
リーナは眠そうな目を擦りながらも、頭をカクンカクンさせながらも意地でも起き続けるつもりのようだ。
僕もそんなリーナの思いを大事に思って、一緒に起きていることに決めた。
「分かったよリーナ。僕も起きているから、一緒に待って居よう?」
「うん……そうしてくれると……嬉しい。お兄ちゃん……」
それから待つこと1時間。
リーナが本格的に落ちそうになった所で、母さんがそっと入ってきた。
「リーナ。起きて」
僕がリーナを揺すると、ビクンと体を跳ねさせて母さんの方を見る。
母さんもまさか僕達が起きているとは思って居なかったのか驚いた顔で見ていた。
「2人とも……一体どうしたの?」
「うん。リーナが……起きてるって言うから」
「リーナ。どうしたのかしら?」
「うん……リーナ。母さんがゆっくり休めるように……ごほんを読んであげようと思って……」
そう言ってリーナはベッドのふちにおいてあった本を手に取る。
「リーナ……」
「お母さん疲れてるの分かるから……リーナが少しでも……力になってあげられたらって……」
リーナは今にも寝てしまいそうだけれど、母さんはリーナに近付くと優しく抱き締める。
「ありがとうリーナ。貴方の気持ちは……とっても嬉しいわ。その気持ちだけで……母さんは元気になれる。疲れも全部飛んでいくわ」
「ほんと……う?」
「ええ、本当よ。だから……一緒に寝ましょう。さ、エミリオも一緒よ」
「うん」
母さんは涙声になりながら明かりを消す。
「2人とも……ありがとう……本当に……その気持ちだけで……私は……生きていられるわ。貴方達がいるから……私は頑張れるの」
「うん……リーナが……ついてるからね……」
「ええ、私の大切な子達……」
僕は母さんに抱き締められる温かさを感じながら、眠りについた。
僕は、師匠と一緒に町の人達の治療をしていた。
部屋は個室で、僕達と患者2人以外には誰もいない。
ベッドには男女2人の患者が寝かせられ、苦痛にうめき声をあげている。
「ぐ……うぅ……」
「痛い……」
「魂に安らぎを、体に平穏を『眠りへ誘え』」
「すぅ……すぅ……」
仮面を被った師匠が魔法を使い、2人を眠らせる。
「エミリオ。頼む」
「はい。其の体は頑強なり、其の心は奮い立つ。幾億の者よ立ち上がれ『体力増強』」
今度は僕が2人に魔法を使い、体力を向上させる。
「よし。いいぞエミリオ。これから中に入る」
「はい」
師匠の素早い手つきを参考にしながら、僕も師匠が入らない方の患者に入っていく。
最初こそ一緒に治療をしていたが、それでは手が足りない。
ということで僕も患者の中に入って、治療をするようになっていた。
師匠についてもらって僕だけで治療する。
次からは治療が終わった後に師匠が確認をしてくれる。
そんな風にやって行き、今では1人でやれるようになっていた。
こうやって実戦で魔法を使う。
それだけで練度が桁違いに上がっていくのが分かる。
その例であげると、3重魔法だ。
最初は発動させるだけで頭が割れるように痛かった。
けれど、今では『体力増強』『生命憑依』と体内で魔物を倒すようの魔法、『氷雪剣生成』の同時起動を難なくこなせるようになっている。
「あそこか」
僕は患者の体内を移動して、敵を見つける。
「シュロロロロロロ!!!」
敵は患者の体内を攻撃するのに忙しいらしい。
不意をついて出来るだけ早く処理する。
それも一流の回復術師に求められる力だ。
「いけ」
僕は『氷雪剣生成』に魔力を注ぎ変形させる。
氷の剣は何百にも枝分かれを繰り返し、ほとんど全ての敵を串刺しにする。
「シュロロロロロロ!!??」
「一匹逃がしたか」
それでも、この魔法を使い始めてまだ数日。
少し使い方が甘い。
想像では完璧に作れるようになっていても、どうしても漏れ出てしまうことはある。
「もっと力をつけないと……」
残った一体を串刺しにしててからまた次の場所に向って飛び立つ。
1人でどうしたら良いのか、どうしたらもっと効率的に、早く敵を倒せるのかを考えながら治療を進めていく。
「こんなものかな?」
体内をほとんど周り、敵を排除しつくして元の体に戻る。
当然、氷の剣は出来るだけ小さくして患者に害がないように。
僕は目が覚めるのを感じた。
「ふぅ……」
「お疲れ。大分早くなったじゃないか」
「師匠……いえ、まだまだです。師匠の様に早くなれたらいいのですが……」
「なに。普通の2級回復術師だったらとっくに越えている」
「ありがとうございます」
師匠も珍しくお世辞を言うんだと思いつつ、これからのことに想像する。
病の進行は何とか食い止めていた。
けれど、未だに発生し続けていて、その原因が分かっていない。
だから患者は減るけれど、ついでに増えてもいるので完璧に治し切ることができないのだ。
「むぅ……」
「そら、患者を起こすぞ。いいか?」
「あ、は、はい! すいません」
「気にするな。思考することは大切だ。だが……患者のケアを最優先にな?」
「はい!」
それから師匠は魔法を解いて2人を起こす。
「う……うぅ……ぅ?」
「ぐぅ……ぁ……ぅ?」
男女は苦しそうな表情をしながらも目を覚まし、周囲を見回す。
「大丈夫ですか? 痛い所はありませんか?」
「え……ええ。私は……大丈夫だけれど……」
「俺も……全く痛くない……」
2人の患者さんはそう言って、患者同士で見つめ合う。 え?
「無事で良かった!」
「君もだよ!」
2人はそう言ってお互いに抱き締め合う。
2人は……そういう関係だったのか。
などと思いながら2人を見ていると、唐突にヴィーの顔が頭をよぎる。
(そういえば……全然連絡とれてないな……忙しかったけど……それで手紙を送らない。っていうのも変だし……明日にでも送ろうかな)
今は町が結構大変なことになっているので、楽しい事は書けないかもしれない。
でも、何でもいいからヴィーに送りたい。
そう思った。
僕は1人そんな事を考えていると、患者の2人がいつの間にか僕の前に立っていた。
「あの……お弟子さん。本当にありがとうございます!」
「俺達……もう……ダメかと思っていて……回復術師の方々って本当に凄いんですね! こんなにすぐに治るとは思いませんでした!」
「え、ええ。お大事に」
「はい! いつでもこの町にいらしてください!」
「いつもはもっとにぎやかでいい町なんです!」
2人が幸せそうに戻っていく姿を見て、僕は……少しだけ満たされた。
「この瞬間がいいと思うだろう?」
「師匠……」
「回復術師の技術は高度だ。だからよく……貴族に囲われるがな。そういう事をよしとしない。ただ回復するべきモノだけを回復するために、放浪する回復術師もいる。級を持つ者持たない者。それぞれいるが、彼らは今の顔を見るために過ごしている事が多い」
「なるほど……」
「それはそれでいいが、今は時間は有限だ。出来る限りやるべき事をやるぞ」
「はい!」
それからは午前中一杯を使って治療を続けた。
******
「うーん……どうしようかな……」
時刻はかなり遅い時間。
その時に、僕は自室の机でうなっていた。
「ヴィーになんて書こう……」
今日は絶対にヴィーに手紙を送るぞ。
そう決めたは良いものの、中々いい内容が思いつかない。
「うーん。決めた」
結構悩んだけれど、今起きている状況……はあんまり多くは書けない……っていうのか、書いても悲しくなってしまうだけだ。
だから、出来るだけ楽しくなりそうな話や、ヴィーに会いたいです。
という感じの事を書いておいた。
「こんなものでいいかな。初めての友達に送るのはこれでいいのかわかんないけど……」
何かダメな事があったらヴィーならきっと教えてくれる。
そんな軽い気持ちで出すことにした。
「よし。これでいいかな。後はこれを母さんに頼んで……」
そう思って部屋を出て、自室に向う。
その時に、たまたま師匠に出会った。
「師匠。こんな夜遅くにどうしたんですか?」
「ああ、エミリオ。中央に手紙を送りたくてな。夫人に会いに行くところだ」
「僕と一緒ですね」
「エミリオもか?」
「はい。僕はヴィー……ゴルーニ侯爵家のヴィクトリアに手紙を送ろうかと」
「ふむ……その手紙におれの手紙を混ぜてもらってもいいか?」
「え? いいと思いますけど……みられると思いますよ? いいんですか?」
「ああ、構わない。むしろ見せて欲しいくらいだ」
「それで良ければ……」
師匠は1枚の便箋を渡してくる。
僕はそれを受け取った。
「それではこれは母さんに渡しておきますね」
「ああ、頼む。良い夜を」
「はい。お休みなさい」
それから僕は母さんの部屋に行くと、母さんはかなり遅い時間だと言うのに執務室に座って仕事をしていた。
目の下には隈が出来ていて、かなり辛そうだ。
「母さん。大丈夫?」
「エミリオ……私は大丈夫よ。どうしたの?」
「ヴィーに手紙を出したくって……。それで出してもいいかな? 師匠の手紙も一緒に入っているんだけど……」
「……ええ。構わないわ」
「ほんと!? ありがとう母さん!」
母さんは優しく微笑むと、手紙を預かってくれた。
「出すのは明日よ。流石に今から出すのは大変だからね」
「うん。それでもいい。というか、母さん……今日は一緒に寝れるの?」
「ええ、後から行くわ。先に寝ていて」
「分かった……」
僕はそれだけ言うと、リーナが眠る母さんの部屋に向かう。
リーナを起こさないように、そっと部屋に入ると、ベッドでもぞもぞと動く何かがいた。
なんだ? と思って見ていると、リーナがゆっくりと起きてくる。
「リーナ。どうしたの? もう寝ないと……」
「ううん。ダメ。リーナ起きてる」
「どうして……」
「お母さん疲れてる。リーナがごほん読んであげるの」
「リーナ……」
リーナは眠そうな目を擦りながらも、頭をカクンカクンさせながらも意地でも起き続けるつもりのようだ。
僕もそんなリーナの思いを大事に思って、一緒に起きていることに決めた。
「分かったよリーナ。僕も起きているから、一緒に待って居よう?」
「うん……そうしてくれると……嬉しい。お兄ちゃん……」
それから待つこと1時間。
リーナが本格的に落ちそうになった所で、母さんがそっと入ってきた。
「リーナ。起きて」
僕がリーナを揺すると、ビクンと体を跳ねさせて母さんの方を見る。
母さんもまさか僕達が起きているとは思って居なかったのか驚いた顔で見ていた。
「2人とも……一体どうしたの?」
「うん。リーナが……起きてるって言うから」
「リーナ。どうしたのかしら?」
「うん……リーナ。母さんがゆっくり休めるように……ごほんを読んであげようと思って……」
そう言ってリーナはベッドのふちにおいてあった本を手に取る。
「リーナ……」
「お母さん疲れてるの分かるから……リーナが少しでも……力になってあげられたらって……」
リーナは今にも寝てしまいそうだけれど、母さんはリーナに近付くと優しく抱き締める。
「ありがとうリーナ。貴方の気持ちは……とっても嬉しいわ。その気持ちだけで……母さんは元気になれる。疲れも全部飛んでいくわ」
「ほんと……う?」
「ええ、本当よ。だから……一緒に寝ましょう。さ、エミリオも一緒よ」
「うん」
母さんは涙声になりながら明かりを消す。
「2人とも……ありがとう……本当に……その気持ちだけで……私は……生きていられるわ。貴方達がいるから……私は頑張れるの」
「うん……リーナが……ついてるからね……」
「ええ、私の大切な子達……」
僕は母さんに抱き締められる温かさを感じながら、眠りについた。
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