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48話 最終決戦②

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「くははははは、これまではお遊びとはいえ、ここまで簡単にいなされるとはな。だが、ここからが本番だ! 焼却光線インフェルノノヴァ!」
「今だよ!」
熱光線フレイムレイ!」
「『胞子シールド』マキシマイズ!」

 アキが奴の攻撃を打ち消すため、ナツキが攻撃を耐えるために対応する。その結果。

 バシュン! アキの魔法がかき消される。ただし、勢いが少しだけ弱まった気がする。

 ガリガリガリガリガリ!!!

「耐えてー!!!」

 ナツキが叫び、祈るようにスキルの展開を続ける。そして、

 バリィン!

「そんな!」

 ナツキの祈りは通じずに、シールドは無残にも割れる。ただし。

「バカな! ワシの却光線インフェルノノヴァを打ち消しただと……!?」
「そんなバカ面下げてる暇あるのかな! 『突進』!」

 私は奴の腹に向かって『突進』を繰り出す。私は打ち消す事を前提として突っ込んでいたからだ。

「なに!?」

 ドゴオオオオオオオオ!!!

「うほおおおおおおおおおお!!!???」

 私は奴の腹に『突進』を食らわせる。これで少しは奴に返せただろうか。

 奴は私の『突進』を受ける形でそのまま空を飛んでいき、そして、光った。

「光った!?」
「何をして来るの!?」
「警戒してー!」
「『未来予知』!」

 フユカが当たらしいスキルを使ったみたいだ。それで何か分かればいいけど。

 私は奴から距離を少しづつ取るようにして走る。しかし、背は向けない。いざという時に対応出来ないからだ。

「どう!? フユカ!?」
「すいません! 見えません!」
却光線インフェルノノヴァ!!!」
「また!?」
「そんな!?」

 ピュイン

 私たちのクールタイムは終わっていない。奴の光線が私たちの少し後ろを通り抜ける。

 ドオオオオオオオオオオン!!!

「きゃー!」
「ハル! 態勢を!」
風よ吹けウインドブロー!」
「『ソナー』!」

 私は飛ぶけれど、アキの魔法のお陰で態勢を立て直して直ぐに走り出す。

「一回突っ込もう!」
「でもまだシールドは張れないわ!」
「それでもこんなに距離を開けてたらあれをずっと撃ったれちゃう!」
「それもそうだねー! 奴の近くにいた方がハルの速度も活かせると思うよー!」
「行くよ! フユカも危険がありそうだったら教えてね!」
「分かりました!」

 私は奴に向かって進む。

「くははははは、自分から死にに来るとはいい度胸だ」

 ボアアアアアアアアア!!!

「避けて!」

 ナツキの叫び声が聞えるけど、私の視界一杯に広がる炎は躱すことが出来ない。

「ダメ!」
「このままだと!」
風よ巻き起これウインドストーム×3!」
「アキさん!」

 アキが魔法をぶつけて何とか炎の勢いを弱めてくれる。その炎の勢いが落ちた所を目掛けて私が走り込んでいく!

「抜けた!」
「そのまま行って!」

 言われるまでもない! 私の目的はアイツただ一人!

「ふん! その程度では意味はないわ!」
「なに!?」

 私が近づいている最中に奴の体が膨れた。さっきまではよりも1,5倍位のサイズに大きくなっているのだ。

 でも!

「『疾走』!」

 ギュン!

 私は速度を上げて、奴に近づく! 私は攻撃を繰り出そうとして、

「もうその速さにはなれた」
「!?」

 奴の拳が目の前に大きく見えた。食らう。そう直感した。

「『ピンポイントショット』!」
「ぐぅ!」

 その瞬間にフユカの攻撃が奴の目に当たり、拳の速度がほんの少しだけ緩む。

 私はその拳に毛皮を削られながら、しかし、何とか躱しきる。そのまま奴から逃げるように走り抜けた。

「逃がすか!」
炎よ巻き起これファイアストーム!」

 私が逃げるのを援護するかのようにアキが援護してくれる。

「ぬぅ! 小癪な……」
「ありがとう! フユカ! アキ!」
「まだ奴は倒しきっていませんよ!」
「フユカも言うようになったねー!」
「皆さんのお陰です!」

 いい。この雰囲気なら勝てる。そう思えるいい雰囲気だ。

「来るわよ!」

 ナツキの声にそちらの方を見ると、奴が岩を持ち上げている。それもかなりのサイズだ。今の奴の倍くらいはある。

「うほおおおおおおお!!!」

 ブン! 

 奴が岩を物凄い速度で投げつけてくる。私達の視界はそれで一杯になった。

「フユカ!」
「はい! 探知魔法サーチ:ウィークポイント! 見えました! 右下です!」
「分かったよー! 炎の槍よファイアジャベリン
「砕けてー!」

 私の思いが届いたのか、アキの魔法で岩が砕け散る。一安心した所に、奴が現れる。

「安心出来るとは余裕だな!」
「な!」

 奴が岩の後ろから現れたのだ。岩が破壊されることは当然だとでも言うかのように。フユカも『ソナー』ではなく、岩を見抜くことに集中していたのも災いした。

「食らえ! まずはお前からだ!」
「きゃああああああ!!!」

 奴の拳がアキに刺さり、アキが飛んでいってしまう。

「アキ!」
「ハル! 速度を出しなさい!」
「!」

 ナツキに言われるままに私は走り出す。

「蘇生に入るわ! 時間を稼いで!」
「分かった!」

 私は走り、何とか時間を稼ごうとする。

「待って! アキの死んだところからあんまり離れないで!」
「ええ!? どれくらい!?」
「10m以内で逃げて!」
「正気ですか!?」
「じゃないと蘇れリザレクションの効果範囲にならないの!」
「だとしてもトカゲサルからその距離だけで躱すのは……」

 絶望的。そう思わずにはいられない。でも、

「何とかやってみる!」
「ハル! 任せたわよ!」
「うん!」

 私はナツキが集中するのを見て、アキが死んだ範囲ギリギリを駆け巡る。

「フユカ! いざとなったら『共有』を頂戴!」
「分かりました! でも……。本当にやるんですか!?」
「アキが居ないと勝てないと思うよ!」
「それは……そうですが……」
「おしゃべりをするとは余裕だな?」
「!?」
「!!!???」

 トカゲサルがいつの間にか近づいてきていて、拳を振り上げている。

「何の!」

 私は何度も走りながら練習した切り返しで奴の攻撃を躱す。

「ほう! だが、これ以上は!」

 奴の一撃を躱したけど、奴の動きは速い。それをこの10mで躱しきるのは雨を全て避け切る事並みに厳しいだろう。しかし、まだだ。

「フユカ! 使って!」
「!? 『共有』! そして! 『未来視』!」

 フユカが見ている景色が私にも見えてくる。奴の体の熱。周囲の環境。様々な情報が入ってきた。それだけでは終わらない。奴が拳を繰り出して来る方というか、拳を振り下ろす場所が見えるのだ。時間が遅くなり、それが奴のこちらへの攻撃だと分かった。

「こっち!」

 私はその光景から出来るだけ離れた位置に体を投げ出す。

「何だと!?」

 ドズゥン!!!

 奴の攻撃が地面に刺さり、何とか危機一髪回避する。

「フユカ! 後どれくらい!?」
「まだ1分あります……」
「そう……」

 ナツキの蘇生させるための時間は短くなったとはいえ、アキを蘇らせるのはまだまだ時間がかかりそうだ。
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