上 下
48 / 137
2章

48話 師匠

しおりを挟む
 俺の目の前にはひざをつく国王。
 そして、彼は俺に国王と同等の地位を与えると言う。
 正直要らない。

「頼む! ワシを導いてくれ! 最強なのだろう?」
「そうだが……俺は俺でやることがある」
「なんだ!? この国の力があれば大体は出来るだろう?」
「俺自身の力でやるから意味があるんだ」
「そんなことを言わずに、ワシの話を受けてくれ!」

 相変わらずすがりついてくる国王。
 面倒になってきた。
 振り払ってやることやって逃げるか。

 そう思っていると、後ろから声をかけられた。

「シュタルさん。問題は解決しましたか?」
「うん!?」

 俺は思わぬ声に振り返ると、そこには姿隠しの魔道具を起動させたリュミエールがいた。

「リュミエール」
「はい。ずっと帰って来ないので心配になって来てしまいました」
「俺は最強だ。心配しなくても問題ない」
「ですけど、やっぱり……姿が見えないのは怖いじゃないですか」
「リュミエール……最強の俺に心配の文字はないぞ。二言はない。約束する」
「ええ、知っていますけど……。私がそう思ってしまうだけなので」
「それなら仕方ないが……」

 そう言って笑ってくるリュミエール。
 俺の事が心配で出てきてしまったらしい。
 彼女が居てもいいことになるのか。
 と問われると怪しいが、そうやって心配される事は不思議と悪いようには思わなかった。

「あの……後ろ……は大丈夫ですか?」
「後ろ?」

 リュミエールに言われて、俺は後ろを振り返る。

 そこにはとてもいい笑顔になった国王がいた。

「どうした」
「何、シュタル様がワシの願いを聞き届けてくれただろう? これが嬉しくならずにいられまい」
「何の話だ?」
「先ほどワシの話に『うん』と言ってくれたではないか」
「……」

 俺は少し考えて思い出そうとする。

『そんなことを言わずに、ワシの話を受けてくれ!』
『うん!?』

 確かに言ったような……。

「いや、それは無しだろう」
「最強のシュタル様に二言はないのでは?」
「……」

 嘘だろう?
 まさかこんな事でそんな……そんな地位になってしまうなんて……。
 信じられない。

「ではシュタル様。ご納得頂けましたかな?」
「く……しかし、それは後でだ。今は他の者を救う事。それと、勇者の居所を教えてもらうぞ」
「もちろんです! シュタル様の願いなら出来るだけ叶えさせて頂きます!」
「……ならいい」

 俺はそう言って、玉座の付近に倒れている近衛兵達を蘇生そせいさせていく。

 その行動に近衛兵達は目を丸くしていた。

「え?」
「そんなことが……?」
「俺を誰だと思っている。最強の魔剣士シュタル。邪魔をするなよ」

 俺は近衛兵達にそれだけ言うと、次々と蘇生させていく。

 後ろの方では国王とリュミエールが話していた。

「シュタル様は口答えしてきた近衛兵達も蘇生させて下さるのか」
「そうですよ。シュタルさんはとっても優しいんです。そしてその優しさを……分け隔てなく、誰にでも向けて下さるんです」
「そうか……。それでこそ我が師だ」

 勝手に師匠にするな。
 そう思ったが、口は挟まないでおく。

 そうしていると、外からどたどたと走ってくる音が聞こえた。

「陛下! 無事ですか!?」
「シュタル! 生きてる!?」

 現れたのはラジェル公爵とアルマだった。
 彼らの後ろには多くの兵士と冒険者を引き連れている。

 国王は入ってきた彼らに向かって答えた。

「おお……よく来てくれた。ラジェル公爵」
「陛下……ご無事で何よりです。しかし、これは……」
「あそこにいるシュタル様が助けて下さったのだ。それとラジェル。彼にワシと同等の権力を与えたいのだがどうするのがいいかな?」
「は!? 陛下と……同等ですか!?」
「そうだ。ワシには……師が必要なのだ」
「それで……シュタルを?」
「そうだ。その事で助言が聞きたい」

 そんな話をしている途中に、アルマは俺の方に来る。

「シュタル! 無事だった!?」
「アルマか。俺は無事だ。最強だからな」
「そう……良かった。城の中も結構魔族が居て……倒すのに時間がかかって遅れてしまったの。ごめんなさい」
「気にしなくてもいい。ここでの被害はほとんどない。むしろ、俺が見れなかった下の方を助けてくれて感謝するぞ」
「シュタル……」

 彼女は手にかなりごついハンマーを持っているけれど、それを感じさせないような笑顔を浮かべている。

「兎に角、後は外の問題を解決するだけだな。城は問題ない。行くぞ」
「ええ!」

 そう言って俺達は外に向かおうとすると、国王が止めてきた。

「シュタル様! お待ちください! ワシの事はどうされるのですか!?」
「国王よ。今は貴様の安全は確保した。次にやることは危機への対応だ。外に兵士が操られて攻めて来ているのは知っているだろう?」
「それは……」
「だから先にそちらを片付けてくる。勇者の居所を調べておくといい」

 俺はそう言ってアルマと外に向かうと、国王が俺の横に並ぶ。

「お前……どうして……」
「そのことについてはラジェルに任せます。今は……ワシも貴方と共に外に向かいます」
「……いいだろう。この国で何が起きているのか……一度しっかりと知るといい」

 こうして、俺達は城を出て外に向かう。




 外でやることは簡単だ。
 ベルセルの町でやった様に、拘束して、操られている元を断つだけ。
 それを終わらせるのに、丸3日かかるとは思わなかったけど。

 倒すのは正直問題ない。
 回復させるのが大変だっただけだからな。

 それでも、助ける事が出来たし、国王も……現状を知って、決意を新たにした姿は少し嬉しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐
ファンタジー
———力を手にした少年は女性達を救い、最強の組織を作ります! 魔力———それは全ての種族に宿り、魔法という最強の力を手に出来る力 魔力が高ければ高い程、魔法の威力も上がる そして、この世界には強さを示すSSS、SS、S、A、B、C、D、E、Fの9つのランクが存在する 全世界総人口1000万人の中でSSSランクはたったの5人 そんな彼らを世界は”選ばれし者”と名付けた 何故、SSSランクの5人は頂きに上り詰めることが出来たのか? それは、魔力の最高峰クラス ———可視化できる魔力———を唯一持つ者だからである 最強無敗の力を秘め、各国の最終戦力とまで称されている5人の魔法、魔力 SSランクやSランクが束になろうとたった一人のSSSランクに敵わない 絶対的な力と象徴こそがSSSランクの所以。故に選ばれし者と何千年も呼ばれ、代変わりをしてきた ———そんな魔法が存在する世界に生まれた少年———レオン 彼はどこにでもいる普通の少年だった‥‥ しかし、レオンの両親が目の前で亡き者にされ、彼の人生が大きく変わり‥‥ 憎悪と憎しみで彼の中に眠っていた”ある魔力”が現れる 復讐に明け暮れる日々を過ごし、数年経った頃 レオンは再び宿敵と遭遇し、レオンの”最強の魔法”で両親の敵を討つ そこで囚われていた”ある少女”と出会い、レオンは決心する事になる 『もう誰も悲しまない世界を‥‥俺のような者を創らない世界を‥‥』 そしてレオンは少女を最初の仲間に加え、ある組織と対立する為に自らの組織を結成する その組織とは、数年後に世界の大罪人と呼ばれ、世界から軍から追われる最悪の組織へと名を轟かせる 大切な人を守ろうとすればする程に、人々から恨まれ憎まれる負の連鎖 最強の力を手に入れたレオンは正体を隠し、最強の配下達を連れて世界の裏で暗躍する 誰も悲しまない世界を夢見て‥‥‥レオンは世界を相手にその力を奮うのだった。              恐縮ながら少しでも観てもらえると嬉しいです なろう様カクヨム様にも投稿していますのでよろしくお願いします

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...