「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

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第3章 動乱

60話 エトアとライアット

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 パーティーが始まり暫くして。

「美味いなこれ……」

 意外とバレていない。俺がいる隅っこには人は来ない為、割とのんびりできた。帝国の貴族は向上心が高いのか基本、中央に多く集まって話をしている。

 聞き耳を立てていたけど、

「噂の龍騎士様はどちらにいらっしゃるんでしょうね?」
「パーティーには来ていらっしゃるみたいですが……さてどこにいるのやら」
「あちらの方も有名な方ですか? かなり囲まれて居ますが」
「彼らは……そうですね。龍騎士程ではないですが期待の新人と言われている方々ですね。金髪の騎士の彼がエトア殿。とある侯爵のお墨付きで入ってきて、メキメキと頭角を表している方ですね」
「ではもう一人の黒髪の魔法使いの方は?」
「ええ、彼もエトア殿と同じ侯爵のお墨付きで入ってきた方で、ライアット殿ですね。魔法の才は桁違いだとか。宮廷魔法師団入りも近いと言われています」
「おお、あの誰もが憧れる魔法師団ですか」

 そんな話を聞きながら食事を続けた。

(それにしても結構すごい人もいるんだな。俺以外の人の話になってくれるのなら歓迎だ)

 そんなことを思いながら食事を続けていると、

「何でも今回の目玉も龍騎士とエトア&ライアットの直接対決になっているとか」
「っぶ!」
「?」
「?」

 いけない。意味の分からないことが聞えて思わず噴き出してしまった。勝負? どうしてだ?

「なんだったんでしょうか……」
「まぁ、気にしないようにしましょう。なんでもロネ姫対侯爵でどちらの方がより素晴らしい物を献上できるかっていうお話になっているらしいです」
(なんでこの国はそんなに勝負をしたがるんだ……)
「ではこの後の催し物が見ものですね」
「ええ、楽しみにしておきましょう」
(そんな風に思われると帰りたくなって来るな)

 中央では今回の皇帝への献上品の発表が始まっていた。それを聞いていると、取ってきた人とその主君的な人も紹介されているようだった。献上される品はどれも一級品のものらしく、素晴らしい物ばかりだ。

 一人で面倒に思っていると、明らかに俺の方に近づいて来る2人がいた。

 そちらの方を見ると、金髪の騎士の格好をした優男と黒髪で魔法使いの格好をした表情の動かない男だった。

 彼らは確実に俺を見つめている。

(かなりの実力者だな……。それに、自分たちの気配もかなり消している)

 俺も彼らに向き直る。

「これはこれは、龍騎士殿。今回の花形と伺っておりますがどうしてこのような場所で?」

 黒髪の男が挑発するように言ってくる。

「人が多い場所はあまり得意ではないのですよ。お名前を伺っても?」
「これは失礼しました。私はライアットと申します。こちらが」
「僕は……私はエトアと申します。以後お見知りおきを」
「これはご丁寧に、私はセレットと申します」
「存じています」

 黒髪の男、ライアットが食い気味に言ってくる。

「そ、そうですか」

 何だか目に敵意が宿っている気がする。どうしてだろうか。

「今回初対面ですよね?」
「……」
「そ、そうですよ。先輩。ほら。失礼ですよ」
「ええ、初対面ですね」
「は、はぁ」
「……」
「……」
「……」

 空気が重い。どうして話しかけて来たんだ。

「お2人ともすごいですね。かなり期待の方々だとか」
「いえいえ、セレット殿に言われるほどでは……」
「そんな下らないことはどうでもいい。質問に答えてくれるか」
「……はぁ」

 ちょっとイラっとしながらも相手の話を聞く。この黒髪の男が突っかかってくるのは何か理由があるのか?

「率直に聞くと、この国をどう思っている?」
「どう……とは?」
「今のままでいいのか。それとも変わるべきかどうかだ」
「すごいことを聞くな。別に今のままでいいと思っている」

 初対面でそんなことを聞かれて最悪だなんて答えると思われたんだろうか。というか、これだけ良くしてくれる帝国を悪く思うなんて方が難しいだろう。

「そうか、話はそれだけだ」
「あ、ああ」

 そう言って2人はさっさと俺の前から立ち去って行く。その時に中央の献上品ではロネ姫の献上品が発表される。

『優秀賞は龍騎士セレットによるジュエルドラゴンの宝石です! 彼の主君はロネスティリア様になります! そして……』

 ライアットは司会が溜めている間にこちらを振り向いた。

「龍騎士と言ってうかうかして居られるのは今のうちだぞ。あんな弱小の姫に出来ることなどない」
「早い所身の振り方を考えた方がいいのかもしれませんけどねー」

 彼らはそう言って立ち去る。

『今回の最優秀の献上品はエトア&ライアットによるバーディカルクラブの盾に決まりました! 彼らの主君はグレゴール・グラディウス侯爵様になります!』
「……」

 俺はそっとその場を立ち去った。
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