「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

文字の大きさ
上 下
22 / 67
第2章 姫

22話 帝国での日常

しおりを挟む
「ごあああああああああ!!!」

 大過の龍脈のファイアードラゴンが咆哮を上げ、ブレスを吐いてくる。

 俺は横に飛んで躱す。ただし、速度を落として、ぎりぎりになるように。

「ごおおおおあああああああああ!!!」

 ファイアードラゴンは何度も躱されている怒りからか、接近戦を仕掛けるために近づいてくる。

 真っ赤な体に龍としては普通の体格。しかし、羽を羽ばたかせ、近づいてくるその姿は迫力があった。

 ちらり。

 俺は後ろを見て、ファイアードラゴンの巨体を正面から受け止める。

「ぐううううううううう!!!」

 奴の鼻先を相棒で受け止め、後ずさりしながらも何とか奴を止めた。

「あっちに行け!」

 俺はファイアードラゴンの顎を蹴り上げ、頭を思い切りのけぞらせる。そして、がら空きになった腹に蹴りを入れて奴を龍脈の奥に押し込む。

 奴の後を追い、起き上がるのを近くで立って待つ。

「ごおおおおおおおおおあああああああああ!!!!!!!」

 本格的に怒り出したようだ。爬虫類の見た目である為、中々表情の変化というものは分かりにくい。ただ、奴の目には炎が宿っていた。

 俺は奴の周囲を回り、奴の視線が何処に行くかを確認する。

 奴は常に俺を見ているようで、他の場所を見るようなことはしていない。

(よし、これなら多少は大丈夫だろう)

 俺は龍脈の入り口の方で待機しているパルマに向けて合図を送る。

 パルマは頷くと、彼女の後ろにいた若者達を引き連れて前に出た。

「いいか、死にたくなければ物音を立てるなよ。返事もいらん」

 彼女たちはそろりそろりとファイアードラゴンに近い小部屋の中に入っていく。

 俺は奴の注意がそちらに行かない様にずっと注意を引いていた。

 それから1時間、ファイアードラゴンの攻撃を躱し続け、時には小部屋の方に蹴り飛ばしたりしていた。

「もう大丈夫だ! 倒してくれ!」
「分かった!」

 パルマか許可が降りたので相棒を鞘から引き抜き、ファイアードラゴンの首を切り落とした。

「ごああ……?」
「ふぅ」

 カキン

 と相棒を鞘に収めて汗を拭う。

 そこへ、パルマが近づいてくる。

「セレット、助かった。感謝する」
「気にするな。それにしても新兵はどうだ?」

 俺は彼らが入っていった小部屋を見る。

「ははは、ファイアードラゴンが蹴り飛ばされて来た時など何人かは悲鳴を上げてたぜ? だらしない。だが、これで少しはマシになるだろ」
「それは良かった。俺も龍を狩らずに残して置くなんて久しぶりだからな。途中ヒヤッとした」
「大丈夫だったか? セレットにしか頼めないとはいえ、危険な事を頼んじまったからな」
「これくらいなら大丈夫だよ。じゃ、もしまた必要になったら言ってくれ。新兵によろしくな」
「ああ、龍騎士様に新兵の訓練を見られて奴らも頑張るだろう」

 パルマは茶化すように言ってくる。

「やめてくれ。たいそうな称号で呼ばれるようなもんじゃないよ。と、そろそろ次の予定があるんだった」
「そうか。今回は助かった。またな、セレット」
「ああ、パルマも気をつけろよ」

 俺は彼女と別れて次の目的地に向かう。

 目的地であるウテナとの礼儀の訓練部屋につくと、知らない女性の騎士がいた。

「えっと……貴方は?」
「私はロネカ姫の親衛隊の一人でオリーブといいます、ウテナ様の代役として参りました」
「代役?」
「はい、本日ウテナ様は仕事がかなり押しておりまして、こちらには来れないとのことで……」
「分かりました。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。かの龍騎士様のご指導に預かれると聞いて、かなり緊張しています。ミスがあればご指導お願いいたします」
「俺が指導を受けるんだからそんなことはないよ。ていうか顔が赤いけど大丈夫か?」

 ウテナの所の労働環境はそんなに悪いんだろうか? 顔が赤くなるくらい体調が悪い人が多くなるのはまずいと思う。

「あ……。いえ、その……かの英雄とご一緒出来て感動しているというだけですので、お気になさらず……。ここに来る為の勝負もかなりの激戦でした……」
「そ、そう」

 俺の指導員ってそんなに人気なの? 教えてるだけだから楽にやれるとかか? それならありそうだな。

「はい、それでは早速指導に入らせていただきますね?」
「よろしく頼む」

 それからは彼女の指導で礼儀の訓練を続けた。

「今日はこれくらいですかね?」
「そうだな……。大体この時間に終わっていたはずだ」

 俺は伸びをして硬くなった体をほぐす。

 礼儀の指導は実際に動作を行なうこともあればそうでない時もある。この場合ではこうだけど、相手の爵位によってこういう風に変わったり等と覚えることが山のようにあるのだ。

 重要そうなもの等を優先して教えて貰っているが、全てを覚えきるまでに一体どれくらいかかるのか。正直考えたくない。

「それで、セレット様、これから食事とかはいかがなされるのですか?」
「この後か? アイシャと秘書と一緒に食事に行こうかって話になっている」
「なるほど……。でしたら何でもありません。失礼しました」

 彼女は心なしか凹んでいる様だったけど、食事に何かあったんだろうか。

「俺はこれで失礼する。ウテナによろしく言っておいてくれ」
「はい、畏まりました」

 俺は部屋を出て、アイシャと秘書がいる部屋に向かう。

 コンコン

「どうぞ~」
「入るぞ」

 俺が中に入ると、アイシャと秘書が机に向かって何かを書いていたり、装置を弄っていた。

 2人は俺の方に視線を向けると驚いた顔をする。

「え? もうそんな時間?」
「ホントです~。今日という日があっと言う間に終わってしまいました~」
「集中してたならまた今度にするか?」

 彼女たちが何かに熱中していたのなら、邪魔をするべきじゃないような気がする。

「うーん。大丈夫。というか、お昼をそうやって抜いちゃってるから、流石にお腹が減りすぎてヤバいわ」
「ですね~。これだけ研究に集中できるなんて、前の国ではなかったですから~」
「そうなのか?」
「ええ、トリアスがあれをやれこれをやれって自分の仕事を押し付けまくってきたのよね」
「そのせいで半日は毎回潰れてましたからね~。そう考えると今は最高の環境ですよ~」

 そんな事を話しながら食堂へ向かう。

 個室を用意してもいいと言われたけれど、何と言うかそこまで特別扱いになりたくないという思いもあってしていない。

 会話をしながら毎日が過ぎて行った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜

蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。  しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。  だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。  アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。  実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。  その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。  なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。  無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。  アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。

外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも
ファンタジー
「闘えもしない外れスキルを授かった貴様など必要ない! 出て行け! グラン!」 剣聖の家系に生まれた少年グランは15歳のスキル継承の儀の際に非戦闘用の外れスキルである【建築】(ビルド)を授かった。 対する義弟は当たりスキルである『剣神』を授かる。 グランは実父に用無しの無能として実家を追放される事になる。辺境に追いやられ、グランはそこで【建築】スキルを利用し、家作りを始める。家作りに没頭するグランは【建築】スキルが外れスキルなどではなく、とんでもない可能性を秘めている事に気づく。 【建築】スキルでどんどん辺境を開拓するグラン。 気づいたら魔王城よりもすごい、世界最強の帝国ができあがる。 そして、グランは家にいたまま、魔王を倒した英雄として、世界中にその名を轟かせる事となる。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...