「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

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第1章 帝国へ

15話 勝てる

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「セレット! 助けてくれ! 緊急事態だ!」
「なんだって!?」

 俺達が訓練場で訓練をしていると、フランツが扉を蹴破り走り込んできた。

「何があった!」

 ウテナの声が凛と聞えた。

「大渦の龍脈でスタンピードが起きた!」
「スタンピードだと! 魔物のと一緒か!?」
「取りあえず行くぞ! 走りながら話を聞く!」
「分かった!」

 フランツが一瞬で振り返り、来た道を戻り出す。

 俺とウテナもそれについて走り出した。

「スタンピードとはなんだ?」
「龍が通常よりも多くの数を生み出すことだ。普段なら1,2体龍が現れる場所で、10体現れるといった具合にな。だが、今回は桁が違う。AランクにSランクの龍まで現れている」
「Sランク……」
「それで、そいつらを狩ればいいのか?」

 大事なのはそこだ。殲滅か、救出か。確かアイシャがこの時間に『大渦の龍脈』で実験をやるといっていた。そうであれば、今すぐにでも行かなければ。

「ああ、だが、中には多くの技師が残されている。だからその救助も頼みたい」
「アイシャ……分かった。先に行くぞ」
「え?」
「何?」

 俺は全身に魔力を行きわたらせ、走る速度を上げる。アイシャの様に魔法を使ったりすることはできないが、こうやって身体能力を強化することは割と得意なのだ。

 ウテナとフランツを置き去りにして『大渦の龍脈』を目指す。

 途中にすれ違う人にはぶつからない様に気を付けて走り、1分もかからずに到着した。

「状況は!」
「中はとられた! だがまだ中に人がいる!」
「鍵は!」
「既に閉めた!」

 門の前にいた水色の龍脈衆が答える。彼の体中は傷だらけで、片腕もだらりとぶら下がっていた。

 彼はその腕の中にパルマさんを抱いている。彼女は気を失っており、身動き一つしない。

「大丈夫か!?」
「俺達は大丈夫だ! だが……中にまだ人が……」
「俺が行こう」
「無理だ! ライトニングドラゴンに、ストームドラゴン、アクアドラゴンらがそれぞれ複数以上いるんだ! それだけじゃない! ホーリーロードドラゴンやアーマードドラゴンの様なSランクもいる! 俺達で勝てなかったんだ! お前たった一人で何が出来る!」

 彼は泣いていた。

 きっと、悔しいのだろう。この龍脈を誇りをもって守り、精鋭としてその名に恥じない働きをしている。

 その彼らが、守り切れなかった。

「俺に任せておけ。何とかする!」
「ふざけるな! 冗談で言っているんじゃないぞ! 死にたいのか!」
「死なないよ。俺は。その程度では死なない。だから、任せてくれ」

 俺は彼の目を真っすぐに見ながらハッキリと言う。

 彼らがここを守っているのだ。そして、この門の鍵は彼らが握っている。それを壊して行くこともできるが、それは今後のここの活動にも響くためやらない方がいい。

 だから、彼らを説得するしかないのだ。

「それ……でも……」

 彼は下を向く。この感じでは厳しいかもしれない。

「俺なら勝てる。俺が入った後に直ぐに鍵を閉めてくれても構わない。だから開けてくれ」
「……ダメだダメだ。そのせいで1体でも出てきたらどうするんだ!」
「中には俺の大事な幼馴染がいる! そして、これくらいならば俺でも勝てる! 頼む!」
「……」

 彼は黙ったまま何も言わない。

 壊すしかないか。そう思った時に、パルマさんが薄目を開けていた。

「勝てるのか……奴らに」
「勝てる」
「本当……だな……?」
「任せろ」

 彼女の目をしっかりと見つめて話す。

 彼女は一度目を閉じてそれからまた目を開けた。

「鍵を開けろ」
「しかし!」
「命令だ」
「隊長……」
「ウテナさんを倒したその力、信じる」
「! ……分かりました」
「鍵を開けろ!」

 彼がそう叫ぶと、大きな鍵が持ってこられて門を開ける。

「後はゆっくり休んでおいてくれ。ここからは、狩りの時間だ」

 俺は体中に魔力を巡らせる。

 しかし、体の外には一切出すようなことはしない。

 体の外に溢れるのは魔力を完全に制御できていないことと同じ。

 俺は門を押し開けると、後ろから声が聞こえた。

「セレット! 一人で行くのか!」
「危険すぎるのではないか!?」

 フランツとウテナが追いついた様だった。

「じゃあ入り口で見ておいてくれ」

 そう言って俺はアイシャの事を一度忘れる。彼女のことは大事だが、今から狩る龍に集中しなければ命がない。

 だから、頭の中から龍を狩る以外の事を全て忘れる。

 俺は門の中に入った。
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