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002 アジトの元は元アジト
第8話 管理者の遊び場。
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俺たちは荷物を抱え、旧校舎へと向かった。市島先輩が先導し、俺とひと、そして童子山がその後に続いた。
旧校舎裏の光景は、ほんの数日前とはまったく別物になっていた。あの不気味な漆黒の壁は姿を消し、新たな奥行きを持つ空間が現れていた。正面には小さいながらも手入れの行き届いた花壇があり、鮮やかな色彩のパンジーが整然と並んでいる。その花壇を取り囲むように、石材で縁取りが施されていた。
この変化が人の手によるものではないという事実に、不気味さを覚える。この空間は誰かの意図を介さず、勝手に変容を遂げてしまったのだ。
市島先輩が鍵を取り出し、旧校舎の玄関扉に歩み寄った。冷たい金属の鍵が鍵穴に挿さる音が微かに響く。先輩が軽く力を込めて鍵を回すと、錆びついた古い錠前がキィと悲鳴を上げながら開いた。
年季の入った校舎の廊下は薄暗く、足音が妙に鮮明に響く。市島先輩が先頭に、八木先輩と日吉先輩が後に続く。その後を俺とひと、童子山がついていく。辺りを見回すと、何とも言えない居心地の悪さや違和感が増していく。
俺は市島先輩に尋ねた。
「ここは、いつ頃まで使われてたんですか?」
「それは、この世界における設定の話か?」
市島先輩の言葉の意味を汲み取るのが難しく、俺は戸惑いの表情を隠しきれなかった。そんな俺の様子を見て、市島先輩が続けた。
「この違和感はちゃんと経験しておいた方がいいよ」
やがて市島先輩がとある教室の前で足を止め、躊躇なく扉を開いて中を覗き込んだ。
「だいたい元通りって感じかな」
俺たちも先輩たちの後に続いて教室に入った。その光景を目の当たりにして、俺は驚きのあまり言葉を失った。ひとも童子山も、困惑の表情を浮かべていた。
「ようこそ、管理者の遊び場だった場所へ」
教室内の景色は、まるで異界の迷宮に足を踏み入れたかのような奇異さに満ちていた。片隅には保健室から持ち出されたであろう手すり付きのベッドが置かれ、その上に柔らかなクッションとカラフルな毛布が乱雑に積み上げられている。
その傍らには体育用具のマットが何枚も重ねられ、小山のような形状を成している。
教室の一角では、古めかしいテレビが存在感を主張している。その前には映像再生機器が接続されており、周囲には不安定な塔のように積み上げられたソフトの山がある。アニメに映画、お笑いと、その内容は雑多で一貫性を欠いていた。
低めの棚の上には、これまた統一性のないカプセルトイのフィギュアが無秩序に陳列されている。下部の段には、毛糸で作られた稚拙な人形が、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。
子ども部屋と学校の備品が強引に一体化させられたかのようで、目にするだけで不快感を覚えるほどの違和感を漂わせている。
「なん……すか……これ」
俺は声を絞り出すのがやっとだった。隣に立っていたひとは、驚きのあまり手に持っていたイルカのぬいぐるみを床に落とし、急いで拾い上げて「ごめんね」と語りかけている。
こいつの存在も外から見れば違和感満載だろうが、元からこういうやつだと知っているので、目の前の光景ほどの気持ち悪さは感じない。
「キキちゃん、そろそろ始めてくれない? わたし今日もバイトがあるのよ」
焦りを抑えきれない様子で、八木先輩が口を開いた。
「わかった、わかったよ。荷物はひとまず、そこらへんに置いておいて」
市島先輩は軽く手を振って、俺たちに向かって言った。
先輩がパステルカラーのロングソファに腰を下ろすのを見て、俺たちもそれぞれ適当な場所に座ることにした。教室内には様々な椅子が無秩序に並べられており、どの席を選んでも居心地が悪そうだ。
「さて、あらためてこの世界について説明をしておくよ」
市島先輩はそう切り出し、俺たち全員に目を向けた。
旧校舎裏の光景は、ほんの数日前とはまったく別物になっていた。あの不気味な漆黒の壁は姿を消し、新たな奥行きを持つ空間が現れていた。正面には小さいながらも手入れの行き届いた花壇があり、鮮やかな色彩のパンジーが整然と並んでいる。その花壇を取り囲むように、石材で縁取りが施されていた。
この変化が人の手によるものではないという事実に、不気味さを覚える。この空間は誰かの意図を介さず、勝手に変容を遂げてしまったのだ。
市島先輩が鍵を取り出し、旧校舎の玄関扉に歩み寄った。冷たい金属の鍵が鍵穴に挿さる音が微かに響く。先輩が軽く力を込めて鍵を回すと、錆びついた古い錠前がキィと悲鳴を上げながら開いた。
年季の入った校舎の廊下は薄暗く、足音が妙に鮮明に響く。市島先輩が先頭に、八木先輩と日吉先輩が後に続く。その後を俺とひと、童子山がついていく。辺りを見回すと、何とも言えない居心地の悪さや違和感が増していく。
俺は市島先輩に尋ねた。
「ここは、いつ頃まで使われてたんですか?」
「それは、この世界における設定の話か?」
市島先輩の言葉の意味を汲み取るのが難しく、俺は戸惑いの表情を隠しきれなかった。そんな俺の様子を見て、市島先輩が続けた。
「この違和感はちゃんと経験しておいた方がいいよ」
やがて市島先輩がとある教室の前で足を止め、躊躇なく扉を開いて中を覗き込んだ。
「だいたい元通りって感じかな」
俺たちも先輩たちの後に続いて教室に入った。その光景を目の当たりにして、俺は驚きのあまり言葉を失った。ひとも童子山も、困惑の表情を浮かべていた。
「ようこそ、管理者の遊び場だった場所へ」
教室内の景色は、まるで異界の迷宮に足を踏み入れたかのような奇異さに満ちていた。片隅には保健室から持ち出されたであろう手すり付きのベッドが置かれ、その上に柔らかなクッションとカラフルな毛布が乱雑に積み上げられている。
その傍らには体育用具のマットが何枚も重ねられ、小山のような形状を成している。
教室の一角では、古めかしいテレビが存在感を主張している。その前には映像再生機器が接続されており、周囲には不安定な塔のように積み上げられたソフトの山がある。アニメに映画、お笑いと、その内容は雑多で一貫性を欠いていた。
低めの棚の上には、これまた統一性のないカプセルトイのフィギュアが無秩序に陳列されている。下部の段には、毛糸で作られた稚拙な人形が、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。
子ども部屋と学校の備品が強引に一体化させられたかのようで、目にするだけで不快感を覚えるほどの違和感を漂わせている。
「なん……すか……これ」
俺は声を絞り出すのがやっとだった。隣に立っていたひとは、驚きのあまり手に持っていたイルカのぬいぐるみを床に落とし、急いで拾い上げて「ごめんね」と語りかけている。
こいつの存在も外から見れば違和感満載だろうが、元からこういうやつだと知っているので、目の前の光景ほどの気持ち悪さは感じない。
「キキちゃん、そろそろ始めてくれない? わたし今日もバイトがあるのよ」
焦りを抑えきれない様子で、八木先輩が口を開いた。
「わかった、わかったよ。荷物はひとまず、そこらへんに置いておいて」
市島先輩は軽く手を振って、俺たちに向かって言った。
先輩がパステルカラーのロングソファに腰を下ろすのを見て、俺たちもそれぞれ適当な場所に座ることにした。教室内には様々な椅子が無秩序に並べられており、どの席を選んでも居心地が悪そうだ。
「さて、あらためてこの世界について説明をしておくよ」
市島先輩はそう切り出し、俺たち全員に目を向けた。
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