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第2章 魂の器 ウィリアム・セシス編 side Maria
20.5 共犯 (閑話) side Matthew
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「お? この娘、急に動かなくなったぞ?」
「ちびって気絶しちまったんじゃねえか?」
「気絶したんなら都合が良いな。念のため気絶薬を嗅がせて、アジトに連れて行くぞ」
「ちぇっ、もっと鳴かせてやろうと思ったのにヨォ」
「それはアジトに帰ってからのお楽しみだ」
気絶したマリアに代わって『ウィリアム』の操作権を獲得した俺は、気絶したフリをしたまま逆襲の機会を覗っていた。
(マリアちゃんの意識が飛んでいるときだけは、マシューくんが『ウィリアム』を使えるからね。マリアちゃんはしばらく目覚めないから、しばらく『ウィリアム』はマシューのものだね)
(そうなのか)
とりあえず、この男たちから逃げなければ始まらない。と言うわけで、右にいるリーダー格らしき男の急所めがけて肘打ちをお見舞いした。
「ウゴッ」
何かが生々しい何かがごりゅっと破裂したような感覚。不幸な男はぐぐもった悲鳴をあげた後に気絶した。
(……パーン、とかじゃないんだな、ごりゅっていったぞ、ごりゅって)
(その体、身体能力が人外だから、ちゃんと手加減しないとダメだよ?)
(……分かった)
無意識的に手加減した上での金的だったのにも関わらず、俺はこの男から一生男としての機能を奪ってしまったらしい。同情の余地はかけらもないが、ちょっと玉が冷えた。
ほかの男達も、この男が辿る運命を悟ったのだろう、自分の股間を抑えて青ざめていた。
「さてお前ら、覚悟はできているんだろうな?」
さて、マリアを怖がらせてくれた落とし前、どうやって取ってくれようか。
◼︎
視線が集まるわ集まるわ。まあ当たり前か。なんせ、人通りの多い道を、気絶した5人の男を引きずりながら歩いているんだから。そしてそれを引っ張っているのは細腕の少女(外見上)。途中までは裏道を通っていたんだが、目的地が大通りにあるのだから仕方がない。
「ナニモンだあの嬢ちゃん……」
「ていうか見てよ、あれ、指名手配のゲスラーじゃないの……?」
「マジだ……」
なにやら噂話をされているようだ。これが指名手配犯だというのなら、都合が良い。俺が今後しばらく生活できる金を得ることが出来るだろうしな。
こうして俺は、ゲスラー達の身柄を引き渡すべく、衛兵所を目指して歩いていく。
◼︎
見積もりが甘かった。
日はすっかり落ちる直前、小窓から覗く夕焼けが照らすのは通路に面した鉄格子。そう、ここは軽犯罪者が打ち込まれたりする収容部屋である。そこで一人、俺は不貞腐れていた。
「あの頑固者め……」
衛兵所について、指名手配犯を引き渡すと、とても迅速な対応で、ゲスラー達を牢屋へと連れて行った。そこまでは良かった。
その後に連れていかれた所は、この町に入った時と全く同じ部屋、そこに来たのが、奇しくもあの門番だったのだ。
「あ、貴女はマリアさんではありませんか」
「違う、今はマシューだ」
「でもあの時はマリアだと」
「今は、期間限定でマシューになっているんだ」
「……上の者を呼んでくるので、少々お待ち下さい」
意味が分からない。そしてそこから少々じゃなく待たされた。しかもその間軟禁状態である。なぜなら、交代交代で衛兵がやってきて、全く同じような取り調べをしていくのだ。お茶と菓子は食い放題だったのが救いではあったが。
治安の良さの弊害なのだろうか。男なのか女なのか分からない怪しいやつが、また問題を持ってきた。この街では、そんなことが問題になるらしい。ただ、俺たちはまだその治安の良さを享受出来てないんだよなぁ……。
(何言ってんのさ、こんなの、ナルコトに比べたら全然マシだよ? この部屋の布団だって、こんなにふかふかだし)
(あの無法地帯と比べるのが間違ってんだよ)
結局、予算内の宿が満員だった所為で、寝床を確保できなかった俺は、本当に仕方なく、収容部屋の一室を借りるしかなく、現在に至る。
とりあえず、このことはマリアには黙っておくか。
◼︎
(起きて、マシューくん)
「ん……あ? なんだよ一体?」
どこも寝静まり、音といえば看守の巡回する足音だけだ。そんな深夜に、俺はビルに起こされた。何の用だ、こんな時間に?
(マリアちゃんに秘密にしていること、マシューくんには話すよ)
ビル……否、邪神は、そう切り出した。
「ちびって気絶しちまったんじゃねえか?」
「気絶したんなら都合が良いな。念のため気絶薬を嗅がせて、アジトに連れて行くぞ」
「ちぇっ、もっと鳴かせてやろうと思ったのにヨォ」
「それはアジトに帰ってからのお楽しみだ」
気絶したマリアに代わって『ウィリアム』の操作権を獲得した俺は、気絶したフリをしたまま逆襲の機会を覗っていた。
(マリアちゃんの意識が飛んでいるときだけは、マシューくんが『ウィリアム』を使えるからね。マリアちゃんはしばらく目覚めないから、しばらく『ウィリアム』はマシューのものだね)
(そうなのか)
とりあえず、この男たちから逃げなければ始まらない。と言うわけで、右にいるリーダー格らしき男の急所めがけて肘打ちをお見舞いした。
「ウゴッ」
何かが生々しい何かがごりゅっと破裂したような感覚。不幸な男はぐぐもった悲鳴をあげた後に気絶した。
(……パーン、とかじゃないんだな、ごりゅっていったぞ、ごりゅって)
(その体、身体能力が人外だから、ちゃんと手加減しないとダメだよ?)
(……分かった)
無意識的に手加減した上での金的だったのにも関わらず、俺はこの男から一生男としての機能を奪ってしまったらしい。同情の余地はかけらもないが、ちょっと玉が冷えた。
ほかの男達も、この男が辿る運命を悟ったのだろう、自分の股間を抑えて青ざめていた。
「さてお前ら、覚悟はできているんだろうな?」
さて、マリアを怖がらせてくれた落とし前、どうやって取ってくれようか。
◼︎
視線が集まるわ集まるわ。まあ当たり前か。なんせ、人通りの多い道を、気絶した5人の男を引きずりながら歩いているんだから。そしてそれを引っ張っているのは細腕の少女(外見上)。途中までは裏道を通っていたんだが、目的地が大通りにあるのだから仕方がない。
「ナニモンだあの嬢ちゃん……」
「ていうか見てよ、あれ、指名手配のゲスラーじゃないの……?」
「マジだ……」
なにやら噂話をされているようだ。これが指名手配犯だというのなら、都合が良い。俺が今後しばらく生活できる金を得ることが出来るだろうしな。
こうして俺は、ゲスラー達の身柄を引き渡すべく、衛兵所を目指して歩いていく。
◼︎
見積もりが甘かった。
日はすっかり落ちる直前、小窓から覗く夕焼けが照らすのは通路に面した鉄格子。そう、ここは軽犯罪者が打ち込まれたりする収容部屋である。そこで一人、俺は不貞腐れていた。
「あの頑固者め……」
衛兵所について、指名手配犯を引き渡すと、とても迅速な対応で、ゲスラー達を牢屋へと連れて行った。そこまでは良かった。
その後に連れていかれた所は、この町に入った時と全く同じ部屋、そこに来たのが、奇しくもあの門番だったのだ。
「あ、貴女はマリアさんではありませんか」
「違う、今はマシューだ」
「でもあの時はマリアだと」
「今は、期間限定でマシューになっているんだ」
「……上の者を呼んでくるので、少々お待ち下さい」
意味が分からない。そしてそこから少々じゃなく待たされた。しかもその間軟禁状態である。なぜなら、交代交代で衛兵がやってきて、全く同じような取り調べをしていくのだ。お茶と菓子は食い放題だったのが救いではあったが。
治安の良さの弊害なのだろうか。男なのか女なのか分からない怪しいやつが、また問題を持ってきた。この街では、そんなことが問題になるらしい。ただ、俺たちはまだその治安の良さを享受出来てないんだよなぁ……。
(何言ってんのさ、こんなの、ナルコトに比べたら全然マシだよ? この部屋の布団だって、こんなにふかふかだし)
(あの無法地帯と比べるのが間違ってんだよ)
結局、予算内の宿が満員だった所為で、寝床を確保できなかった俺は、本当に仕方なく、収容部屋の一室を借りるしかなく、現在に至る。
とりあえず、このことはマリアには黙っておくか。
◼︎
(起きて、マシューくん)
「ん……あ? なんだよ一体?」
どこも寝静まり、音といえば看守の巡回する足音だけだ。そんな深夜に、俺はビルに起こされた。何の用だ、こんな時間に?
(マリアちゃんに秘密にしていること、マシューくんには話すよ)
ビル……否、邪神は、そう切り出した。
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