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第2章 魂の器 ウィリアム・セシス編 side Maria
25 預言 (章末)
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扉を開ける。そこには、見上げるほどの高さの台座に立つ、女神様の像があった。目は瞑って、胸の前で手を組んでいる。その柔らかな表情は、祈っているようにも、希望に満ちているようにも見える。ステンドグラスから差した七色の光が屈折、反射して重なって、あちこちに散りばめられていた。
その様子は、まるで女神様が地上に等しく祝福するような、そんな神秘性を感じさせた。
(なんつーか……ザ・宗教って感じだな)
(……もうちょっと気の利いた感想はなかったの?)
(だって俺、無宗教だし)
「すみません、礼拝の方でしょうか?」
脳内で喋っていたら、唐突に誰かに話しかけられた。振り返ると、そこには白髪混じりの神父様が立っていた。高位の立派な聖職衣を着ているってことは……しまった、ちゃんとした服を買ってくれば良かった! どの道このワンピース以外にも服は必要になるんだし、買っておかないとなぁ。
「お初にお目にかかります、マリアと申します」
「ご丁寧にどうも。私は司祭のロベルト・グレイスと申します」
司祭ってことは、トマス先生よりも偉い人だ!
「今日の集会はもう終わっちゃいましたか?」
「えぇ。明日、日没の祈祷集会がありますので是非。
ところで次の日曜日なのですが、日曜礼拝は中止になりましたのでお知らせしておきますね」
(ビルドによると、アレクサンドなんちゃらってやつが神に左目を捧げて預言者になったらしいぞ?)
(アレクサンドって、まさか聖人アレクサンドライト?! ていうか、左目を捧げるとアスティ様の声をまた聞けるの?)
(あぁそんな名前だったな。左目云々は機密だからな。知らなくて当たり前だ)
(ビルくんはどうやって知ったんだろう……)
(なんにせよ、そのアレクなんちゃらは早速預言を受けたみたいでな、その内容が問題だ。
《30年後、破壊神によって世界が滅びる》だってよ)
とマシューはそう言った。もう一回、アスティオルカ様に会わなければ。ワタシはそう強く思った。
それこそが、女神を騙り偽の神託を告げたビル君の思惑だったなんて思いも寄らずに。
「どうかされましたか、マリアさん」
「いえ、なんでもないですロベルト司祭。気をつけて行ってきてくださいね」
「……はい、お気遣いありがとうございます」
その様子は、まるで女神様が地上に等しく祝福するような、そんな神秘性を感じさせた。
(なんつーか……ザ・宗教って感じだな)
(……もうちょっと気の利いた感想はなかったの?)
(だって俺、無宗教だし)
「すみません、礼拝の方でしょうか?」
脳内で喋っていたら、唐突に誰かに話しかけられた。振り返ると、そこには白髪混じりの神父様が立っていた。高位の立派な聖職衣を着ているってことは……しまった、ちゃんとした服を買ってくれば良かった! どの道このワンピース以外にも服は必要になるんだし、買っておかないとなぁ。
「お初にお目にかかります、マリアと申します」
「ご丁寧にどうも。私は司祭のロベルト・グレイスと申します」
司祭ってことは、トマス先生よりも偉い人だ!
「今日の集会はもう終わっちゃいましたか?」
「えぇ。明日、日没の祈祷集会がありますので是非。
ところで次の日曜日なのですが、日曜礼拝は中止になりましたのでお知らせしておきますね」
(ビルドによると、アレクサンドなんちゃらってやつが神に左目を捧げて預言者になったらしいぞ?)
(アレクサンドって、まさか聖人アレクサンドライト?! ていうか、左目を捧げるとアスティ様の声をまた聞けるの?)
(あぁそんな名前だったな。左目云々は機密だからな。知らなくて当たり前だ)
(ビルくんはどうやって知ったんだろう……)
(なんにせよ、そのアレクなんちゃらは早速預言を受けたみたいでな、その内容が問題だ。
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とマシューはそう言った。もう一回、アスティオルカ様に会わなければ。ワタシはそう強く思った。
それこそが、女神を騙り偽の神託を告げたビル君の思惑だったなんて思いも寄らずに。
「どうかされましたか、マリアさん」
「いえ、なんでもないですロベルト司祭。気をつけて行ってきてくださいね」
「……はい、お気遣いありがとうございます」
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