邪神の恩返し

白南井 誰方

文字の大きさ
上 下
15 / 61
第1章 孤児 ビルド・ノーティス編

04 殺戮 【R15】

しおりを挟む
「で、その割りの良い依頼って何なのよ?」

 そこに食いついてきたのは紅一点のサナだった。男2人は金勘定出来なそうだし、財布もサナに握られてるのだろうな、なんて想像したら、笑いが込み上げてきた。せっかくだからちょっと邪悪な感じにククク、と笑ってみる。

「俺が言うのも何だが、そんな依頼本当に有ると思っていたのか?」

 三人のポカーンとした顔。俺はついに耐えきれず吹き出してしまった。

「ま、まさか騙したのか?!」

 三人の目が怖くなってきたので弁明をする。

「否、騙してないぞ。俺の見つけた依頼は、間違いなくローリスクハイリターンのものだ。だが、三人とも俺が割りの良いと言った時にそれを信じていたみたいだから、悪い奴が相手だったら騙されてるぞって話だよ。つまり、三人をちょっとからかってみただけだ」

「全くもう! 驚いたじゃない!」
「僕も騙されちゃった」
「じゃあ、お前が言うところの割りの良い依頼って何なんだよ?」

 マシューが言ってきたので、俺は、マシュー、グレイ、サナの順に「森の調査依頼」と耳に囁いた。

「は?」
「え? 何で」
「どこがハイリターンよ?」

「やっぱりその反応か。ってことはやっぱりお前たちは薬草の知識はないみたいだな」

「「「薬草?」」」

「そう、薬草だ。その場所は……っと、これ以上は人のいないところで話そうか」

 俺は内緒のジェスチャをして、話題を切り替える。

「それよりも、報酬の分配はどうする?」

「その問題もあるのよね。そこらへんは私とビルドで話しておくから、マー君とレイ君は準備してきてよ」

「「了解!」」

 良いパーティだと思う。役割分担が出来ている。今はほとんど空気のグレイだが、彼にも何かしらの特技があるのだろうな。

 道中聞いた所によると、彼らにとってもこれが初依頼であるらしい。しかし彼らは驕ることなく万全の準備をして来ていた。

 改めていいパーティだ。でも運が悪かった。いや、俺にとっては運が良かった。

 俺に出会った彼等カレらは運が悪く、彼等カモらに出会った俺は運が良かった。

▪️

 冒険者への登録だってすることが出来た。

 三人がパーティメンバーになった。

 そこまでは万事順調だった。

 森の調査依頼を受けた。

 それは化物になった。

 俺達は殺された。

 二首の化物に。

 その名前は。

◾️

 初依頼は殆どの確率で成功するはずだった。そして彼らとも良い関係を築いていくことができるはずだった。

 剣使いのマシューも、盾使いのグレイも、魔法使いのサナも、良い奴らだった。

 なのに、なんで、マシューは自分の剣を喉から生やして倒れているのだろうか? いつの間に、グレイは下半身と上半身を真っ二つにされたのだろうか? 今、ボクが持っている、二つ結びの頭は誰の物だろう? そうだ。

 俺はマシューの渾身の突きを跳ね返した。グレイはサナの魔法で死んだ。サナは鋭く尖ったグレイの盾で。俺は気絶した。

☆★

 生き残った◾️◾️はあの森に、一人で倒れていた。何故かあいつらの死体も、血痕も残っていなかった。一瞬俺は別の森にいるのかと思ったが、戦闘跡からしてあの場所で間違いない。

 俺は街に戻って、そういう風に、ギルドへ報告した。即急に捜査隊が組まれ、即日で、俺の言い分が認められた。

 特別報酬として15000ディルも貰った。更に途中で採集した薬草を計上すれば、なんと17000ディル。そのほかに、捜査隊の報告次第で更に報酬の上乗せもあるのとことだ。

 ああ、なんて割りの良い依頼なんだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...