邪神の恩返し

白南井 誰方

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第0章 破壊神 爬沼蛭(はぬま ひる)編

半身 (閑話)

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 お母さんは来ない。ぼく・・は一人だ。

 当たり前だ。ぼくの所為で瀕死の重症を負って、入院中なんだから。

 ここは拘置所、っていうらしい。自首したら、警察のーーいや、この場合は検察、どっちだろう? どっちでも良いかーーひと達に捕まって、ここに入れられてる。

 ぼくは茫然としていた。

 それは、罪の意識とか、お父さんお母さんへの罪悪感もあるけど、実はぼくの半身ボクがもう地球に居ない事に対する空虚感からだった。

 お父さんお母さんは薄情だと言うと思うけど。

ボクは決して認めようとはしなかったけれど、ボクも間違いなく爬沼蛭であり、ぼくとその存在を分け合ったぼく自身だった。ボクの罪は紛う事無くぼく自身の罪でもあるから自首することはごく自然なことだと思っていた。

 ぼくの命の半分は、ボクの命だから、そんなボクとの繋がりがついさっき途絶えた時は、悲しくて泣いてしまった。今もちょっとしゃくり上げてる。

 ボクの行動は、全てぼくの連続性を保つ為だった。例えば、ぼくを自首させたのは、ぼくにとって面識のない高校の知人とかに会ってしまったら間違いなくぼくの存在を怪しまれるという理由からだった。

 ここでぼくが茫然としているのもボクの計算尽くだと思うと、感心してしまう。

 他人ひとが部屋に入ってきて、ぼくのお父さんお母さん以外に、誰か親戚がいないかって聞かれたけど、知る限り居ないので、「ごめんなさい、知りません」って答えた。

 ところで、一体ボクはどうやってこの体ーー神の器を作ったんだろう……。ボクが全然気づいてないみたいだったから敢えて口に出すことはしなかったけど、ボクがぼくの為に用意したのが人間の体だったら、ぼくの魂は収まり切らなかっただろうし。

 そう、ぼくだって神だ。

 ボクはぼく=ボクと認めなかったから思いつかなかったのかな。元々同じ存在なんだから、ぼくだって神に決まってるのに。

 ぼくの体を作った時、ボクの存在が消えてしまう位には負担が掛かった筈だ。ボクが消えてしまったのはぼくの所為? そこまでしてもらわなくても良かったのに。

 だから、ちょっとした恩返しをしよう。異世界の神様に、ボクを生まれ変わらせてもらえるように頼むんだ。









 しばらくしたら違うおじさんが入ってきて、色々質問してきたから、知っていることは答えて、知らないことは「ごめんなさい、分かりません」って答えた。
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