13 / 61
第1章 孤児 ビルド・ノーティス編
02 天敵
しおりを挟む
橙の髪を肩まで伸ばした、エネルギッシュな同輩。名をナルコトのネーク村のマリア。俺の腐れ縁で教会兼孤児院兼学校で年長をやっていた奴だ。
すらっとしていて足も長くて顔も良いがお節介過ぎるのと敬虔なアスティ教徒であるのが玉に瑕。あと貧乳。隠れている俺を見つけるのが特技。
マリアは一ヶ月前に隣街の酒宿屋に雇われ、住み込みで働いている筈で、ようやく天敵から逃げ果せたと安心したのに、なぜ戻ってきた?!
「なんなのよもー、ここはワタシの家でもあるんだから、そんな天敵現るみたいな顔しなくても良いじゃない?」
「分かってて言ってんなお前……」
聞くとマリアは高度な統計学を学ぶ為に帰省を兼ねてたまに帰ってくるという。
というかなんなんだ、こいつの怪力は?! 鍛えている俺をこうも容易く引き摺るとは。一ヶ月前より力付いたんじゃね?
「お前の二の腕の筋肉、やばいな」
瞬間、何を言ってもがっしりと首根っこを掴んで緩むことのなかったマリアの手がパッと離された。
「~?! ワタシが女の子らしく無いと言いたいのかな?!」
「確かにお前おっ……なんでもねえだから指鳴らすの止めろ! それじゃな」
拘束が外れたチャンスを逃すはずもないので逃走を試みる。逃げ足だけはマリアに勝ってたからな。後ろを振り返る。恐らくマリアは既にバテてーー
「逃がさないよ、ビル君?」
「付いてきてる速っ?!」
居酒屋の看板娘っていうのは、力が付いて足が速くなる仕事なのだろうか?!
「だとしたら俺も興味あるが!」
実は俺はマリアの働いている宿で内定をもらって、いつでもおいでと言われているのだ。
もちろん先生には言っていない。これがバレた日には、やりたくもない仕事をやらされるに違い無かったからだ。
意外なことに、マリアも先生に告げ口しないでくれているようで、今のところそんな事態にはなっていない。
とか考え事をしていたのが悪いのだろうか。いつのまにか前方に先生の姿が。Why?!
「せんせー、連れて来ました」
そうか、行き先をマリアに誘導されたのか! 居酒屋の看板娘というのは力が強くなり足が速くなりさらに頭の回転すらも速くなる仕事だったらしい。
「そんな看板娘あるかっ!」
「ありがとう、マリア君。さて、今日こそはお祈りに参加してもらいますよ、ビルド君!」
とまあこんな感じで無事確保されてしまった俺だった。
すらっとしていて足も長くて顔も良いがお節介過ぎるのと敬虔なアスティ教徒であるのが玉に瑕。あと貧乳。隠れている俺を見つけるのが特技。
マリアは一ヶ月前に隣街の酒宿屋に雇われ、住み込みで働いている筈で、ようやく天敵から逃げ果せたと安心したのに、なぜ戻ってきた?!
「なんなのよもー、ここはワタシの家でもあるんだから、そんな天敵現るみたいな顔しなくても良いじゃない?」
「分かってて言ってんなお前……」
聞くとマリアは高度な統計学を学ぶ為に帰省を兼ねてたまに帰ってくるという。
というかなんなんだ、こいつの怪力は?! 鍛えている俺をこうも容易く引き摺るとは。一ヶ月前より力付いたんじゃね?
「お前の二の腕の筋肉、やばいな」
瞬間、何を言ってもがっしりと首根っこを掴んで緩むことのなかったマリアの手がパッと離された。
「~?! ワタシが女の子らしく無いと言いたいのかな?!」
「確かにお前おっ……なんでもねえだから指鳴らすの止めろ! それじゃな」
拘束が外れたチャンスを逃すはずもないので逃走を試みる。逃げ足だけはマリアに勝ってたからな。後ろを振り返る。恐らくマリアは既にバテてーー
「逃がさないよ、ビル君?」
「付いてきてる速っ?!」
居酒屋の看板娘っていうのは、力が付いて足が速くなる仕事なのだろうか?!
「だとしたら俺も興味あるが!」
実は俺はマリアの働いている宿で内定をもらって、いつでもおいでと言われているのだ。
もちろん先生には言っていない。これがバレた日には、やりたくもない仕事をやらされるに違い無かったからだ。
意外なことに、マリアも先生に告げ口しないでくれているようで、今のところそんな事態にはなっていない。
とか考え事をしていたのが悪いのだろうか。いつのまにか前方に先生の姿が。Why?!
「せんせー、連れて来ました」
そうか、行き先をマリアに誘導されたのか! 居酒屋の看板娘というのは力が強くなり足が速くなりさらに頭の回転すらも速くなる仕事だったらしい。
「そんな看板娘あるかっ!」
「ありがとう、マリア君。さて、今日こそはお祈りに参加してもらいますよ、ビルド君!」
とまあこんな感じで無事確保されてしまった俺だった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる