邪神の恩返し

第0章 破壊神 爬沼蛭(はぬま ひる)編

破綻 (章末)

「ヒッ！？」

　地下室から上がって、お母さんと目が合った時、お母さんはボクに怯えた。やっぱり。本当のボクを見たら、皆ボクを拒絶するんだ……イライラが爆発した。

「そんな目で見ないでよ!!」
「?!」

　ボクは、お母さんを壁に追い詰め、下腹部を裂き、子宮を探り当てる。

　それは、数え切れないほどの男によって汚された所、そして爬沼蛭はぬまひるが生を受けた所。
こんなのもういらないよね？

　二度と行為が出来ないように、徹底的に握りつぶした。

　お母さんは、混乱と驚愕を顔に浮かべながら、どさり、と崩れ落ちた。

　その直後、玄関から、物音がした。

「ヒ……ヒル、なのか……？」


「違うよ。……さよなら、カイン君」


　ボクは拷問部屋へ下りた。アイアンメイデンをずらしてその下にある梯子をさらに降りる。そこは爬沼蛭はぬまひるを軟禁している部屋だった。

「自首してくれ、爬沼蛭はぬまひる。死刑にはならないからさ」

　大分酷いこと言っている自覚はあるけど。

■

　一月経った。

　父親の葬儀は、身内がお母さんしかいなかった為、ごく簡単な物だった。お母さんは、父親の棺桶に縋り付いて泣いていた。ボクは窓の外からそれを見ていた。子供みたいに泣きじゃくっているお母さんに心が痛んだ気がした。

　爬沼蛭はぬまひるは裁判で責任能力の有無が云々と、随分議論になったけど、ほとんど無罪が確定した。未成年だから、マスコミも比較的マシだった。

　こんな事になった以上転校せざるを得ないと思うけど。否、学校にはもう行けないか。……くそ、今回のは短絡的に過ぎたなぁ。

「ごめん、カイン君。ごめん、お母さん。ごめん、爬沼蛭はぬまひる」

　ボクは居なくなるから。