邪神の恩返し

白南井 誰方

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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew

35 合格 (章末)

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「あれ、俺達何してたんだっけ?」

 俺がそう問いかけると、首を傾げたマリアと目があった。

「何言ってるの、ビル君?」
「……何度も言ってるけどな、俺のことは父さんと呼べと」

 というか俺はビル君じゃなくてマシューだろうが。あれ、マシューって誰だっけ? まぁ良いか。

「はいはい、で、父さん、その手に持っている手紙は? 入学試験の合否通知じゃないの?」

 ああ、そうだったな。あの事件の片が付き、何とか学園の入学試験を受けることが出来たのだ。そして今、俺の手元には三つの封筒が収まっている。一つはマリアのだ。もう二つは――

「じゃあセルシウス君とボースちゃん・・・も呼んでくるよ!」
「ボースを呼ぶ必要は……って、遅かったか」

 マリアは俺の返事を聞く前に〈ゲート〉をくぐってしまった。このゲートの先は、セルシウスとボースの泊まっている宿だ。前の家は瓦礫になってしまっていたし、獣人族に場所が知れてしまっていたので、俺が借りていた十数個の拠点のうち1つを貸した。かなり小さい宿だが、もともと二人で住むには・・・・・・・家が大きすぎる・・・・・・・と二人も言っていたし、試験に合格すればもっと良い宿に住めるのだから多めに見てほしい。

 とか考えてたら、〈ゲート〉の向こう側から俺めがけてナイフが飛んできた。ナイフを叩き落とした瞬間、死角から現れた人影が「死ねー!」と叫びながら俺の首を刈り取ろうとした所で、

その頭へセルシウスの拳骨が落ちた。

「い、いたい……」
「いい加減にしなさい、ボース」

 人影改めボースは頭を押さえてうずくまる。セルシウスはそれを呆れた顔で見下ろしていた。

「声も殺気もダダ漏れだったぞ。せめてそれくらい隠せな?」
「……ぷい」

 まぁ今の攻撃程度なら、見てから避けられるが。ポンポンと頭をなでてやるとボースは耳を真っ赤にして拗ねてしまった。

 あの襲撃事件の後、ボースは奇跡的に峠を越えた。そしてそれは真人族であるボースの場合、完全に雌性に至ったことを意味するわけで。あんなに小さかった身長とバストは今やマリアを超え、入学生女子の平均に達していた。性別の変化について、ボースは本能的に受け入れているようだった。マリアもはじめは戸惑っていたが、もうすっかり慣れてしまったようだ。







 数え切れないほど未来をDした上に成り立っているのが、この道中だ。歩いてきた道を振り返ると、Bの様にぐにゃりと弛んでいたり、引っ張りすぎて穴が空いていたりする。変わってしまったことはたくさんあるはずなのに。俺以外の目にはその道が真っ直ぐに映る。

 Dは世界を創り直す能力チート。だが俺は破壊神だから創造は不可能。その矛盾は俺自身をもCむ。果たして俺はテストに合格することが出来るだろうか。





「よし、じゃあ二人も揃ったようだし、合否結果を見るぞ」
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