61 / 61
第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew
35 合格 (章末)
しおりを挟む
「あれ、俺達何してたんだっけ?」
俺がそう問いかけると、首を傾げたマリアと目があった。
「何言ってるの、ビル君?」
「……何度も言ってるけどな、俺のことは父さんと呼べと」
というか俺はビル君じゃなくてマシューだろうが。あれ、マシューって誰だっけ? まぁ良いか。
「はいはい、で、父さん、その手に持っている手紙は? 入学試験の合否通知じゃないの?」
ああ、そうだったな。あの事件の片が付き、何とか学園の入学試験を受けることが出来たのだ。そして今、俺の手元には三つの封筒が収まっている。一つはマリアのだ。もう二つは――
「じゃあセルシウス君とボースちゃんも呼んでくるよ!」
「ボースを呼ぶ必要は……って、遅かったか」
マリアは俺の返事を聞く前に〈ゲート〉をくぐってしまった。このゲートの先は、セルシウスとボースの泊まっている宿だ。前の家は瓦礫になってしまっていたし、獣人族に場所が知れてしまっていたので、俺が借りていた十数個の拠点のうち1つを貸した。かなり小さい宿だが、もともと二人で住むには家が大きすぎると二人も言っていたし、試験に合格すればもっと良い宿に住めるのだから多めに見てほしい。
とか考えてたら、〈ゲート〉の向こう側から俺めがけてナイフが飛んできた。ナイフを叩き落とした瞬間、死角から現れた人影が「死ねー!」と叫びながら俺の首を刈り取ろうとした所で、
その頭へセルシウスの拳骨が落ちた。
「い、いたい……」
「いい加減にしなさい、ボース」
人影改めボースは頭を押さえてうずくまる。セルシウスはそれを呆れた顔で見下ろしていた。
「声も殺気もダダ漏れだったぞ。せめてそれくらい隠せな?」
「……ぷい」
まぁ今の攻撃程度なら、見てから避けられるが。ポンポンと頭をなでてやるとボースは耳を真っ赤にして拗ねてしまった。
あの襲撃事件の後、ボースは奇跡的に峠を越えた。そしてそれは真人族であるボースの場合、完全に雌性に至ったことを意味するわけで。あんなに小さかった身長とバストは今やマリアを超え、入学生女子の平均に達していた。性別の変化について、ボースは本能的に受け入れているようだった。マリアもはじめは戸惑っていたが、もうすっかり慣れてしまったようだ。
数え切れないほど未来をDした上に成り立っているのが、この道中だ。歩いてきた道を振り返ると、Bの様にぐにゃりと弛んでいたり、引っ張りすぎて穴が空いていたりする。変わってしまったことはたくさんあるはずなのに。俺以外の目にはその道が真っ直ぐに映る。
Dは世界を創り直す能力。だが俺は破壊神だから創造は不可能。その矛盾は俺自身をもCむ。果たして俺はテストに合格することが出来るだろうか。
「よし、じゃあ二人も揃ったようだし、合否結果を見るぞ」
俺がそう問いかけると、首を傾げたマリアと目があった。
「何言ってるの、ビル君?」
「……何度も言ってるけどな、俺のことは父さんと呼べと」
というか俺はビル君じゃなくてマシューだろうが。あれ、マシューって誰だっけ? まぁ良いか。
「はいはい、で、父さん、その手に持っている手紙は? 入学試験の合否通知じゃないの?」
ああ、そうだったな。あの事件の片が付き、何とか学園の入学試験を受けることが出来たのだ。そして今、俺の手元には三つの封筒が収まっている。一つはマリアのだ。もう二つは――
「じゃあセルシウス君とボースちゃんも呼んでくるよ!」
「ボースを呼ぶ必要は……って、遅かったか」
マリアは俺の返事を聞く前に〈ゲート〉をくぐってしまった。このゲートの先は、セルシウスとボースの泊まっている宿だ。前の家は瓦礫になってしまっていたし、獣人族に場所が知れてしまっていたので、俺が借りていた十数個の拠点のうち1つを貸した。かなり小さい宿だが、もともと二人で住むには家が大きすぎると二人も言っていたし、試験に合格すればもっと良い宿に住めるのだから多めに見てほしい。
とか考えてたら、〈ゲート〉の向こう側から俺めがけてナイフが飛んできた。ナイフを叩き落とした瞬間、死角から現れた人影が「死ねー!」と叫びながら俺の首を刈り取ろうとした所で、
その頭へセルシウスの拳骨が落ちた。
「い、いたい……」
「いい加減にしなさい、ボース」
人影改めボースは頭を押さえてうずくまる。セルシウスはそれを呆れた顔で見下ろしていた。
「声も殺気もダダ漏れだったぞ。せめてそれくらい隠せな?」
「……ぷい」
まぁ今の攻撃程度なら、見てから避けられるが。ポンポンと頭をなでてやるとボースは耳を真っ赤にして拗ねてしまった。
あの襲撃事件の後、ボースは奇跡的に峠を越えた。そしてそれは真人族であるボースの場合、完全に雌性に至ったことを意味するわけで。あんなに小さかった身長とバストは今やマリアを超え、入学生女子の平均に達していた。性別の変化について、ボースは本能的に受け入れているようだった。マリアもはじめは戸惑っていたが、もうすっかり慣れてしまったようだ。
数え切れないほど未来をDした上に成り立っているのが、この道中だ。歩いてきた道を振り返ると、Bの様にぐにゃりと弛んでいたり、引っ張りすぎて穴が空いていたりする。変わってしまったことはたくさんあるはずなのに。俺以外の目にはその道が真っ直ぐに映る。
Dは世界を創り直す能力。だが俺は破壊神だから創造は不可能。その矛盾は俺自身をもCむ。果たして俺はテストに合格することが出来るだろうか。
「よし、じゃあ二人も揃ったようだし、合否結果を見るぞ」
0
お気に入りに追加
22
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる