邪神の恩返し

白南井 誰方

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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew

?? ヒル

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「ケホ、ケホ……」


 最悪……。異界の破壊神がこの世界にやって来ようとしたから倒さなくてはならなかった。終わりかけの世界テレストリアに破壊神が集まってくるのは分かりきっていたことだし、いつも通りではあるんだけど。でも今回の奴は質の悪い環境汚染型だった。あんなのに近づかれたら、今のテレストリアなんか一瞬で蒸発する。下手に衝撃を与えると汚染物質が巻き散らかされちゃうから全部飲み込んだ。すごいグロテスクだったし全然おいしくないしで、もう最悪だった。

 でもこれでしばらく、爬沼蛭はぬまひるに消サレズニ済ム。







 それと、他の破壊神に出会うことで、ボク達が如何に例外的な存在であるか気づいたんだ。今まで出会った破壊神が全て、人間の形をしていなくて超巨大で、体が揮発性の毒で構成されていた。

 まぁ、破壊神が大地に降り立てる大きさである必要性もないし滅ぼす対象の形に似る必要もないし、考えてみれば当たり前なんだけどね。むしろ滅ぼす速さを考えると、体はなるべく大きいほうが良いはずだ。

 でもボク達は違う。下手するとボク達以外にヒト型は居ないのかも知れない。ボクがヒト型を取って地上で暮らすことが出来ているのは、ボクがヒトであることを願ッタカラ二違イナイ。

――いや、君はただの化け物だよ。ヒル。

 ……またボクをバカにするのか、ヒル。

――そんな姿になっておきながら、自ら破壊神を名乗っていながら、心だけは人でいようとしているのはなんで?

 うるさい。ボクはお前みたいには絶対ならないから。

――お前もいい加減認めなよ? その体はヒト型なんかじゃ無いって。

 何を。

――お前は姿も心も、ただの化け物だって言っているんだよ。

 そんなこと……ない、はずだ。

――まさかあんなのでマリアちゃんとマシューくんと、仲良ししてるつもりだったの? マリアちゃんとマシューくんがすべてを知った上で、お前のことを認めてくれるとでも?

 うん。

――お? 自信満々だね。ところで、なんで自分の体がヒトそんな形を模しているのか、考えたことはあるかな?

 それは、ボクの前世がヒトだったからでしょ。

――違う。大ハズレ。お前だって薄々気づいているでしょ?

 訳がわからないよ。

――さっきお前が言っていたとおりだよ。破壊神は世界を終わらせることに特化した存在だ。逆を言えば世界を終わらせることしか出来ないように定められているんだ。テレストリアを終わらせるために、システムがお前をヒト型・・・にすることを望んだんだよ。

 ……そんなこと、あり得るはずがない。

――答えを教えてあげよう。ボクたち『爬沼蛭』は欺罔きぼうタイプとでも言うべき破壊神だ。ヒト型の疑似餌でヒトを魅了し、誑かそうとする本能を持っている、初めはヒトによく似た魂として世界に入り込むから神ですら気づかない。ヒトを魅了し配下とし、配下を通して神の命を少しずつ食いつぶしていく。神が気づいたときには全てが手遅れ、世界の存亡は破壊神の思うが儘ってわけだ。

 嘘だ! ボクはこの世界を救うために全部の力を使ってきた! 少しは人を殺したけど、それは全部必要だったからだ!

――正義ぶるなよ。お前が良心を保つために、マシューやマリアの良心はお前が全部食べちゃったんでしょ、で、その結果マシューとマリアはどうなった? それに巻き込まれた『ウィリアム』の子達とかレプリカとかカナとかトーカとかも碌な目に遭ってない。何かを生み出す事ができたとしても、それ以上のものを終わらせてしまうんだよ。ボクたちは所詮、悪心なんだからさ。

 ボクは人だ! ビルド・ノーティスだ! 破壊神でも悪心でも無い!

――お前だって、はじめは納得してはじめた事だったよね。世界を救ったあと、それを壊してしまう前にボク達自身が消えれば、世界を救ったという結果のみが残るって。万が一ボク達の内誰かが暴走したら、正常な奴がそれを処分するって。

 ボクは、暴走シテナンカ無イ! 狂ってるのはオ前ダ!

――言葉で納得してもらえる段階は過ぎてしまったみたいだね。そしたら、どちらが狂っているか、テストしようか。
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