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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew
30.5 掌上 (閑話) side Celsius
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『儂』は、老衰で死んだはずだった。そして気づいたとき『儂』は『俺』として生まれ変わっていた。
生まれ変わって意識を得た瞬間に、不思議な少年との会話を思い出した。
――生まれ変わってまた会えたなら、今度は教師と生徒じゃなくて、クラスメートになりたいわ、ね、貴方?――
――そうだな、マドレーヌ――
――じゃあボクが叶えてあげますよ!――
晩年に交わしたあの会話を思い出す。もしもまた少年に会えたなら、お礼を言わねばならんな。それは追い追い考えるとしてだ。俺はまずマドレーヌに会いたいと思う。
そういえばあの会話のあと、生まれ変わった後に再会出来るように、いくつか取り決めをしていたのだったか。その一つに「マドレーヌはシフォンと名乗り、『儂』はセルシウスと名乗る」と言うものが有った。名前のままにする方が合理的なのだが、少年に「来世に同じ名前は使わない方が良いですよ」と言われたのだ。
もしかしたらそれは、生まれ変わったならマドレーヌと儂という関係を心機一転すべきという、少年――ヒルの心遣いだったのかもしれない。
名前だけでなく容姿もまた変わっており、年齢は十歳ほど、姿は人々の間で恐れられていた魔人そのものであった。周りの人間は様々な見た目をしていたが、とがった耳に白目の無い目であることは共通していた。他にも周囲には、伝説と伝え聞いた物ばかりが有った。何もかもが違う世界だが、エメラルド色に輝く太陽だけは前世と同じだ。
元の世界と関係のある場所だということは分かったが、それしか分かっていないとも言える。ここが生まれるまでに種族や植生が進化したとか、陸続きになっていないだけで同じ世界であるとか、考えられる可能性はそんなところだが……。
世界の果てまで飛んで行くと遥か遠くに浮かぶ別の世界が見えた。もしかしたらあれが俺の目指す世界かもしれない。《ハルシネーション》で普人族に化けた後に別の世界へと渡った。
「――の、――ちゃんと手順通りに――。――」
次の大陸は、なんと魔獣の耳と尻尾を持った半獣人が暮らす世界だった。なにやら物々しい雰囲気だしこちらに歩いてきているようだ。幸いこちらには気づいていないがこのままだと鉢合わせする。思わず物陰に潜む。
「で、普人族の事について何か収穫は有ったのか?」
「ああ、派遣部隊によると、最近は質の高い普人族の――が――――支配――もう少し――」
なんとかやり過ごしたか……。と安心した瞬間何者かに肩をポンポンと叩かれた。
「なっ何故バレ」
「キシシッ、お久しぶりです、セルシウス」
「……って、ヒルか……」
ヒルは俺の驚き方が可笑しかったのか、キシキシと聞きなれない笑い方をしていた。
「何でこんなところにいるのだ?」
「本当は見守るつもりだったのですが……(あっちの寄生ほどボクは過保護じゃないですし……善心じゃないんだから……)あのままだと真人族特有の臭いか気配でセルシウスの正体がバレる所だったので、でしゃばりました。この世界で正体がばれないようにするには《コントロール》系統の神術が必要ですからね! それじゃあ、これ以降二度と会わないことを願います」
ヒルの奴、どこか雰囲気が違っていた。もしや、記憶が戻ったのか? ……否、今は自分の事で精一杯だからな、ヒルの事は後で考えよう。
幸い獣人の言語は普人族のものと同じようだから一月も市井の会話に耳を傾けるだけで多くの情報を得ることができた。
この大陸は科学という技術が発展しているようだ。万物の素である粒子を観測する技術もあれば、神術を使わずに大陸を渡る技術も有るらしい。他にも色々だ。それらの情報を信じるならば、この世界を越えればシフォンのいる世界へと行くことができることになる。
俺は急いで大陸を渡った。
ようやく俺たちの世界に来た。ここで空に浮かんでいる太陽と魔獣の関係について気づいてしまった。世界に彷徨く魔獣がなぜか、太陽に向かって進んでいること。そして太陽に近い魔獣ほど弱いこと。
これらを合わせて考えると、……まさか、眉唾だと思っていた『魔神=唯一神説』が信憑性を帯びてしまうのだが……。
……俺は、ずっとヒルの掌の上で転がされていたというのか?
生まれ変わって意識を得た瞬間に、不思議な少年との会話を思い出した。
――生まれ変わってまた会えたなら、今度は教師と生徒じゃなくて、クラスメートになりたいわ、ね、貴方?――
――そうだな、マドレーヌ――
――じゃあボクが叶えてあげますよ!――
晩年に交わしたあの会話を思い出す。もしもまた少年に会えたなら、お礼を言わねばならんな。それは追い追い考えるとしてだ。俺はまずマドレーヌに会いたいと思う。
そういえばあの会話のあと、生まれ変わった後に再会出来るように、いくつか取り決めをしていたのだったか。その一つに「マドレーヌはシフォンと名乗り、『儂』はセルシウスと名乗る」と言うものが有った。名前のままにする方が合理的なのだが、少年に「来世に同じ名前は使わない方が良いですよ」と言われたのだ。
もしかしたらそれは、生まれ変わったならマドレーヌと儂という関係を心機一転すべきという、少年――ヒルの心遣いだったのかもしれない。
名前だけでなく容姿もまた変わっており、年齢は十歳ほど、姿は人々の間で恐れられていた魔人そのものであった。周りの人間は様々な見た目をしていたが、とがった耳に白目の無い目であることは共通していた。他にも周囲には、伝説と伝え聞いた物ばかりが有った。何もかもが違う世界だが、エメラルド色に輝く太陽だけは前世と同じだ。
元の世界と関係のある場所だということは分かったが、それしか分かっていないとも言える。ここが生まれるまでに種族や植生が進化したとか、陸続きになっていないだけで同じ世界であるとか、考えられる可能性はそんなところだが……。
世界の果てまで飛んで行くと遥か遠くに浮かぶ別の世界が見えた。もしかしたらあれが俺の目指す世界かもしれない。《ハルシネーション》で普人族に化けた後に別の世界へと渡った。
「――の、――ちゃんと手順通りに――。――」
次の大陸は、なんと魔獣の耳と尻尾を持った半獣人が暮らす世界だった。なにやら物々しい雰囲気だしこちらに歩いてきているようだ。幸いこちらには気づいていないがこのままだと鉢合わせする。思わず物陰に潜む。
「で、普人族の事について何か収穫は有ったのか?」
「ああ、派遣部隊によると、最近は質の高い普人族の――が――――支配――もう少し――」
なんとかやり過ごしたか……。と安心した瞬間何者かに肩をポンポンと叩かれた。
「なっ何故バレ」
「キシシッ、お久しぶりです、セルシウス」
「……って、ヒルか……」
ヒルは俺の驚き方が可笑しかったのか、キシキシと聞きなれない笑い方をしていた。
「何でこんなところにいるのだ?」
「本当は見守るつもりだったのですが……(あっちの寄生ほどボクは過保護じゃないですし……善心じゃないんだから……)あのままだと真人族特有の臭いか気配でセルシウスの正体がバレる所だったので、でしゃばりました。この世界で正体がばれないようにするには《コントロール》系統の神術が必要ですからね! それじゃあ、これ以降二度と会わないことを願います」
ヒルの奴、どこか雰囲気が違っていた。もしや、記憶が戻ったのか? ……否、今は自分の事で精一杯だからな、ヒルの事は後で考えよう。
幸い獣人の言語は普人族のものと同じようだから一月も市井の会話に耳を傾けるだけで多くの情報を得ることができた。
この大陸は科学という技術が発展しているようだ。万物の素である粒子を観測する技術もあれば、神術を使わずに大陸を渡る技術も有るらしい。他にも色々だ。それらの情報を信じるならば、この世界を越えればシフォンのいる世界へと行くことができることになる。
俺は急いで大陸を渡った。
ようやく俺たちの世界に来た。ここで空に浮かんでいる太陽と魔獣の関係について気づいてしまった。世界に彷徨く魔獣がなぜか、太陽に向かって進んでいること。そして太陽に近い魔獣ほど弱いこと。
これらを合わせて考えると、……まさか、眉唾だと思っていた『魔神=唯一神説』が信憑性を帯びてしまうのだが……。
……俺は、ずっとヒルの掌の上で転がされていたというのか?
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