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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew
30 家族
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早いもので、依頼も最終日ーー否、2日目の朝を迎えた。
分かっていたことだが、昨日一日でちびっ子はマリアにめちゃくちゃ懐いた。今まで同じ目線で遊べる友人が自分たちしか居なかったからな。セルシウスは精神年齢が高いから一緒に遊ぶというのは無理だろうし。
そうそう、セルシウスとちびっ子たちに見た目を変える魔道具を与えたので、みんな見た目と気配は完全に普人族のものだ。ちびっ子たちも学校に行こうと思えば行ける年齢だが、本人たちの希望によりそれは見送られた。
今マリアはちびっ子と一緒に家族ごっこをしている。マリアとちびっ子6人の7人家族。にぎやかで微笑ましい。そんな中セルシウスはその隣で勉強している……が、やかまし過ぎて身が入っていないようだ。
「マリアさんは勉強しなくてよいのですか? 5日後に試験なんですよ?」
「ああ、それな。俺も言ったんだが『もう全部覚えたからダイジョーブ!』って返ってきた」
「そ、そうですか……」
マリアとセルシウスの出会うきっかけになった歴史書、マリアがその内容を一日で暗記していたのをセルシウスも目撃しているからな。折角なので、何気に気がかりだった事を訪ねてみる事にした。
「そういえばセルシウス、お前マリアの事好きとかじゃないよな?」
「えぇ?! そんなつもりはありませんよ、俺には心に決めた人がいますから! 学園の入学試験を受けようと思ったのは、今年受験してくるはずの彼女に会うためでもあったんですから」
「……へぇ」
家の中には、ちびっ子たちのキャッキャとした声が響いている。何となくその様子を眺めていたら、勉強を諦めたセルシウスが話しかけてきた。
「この子達は、みんな一人ぼっちだったんです。普人族の世界に来るときに親とはぐれてしまった。だから、地下に潜んだり、場合によっては軽犯罪にも手を染めて、必死に生きてきた。この家の床下にある穴は、あの子達が何年もかけて掘った穴なんですよ」
話の途中でレイが駆けてきた。
「外に行って来るぞ~!」
「分かりました。気をつけて行ってきてくださいね、レイ、ボース、モモ、イオ、スミレ、ヒッグス」
「分かったんだぞ!」
「もちろんだ」
「行ってきます……!」
「行ってくる」
「スミレも行ってきます」
「夕飯までには戻ります」
ちびっ子達が潜ったのは、外への扉では無く、家の地下に続く縦穴だった。セルシウスが続けた。
「あの子達にとって、扉の外ほど怖い場所はありません。あの子達はずっと、苔の生した路地裏や地下での生活をしてきたようですから。扉の外へは、あの子達は決して出ようとはしません」
ちびっ子たちが学校に行かないといったのは、それが原因だったのか。
「ちなみに、なんで俺たちに依頼したんーー伏せろっ」
セルシウスは慌てて地面に伏せる。丁度俺達の頭のあった場所を、音もなく不可視の刃が横断した。家の外から狙われたのか壁には横一線に穴が空いていた。
チビ達がいない時で本当に良かった。
分かっていたことだが、昨日一日でちびっ子はマリアにめちゃくちゃ懐いた。今まで同じ目線で遊べる友人が自分たちしか居なかったからな。セルシウスは精神年齢が高いから一緒に遊ぶというのは無理だろうし。
そうそう、セルシウスとちびっ子たちに見た目を変える魔道具を与えたので、みんな見た目と気配は完全に普人族のものだ。ちびっ子たちも学校に行こうと思えば行ける年齢だが、本人たちの希望によりそれは見送られた。
今マリアはちびっ子と一緒に家族ごっこをしている。マリアとちびっ子6人の7人家族。にぎやかで微笑ましい。そんな中セルシウスはその隣で勉強している……が、やかまし過ぎて身が入っていないようだ。
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「ああ、それな。俺も言ったんだが『もう全部覚えたからダイジョーブ!』って返ってきた」
「そ、そうですか……」
マリアとセルシウスの出会うきっかけになった歴史書、マリアがその内容を一日で暗記していたのをセルシウスも目撃しているからな。折角なので、何気に気がかりだった事を訪ねてみる事にした。
「そういえばセルシウス、お前マリアの事好きとかじゃないよな?」
「えぇ?! そんなつもりはありませんよ、俺には心に決めた人がいますから! 学園の入学試験を受けようと思ったのは、今年受験してくるはずの彼女に会うためでもあったんですから」
「……へぇ」
家の中には、ちびっ子たちのキャッキャとした声が響いている。何となくその様子を眺めていたら、勉強を諦めたセルシウスが話しかけてきた。
「この子達は、みんな一人ぼっちだったんです。普人族の世界に来るときに親とはぐれてしまった。だから、地下に潜んだり、場合によっては軽犯罪にも手を染めて、必死に生きてきた。この家の床下にある穴は、あの子達が何年もかけて掘った穴なんですよ」
話の途中でレイが駆けてきた。
「外に行って来るぞ~!」
「分かりました。気をつけて行ってきてくださいね、レイ、ボース、モモ、イオ、スミレ、ヒッグス」
「分かったんだぞ!」
「もちろんだ」
「行ってきます……!」
「行ってくる」
「スミレも行ってきます」
「夕飯までには戻ります」
ちびっ子達が潜ったのは、外への扉では無く、家の地下に続く縦穴だった。セルシウスが続けた。
「あの子達にとって、扉の外ほど怖い場所はありません。あの子達はずっと、苔の生した路地裏や地下での生活をしてきたようですから。扉の外へは、あの子達は決して出ようとはしません」
ちびっ子たちが学校に行かないといったのは、それが原因だったのか。
「ちなみに、なんで俺たちに依頼したんーー伏せろっ」
セルシウスは慌てて地面に伏せる。丁度俺達の頭のあった場所を、音もなく不可視の刃が横断した。家の外から狙われたのか壁には横一線に穴が空いていた。
チビ達がいない時で本当に良かった。
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