邪神の恩返し

白南井 誰方

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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew

28 依頼

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 セルシウスからの依頼を受けた直後、ビルドから念話がかかってきた。

(マシュー君)
(ビルドの言うとおり、セルシウスとかいうやつの依頼受けたぞ?)
(うん、見てたよ。それで今からマリアちゃんに、正しい神術教えたいから一回宿戻って?)

 了解。っと気づいたら、マリアもセルシウスもちびっこ達も不思議そうにこちらを見ていた。

「どうしたのマシュー」
「マシュー父さん、だろ。ところでセルシウス、依頼の内容は子供のお守りってことで聞かされたが、他のことが全く決まっていないよな。依頼の開始はいつからが良い? あと依頼料はいくら用意できる?」

「依頼はできれば今すぐにでも、と言いたいところですが、あなた達にも準備があるでしょうし、一週間後からというのはいかがでしょうか?」
「ああ、助かる」

 セルシウスはちびっこ達を地下へ追いやった。子どもに聞かせる話ではないと思ったのだろう。セルシウスも十分子どもだが……。そして懐から一つの指輪を取り出した。よく見るとくすんだ金属に黒い宝石が埋め込まれている。

「……依頼料はいくらでも。ただ、現金では用意できなかったので、それ相当のもの、ということになりますが。前金に1000万ディル相当の宝石を用意しました。依頼達成後の俺の財産を全てあなた達に差し上げます」
「……分かった。それで良い」
「ちょっとマシュー?!」

 マリアが何か言いたげに俺を見上げてくるが、。セルシウスに向き直り、6日後の夜また来る、と言い残して俺はセルシウスの家を出た。

 一週間後からというのは、こちらも助かる。しかし、依頼料についてはなんと言えばよいのか分からない。もそもそこれは、「一週間ちょっとの子守り」という依頼でしかない。学園一年間の学費は2400万。学園に通いながら稼ぎ続けることが出来る金額ではない。全財産をさっき偶然知り合った奴に渡すような真似は、ただの自殺行為だ。

「セルシウスは自分自身を売るつもりなんじゃないの?」
「それはないだろ多分。普通、身売りをする人間が学園の試験を受けようとするか?」

 セルシウスは詐欺を働こうとしているわけでもないはずだ。詐欺にしてももっと良い方法があるからな。

 ということは、その依頼中に、何かが起こるのだろう。助けてほしいのは子どもたちか、それともセルシウス自身か。





 俺達の宿に戻って来ると、マリアが俺に詰め寄ってきた。じゃあちょっと体借りるよーという声が聞こえて、体がビルドに乗っ取られる。

「やっほー、マリアちゃんの大好きなビルドだよ。胸はちゃんと大きくなったね、良かった良かった」
「……」
「……真面目な話をすると、マリアちゃんにはセルシウス君を助けてほしいんだ。それができるのはこの世界でマリアちゃん、君だけなんだ」
(これが、お前が俺たちを転生させた目的か?)
「その疑問に答えておくと、これはマリアちゃんたちを転生させた目的の一つではあるね。で、やってくれるよねマリアちゃん」
「えー……」

「この目的を達成するために、マリアちゃんには《ゲート》を覚えてもらう。その代わりと言っては何だけど、学園では習えない《ヒール》とかも教えてあげる」
「やった!」

 おいおいそんな分かりやすい餌に……。まぁマリアが良いなら良いんだけどな、マリアならすぐに覚えるだろうし。










 身を売る人間が試験を受ける目的はある。例えば、自分自身の価値を高めて、売値を引き上げるため、だとか。
 アイツも、過去の俺と同じ苦しみを抱えているのかもしれない。
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