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第2.5章 一方その頃、〇〇は
組合 (章末)
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「トーカよ、カーナの様子はどうだ?」
「全然。さっきも仕事をミスしてた。カーナらしくない」
「そうか……」
「これ、マシューのステータス。多分、私と同じ転生者」
****************************************************************
●名前:マリア
(●名前:ウィリアム・セシスマ・ダ・ネークハヌヒルシュビルド・ノテスカナ)
●年齢:17(0歳?)
●性別:男(男?)
●種族:普人族(破壊神獣人族真人族創世神人間)
●神力:833(75038547303...[err])
●魔力:152(D02C7E14AF6...[err])
●称号:破壊者創造者調停者犠牲者
●預金:0ディル
(●登録:冒険者ギルドナルコト支部)
****************************************************************
至る所に改ざんと隠蔽の痕跡が見受けられ、ほとんど解読不能だ。しかも勇者の力である魔力を持っている。しかし、この冒険者に何か関係が……?
その疑問に対して、トーカは続けた。
「マシューはとびきりのイレギュラー。確証はないけどカーナが獣人だってバレたかもしれない」
「何だと……?!」
普人族は自分たちが唯一の人族『人間』であると思い上がっているが、その実は獣人や真人、普人の3種族である。儂らは普段は尻尾や耳を隠し普人族の振りをして過ごしている。
勇者の時代以前はハンターによる獣人狩りが深刻だった。獣人には神力がなかった、それだけで普人族から『神から見放された獣』として扱われ、獣人を殺すことが教義的に『善』とされたのだ。ハンターズギルドの所為で、儂らは滅亡寸前まで追い詰められた。
しかし、儂らは神の力を得た。
仮に勇者級の敵だとしても、今の儂らにはそれを制圧できるだけの力がある。その力の源こそが《魂装》である。今吸っている煙草や、カーナの奴も身につけている短剣がそれだ。
実は魂装の効果は《所有者を一時的に普人族にすること》だけだ。これにより獣の耳を普人族のそれに変化させることができる。しかもこの普人化は、骨格や経験にまで及ぶ。これにより四足の獣人も直立二足歩行が可能になり、獣人には使えないはずの神力も使えるようになるのだ。
今度の討伐依頼は真人の魔人種だ。真人族の魂さえ得ることが出来ればあるいは……。
今は雌伏のときなのだ。いつか必ず、獣人族以外の人族はーー
「ギルドマスター、そろそろ私は仕事に戻る」
「ああ、ご苦労だったな」
扉が閉まる直前、トーカが言った。
「ギルドマスターが何をしようとしているのか、私は知らない。このマシューだかマリアだかも、どうでも良い。でもカナを悲しませる結果になるなら、容赦しないから」
「そうか……」
扉が完全に閉まる。椅子に深く腰掛けこの30年を思い出す。
業績不振によりバルジラのギルドなどという閑職に左遷させられた。そんな失意の中に見つけた死にかけの幼子、カナを拾ったのは、彼女をグランギルドマスターにし、儂に代わって復讐を達成させるためだった。
新しい名前を付けた。こちらの大陸風にカーナとした。カーナは儂を実の父と勘違いしているようだった。そのほうが都合が良かったので否定はしなかった。カーナは儂によく懐いた。そうして育てているうちに情が湧いてしまった。儂の復讐について知られないように、カーナには何も教えないでいた。獣人については隠しようがなかったがそれ以外……ギルド創設の理由などはひた隠した。
物心のついたカーナが『冒険者を助けるために』ギルドで働きたいのと言い出したときは本当のことを言おうか思い悩んだものだ。しかし言い出す勇気がなかった。カーナに失望されるのが怖かったのだ。
カーナはその十年後、自らの実力で受付嬢となった。カーナは美しくなった。美しい受付嬢の噂を聞いた冒険者共が集まってきた。カーナを惚れさせようと考え無茶をした冒険者が次々死んでいった。冒険者に冤罪を擦り付けて間引きした。それらの功績を認められ、儂に昇進の話が舞い降りてきた。
一度は諦めた普人族への復讐。この昇進を飲めば完遂できるのでは無いか? しかしそれならカーナはどうなる……?
燃え尽きない煙草の煙は天井へ溜まってゆく。
「全然。さっきも仕事をミスしてた。カーナらしくない」
「そうか……」
「これ、マシューのステータス。多分、私と同じ転生者」
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●名前:マリア
(●名前:ウィリアム・セシスマ・ダ・ネークハヌヒルシュビルド・ノテスカナ)
●年齢:17(0歳?)
●性別:男(男?)
●種族:普人族(破壊神獣人族真人族創世神人間)
●神力:833(75038547303...[err])
●魔力:152(D02C7E14AF6...[err])
●称号:破壊者創造者調停者犠牲者
●預金:0ディル
(●登録:冒険者ギルドナルコト支部)
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至る所に改ざんと隠蔽の痕跡が見受けられ、ほとんど解読不能だ。しかも勇者の力である魔力を持っている。しかし、この冒険者に何か関係が……?
その疑問に対して、トーカは続けた。
「マシューはとびきりのイレギュラー。確証はないけどカーナが獣人だってバレたかもしれない」
「何だと……?!」
普人族は自分たちが唯一の人族『人間』であると思い上がっているが、その実は獣人や真人、普人の3種族である。儂らは普段は尻尾や耳を隠し普人族の振りをして過ごしている。
勇者の時代以前はハンターによる獣人狩りが深刻だった。獣人には神力がなかった、それだけで普人族から『神から見放された獣』として扱われ、獣人を殺すことが教義的に『善』とされたのだ。ハンターズギルドの所為で、儂らは滅亡寸前まで追い詰められた。
しかし、儂らは神の力を得た。
仮に勇者級の敵だとしても、今の儂らにはそれを制圧できるだけの力がある。その力の源こそが《魂装》である。今吸っている煙草や、カーナの奴も身につけている短剣がそれだ。
実は魂装の効果は《所有者を一時的に普人族にすること》だけだ。これにより獣の耳を普人族のそれに変化させることができる。しかもこの普人化は、骨格や経験にまで及ぶ。これにより四足の獣人も直立二足歩行が可能になり、獣人には使えないはずの神力も使えるようになるのだ。
今度の討伐依頼は真人の魔人種だ。真人族の魂さえ得ることが出来ればあるいは……。
今は雌伏のときなのだ。いつか必ず、獣人族以外の人族はーー
「ギルドマスター、そろそろ私は仕事に戻る」
「ああ、ご苦労だったな」
扉が閉まる直前、トーカが言った。
「ギルドマスターが何をしようとしているのか、私は知らない。このマシューだかマリアだかも、どうでも良い。でもカナを悲しませる結果になるなら、容赦しないから」
「そうか……」
扉が完全に閉まる。椅子に深く腰掛けこの30年を思い出す。
業績不振によりバルジラのギルドなどという閑職に左遷させられた。そんな失意の中に見つけた死にかけの幼子、カナを拾ったのは、彼女をグランギルドマスターにし、儂に代わって復讐を達成させるためだった。
新しい名前を付けた。こちらの大陸風にカーナとした。カーナは儂を実の父と勘違いしているようだった。そのほうが都合が良かったので否定はしなかった。カーナは儂によく懐いた。そうして育てているうちに情が湧いてしまった。儂の復讐について知られないように、カーナには何も教えないでいた。獣人については隠しようがなかったがそれ以外……ギルド創設の理由などはひた隠した。
物心のついたカーナが『冒険者を助けるために』ギルドで働きたいのと言い出したときは本当のことを言おうか思い悩んだものだ。しかし言い出す勇気がなかった。カーナに失望されるのが怖かったのだ。
カーナはその十年後、自らの実力で受付嬢となった。カーナは美しくなった。美しい受付嬢の噂を聞いた冒険者共が集まってきた。カーナを惚れさせようと考え無茶をした冒険者が次々死んでいった。冒険者に冤罪を擦り付けて間引きした。それらの功績を認められ、儂に昇進の話が舞い降りてきた。
一度は諦めた普人族への復讐。この昇進を飲めば完遂できるのでは無いか? しかしそれならカーナはどうなる……?
燃え尽きない煙草の煙は天井へ溜まってゆく。
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