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第2.5章 一方その頃、〇〇は
摩周
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深夜だ。マリアは寝て、ビルドはどこかに行ってしまったので、俺は『ウィリアム・セシス』の主導権を握ることができるようになった。夜な夜な勝手に俺が『ウィリアム』を動かしているなんて、マリアは想像もしていないだろうな。
俺は夜道を歩く。
『この体』は、魂が3つ入っている非常に不安定な状態だ。しかもその魂っていうのが女神の雛、英雄の卵、破壊の芽と非常にクセが強く、相反する性質のものだ。……とビルドが言っていた。
そんな状態をむりやり押さえつけておけるこの器。創造のために、どれほどの生贄が積み重なっているのか……想像もつかない。
というかなんでビルドはこの体の名前をウィリアムと名付けたんだろうか? マリアの「聖女になりたい」という願いを叶えるためなら女性名を使う方が合理的だ。ウィリアムの愛称はビル。ただ自分の名前を捩っただけなのか? ビルドのことだから、何か深い理由が有るのだろうか。
そういえばウィリアムの愛称にビリーっていうのも……。
俺は、神の器が一つしかないと、ビルドから言われていた。というか、ビルドがそう思考誘導していた……気がした。ということはウィリアムはかなり沢山あるものと見てよいだろう。
夜道に、不自然なほど存在感を消している小屋がある。目的地だ。昨日運良く出会った情報屋の婆さんの住所である。
「ウィリアムだね。全く運の良い坊やだよ。何のツテも無く情報屋にたどり着くなんて、あるはずないんだからねぇ」
「そんなことはどうでも良い。『ウィリアムズ』達とについての情報を早く」
婆さんは、まぁそう急がずにと宥めながら、席に座るように促した。俺は座らず、金袋をテーブルに置いた。
「金貨100枚ある。ほら、これでいいだろう」
「毎度あり! ほら『ウィリアムズ』の名簿だよ」
婆さんはそそくさと金袋を回収しつつ、十数枚の紙の束をこちらへ放った。
この街には『ウィリアムズ』という姓の吟遊詩人やら商人やら冒険者やらシスターやらがたくさん居た。会うことは出来なかったが、何でも大層美しい顔立ちをしていたらしい。そんな『ウィリアムズ』についてのことが、その束には事細かに書かれていた。
束の一番上には、美しい女の似顔絵ーー否、手配書が添えられていた。極秘だとか生死問わずだとか、物々しい言葉が連なっている。
「ウィリアムズは、全て同じ母を持っている。生みの親の名は、マーシー・ウィリアムズ。スラムに住み、芸術算術武術あらゆる分野で才能あふれる子供たちを育てた人物でありながら、100人以上の罪無き人間を殺した大犯罪者さ」
婆さんはそこで言葉を切り、欲深い目を俺に向けた。俺は、紙束に火をつけた。婆さんは目を丸くしていたが、もうこれは俺にとっては邪魔なものだ。
「ほしい情報は手に入ったからな」
嘘だ。正直言うとあまり分かっていない。しかしこの食えなそうな婆さんとこれ以上関わりを持つほうがヤバそうだ。俺はとっとと退散することにした。
「用があったらまた来るぜ」
そんな日が来ないことを祈ってるぜ! 俺は机に無雑作に金塊を積み上げてから婆さんに背を向けた。
宿に戻ってさっさと寝た。
俺は夜道を歩く。
『この体』は、魂が3つ入っている非常に不安定な状態だ。しかもその魂っていうのが女神の雛、英雄の卵、破壊の芽と非常にクセが強く、相反する性質のものだ。……とビルドが言っていた。
そんな状態をむりやり押さえつけておけるこの器。創造のために、どれほどの生贄が積み重なっているのか……想像もつかない。
というかなんでビルドはこの体の名前をウィリアムと名付けたんだろうか? マリアの「聖女になりたい」という願いを叶えるためなら女性名を使う方が合理的だ。ウィリアムの愛称はビル。ただ自分の名前を捩っただけなのか? ビルドのことだから、何か深い理由が有るのだろうか。
そういえばウィリアムの愛称にビリーっていうのも……。
俺は、神の器が一つしかないと、ビルドから言われていた。というか、ビルドがそう思考誘導していた……気がした。ということはウィリアムはかなり沢山あるものと見てよいだろう。
夜道に、不自然なほど存在感を消している小屋がある。目的地だ。昨日運良く出会った情報屋の婆さんの住所である。
「ウィリアムだね。全く運の良い坊やだよ。何のツテも無く情報屋にたどり着くなんて、あるはずないんだからねぇ」
「そんなことはどうでも良い。『ウィリアムズ』達とについての情報を早く」
婆さんは、まぁそう急がずにと宥めながら、席に座るように促した。俺は座らず、金袋をテーブルに置いた。
「金貨100枚ある。ほら、これでいいだろう」
「毎度あり! ほら『ウィリアムズ』の名簿だよ」
婆さんはそそくさと金袋を回収しつつ、十数枚の紙の束をこちらへ放った。
この街には『ウィリアムズ』という姓の吟遊詩人やら商人やら冒険者やらシスターやらがたくさん居た。会うことは出来なかったが、何でも大層美しい顔立ちをしていたらしい。そんな『ウィリアムズ』についてのことが、その束には事細かに書かれていた。
束の一番上には、美しい女の似顔絵ーー否、手配書が添えられていた。極秘だとか生死問わずだとか、物々しい言葉が連なっている。
「ウィリアムズは、全て同じ母を持っている。生みの親の名は、マーシー・ウィリアムズ。スラムに住み、芸術算術武術あらゆる分野で才能あふれる子供たちを育てた人物でありながら、100人以上の罪無き人間を殺した大犯罪者さ」
婆さんはそこで言葉を切り、欲深い目を俺に向けた。俺は、紙束に火をつけた。婆さんは目を丸くしていたが、もうこれは俺にとっては邪魔なものだ。
「ほしい情報は手に入ったからな」
嘘だ。正直言うとあまり分かっていない。しかしこの食えなそうな婆さんとこれ以上関わりを持つほうがヤバそうだ。俺はとっとと退散することにした。
「用があったらまた来るぜ」
そんな日が来ないことを祈ってるぜ! 俺は机に無雑作に金塊を積み上げてから婆さんに背を向けた。
宿に戻ってさっさと寝た。
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